夜が更けていく。
逆らうように、星達が輝きを増した。
ここ最近、いつも窓から星を見上げている。
見上げては、ため息。
握り締めた携帯を、胸に抱きながら。
星達が、羨ましい。
夜に外へ出られることが、羨ましい。
息が詰まる。
また、ため息が出た。
私の親は、夜に家から出ることを許してくれない。
十七になったというのに、門限は十八時。
アルバイトも、もちろん禁止。
(*゚−゚)「……」
真っ暗な部屋の中、携帯の光が灯る。
二十三時四十分。
起きていることを知られると怒られるから、部屋の灯りは消してある。
厳しい親に、厳しい学校。
鳥籠のような、私の高校生活。
(*゚−゚)「!」
携帯の振動を手が感じた瞬間、携帯を開いた。
ずっと待っていた、メールの受信。
家での……ううん、高校生活唯一の、楽しみ。
ギコ先生からのメール。
内容は見なくても大体わかる。
勉強したか?とか、ちゃんと寝ろよ、とか……
それでも、それでも私には、嬉しくて仕方がない。
学校以外で、ギコ先生と繋がることのできる、この瞬間が。
お嬢様学校の生徒が、教師と付き合っている。
知られたら、きっと大問題になる。
わかっている。
わかっていたけど、気持ちは抑えられなかった。
中等部の時から、ずっとずっと憧れていた。
憧れはいつの間にか、恋になっていた。
そしてすぐに、告白。
翌日、ギコ先生は私を受け入れてくれた。
先生は、たくさん、たくさん悩んだと思う。
だって、目の下にクマができてたもん。
先生は大人だから、きっと色々考えたんだろう。
私が高校生の間は、恋人らしいことはしてやれないと言っていた。
それでもよかった。関係なかった。
ギコ先生と恋人になれるだけで、涙が溢れて、声がでなかった。
(*
−
)「ギコ……先生……っ」
それ以上、何も望まないと決めたのに。
ギコ先生も、辛いのは一緒だからって、思ったのに。
子供の私は、変わってしまった。
好きになればなるほど、想いがつのればつのるほど。
会いたい。逢いたい。一緒に居たいという想いが。
涙に形を変えて、毎日溢れ出てしまう。
これを口に出したら、ギコ先生を困らせてしまう。
喉まででかかった言葉は、そう言い聞かせて止めていた。
でも、だめなの。
先生を見る度に。先生からの一言だけのメールを見る度に。
どんどん、どんどん、好きになる。
感情に比例して、わがままも膨れ上がる。
好きすぎて辛いなんて、初めて知った。
言いたい。言えない。言いたい。言え、ない……
いっそのこと、この恋を終わらせてしまおうか。
そんなことすら、考えた日もあった。
わがままは一度で済むし、傷がつくのも一度だけ。
これから先、ついに抑えることができなくなってわがままを繰り返し、
先生を困らせてしまうのなら、そうした方が先生の為だろう、と。
……もちろん、だめだった。
打ち明けることすら出来ずに、得たものは眠れない夜だけだった。
(*゚−゚)
星を見上げた。
星達は私のわがままを毎晩黙って聞いてくれる。
ごめんね。
今日も少しだけ、言わせてね。
ギコ先生。
好きで好きで、それが辛くて辛くて、たまらないの。
私はどこへでもついて行く。
だから私を───
ここから、連れ出して……