( ^ω^)がパートナーと戦うようです


 

793 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:07:06.64 ID:wMLum2vV0

(;^ω^)「くおっ!? どうなってんだお!?」

四度目の攻撃をかわした後、ブーンは思わず声を上げた。
かわした攻撃全てが、危なげない回避だった。

対峙する敵──モララーはブーンの焦る姿を見て、不敵に笑みを浮かべる。

( ・∀・)「どうにも、単細胞が相手だと助かるね」

(# ^ω^)「馬鹿にするなお!」

挑発に乗り頭に血が上ったブーンが、『駆けろ』と強く念じた。
それに呼応する様に輝く、両の手首に巻かれた黒いリストバンド。
勿論それは、飾りなどではない。

その証拠にブーンが、常人を遙かに超えたスピードで疾駆する。

( ・∀・)「ふんっ!」

如何に常人離れした速度でも、直線的な単調な攻撃など、避けるのは容易。
ましてや相手はモララー。ブーンが追う組織の幹部に名を連ねる男である。

やはり虚しく、ブーンの拳は空を切る結果となった。


794 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:09:14.40 ID:wMLum2vV0

慣性のままにモララーを通り過ぎたブーンが踏ん張り、土煙りを生み出しながら止まる。
すかさずそこへ、振り向きざまにモララーが一撃を放った。

右手に銃。左手に七十センチ程の両刃の剣。
モララーが使ったのは、銃の方だ。

( ^ω^)「!」

先のブーンの動きと同じく、銃と言う物は軌道が直線的だ。
銃が放つ直線に直角に避ければ、当たらない。
ブーンはまた強く念じ、真横へと跳んだ。

理屈の上では、当たらない。
放たれた弾丸など見えるわけはないが、確実に避けた、とブーンは確信する。

その確信、今回で五度目であった。

(;^ω^)「あつっ!」

ブーンの左足に走る熱。
太腿の辺りにじんわりと滲んだ赤い筋が生まれていた。
それは、銃弾がかすった時にできる傷跡。

(;^ω^)「またかお……」

( ・∀・)「逃げるのがうまいのも、やりづらいものだね」


795 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:10:54.01 ID:wMLum2vV0

(# ^ω^)「なんだとお!」

意味のわからない攻撃に、モララーの挑発。
その両者はブーンを激昂させるに足るものだった。
しかしそこに。

『バカッ! 少し頭冷やしなさい!』

突如ブーンを叱咤した、声。

( ^ω^)(ツン……でもわけわかんないんだお…)

その声に、冷静さを取り戻す。

『だからって、単純な攻撃ばっかじゃ避けられるに決まってるでしょ』

この声は、ブーンの脳にしか届いていない。
ブーンも念じ、語りかけることによってのみ、彼女との会話は成立する。

リストバンドに内蔵されている、極小のコンピューター、ツン・デレちゃん。
実はこのリストバンド、先に見せたブーンの動きのように、
装備者の身体能力を向上させる効果を持っている。

モララーの組織に対抗する為に作られた、人工知能搭載電気信号身体機能超向上型リストバンド。
装備者の念───脳からの電気信号を人工知能が感知し、その信号をより強力に伝達させ、
身体能力の向上を図ると言った装備だ。


797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:12:56.97 ID:wMLum2vV0

しかしそれは、誰でも装備できると言うわけではなかった。
人工知能に認められなければならないのだ。
それは単に使用者として、ましてや支配者と言った関係でなく……

人工知能に信頼を寄せ、同じく寄せてもらわなければ、その力は生み出されない。
それ故に、こう呼ばれていた。

───【パートナー】───と。

『よく考えなさい、ブーン あんたは先入観に囚われてるのよ』

( ^ω^)(先入観?)

『先入観に関する考察よ 相手を見た目で判断するなって、訓練で教わったでしょ!』

( ^ω^)(そういえばそんな話を聞いたようなきがしないでもないお…)

( ・∀・)「動きが止まったようだが…パートナーと相談中かい?」

図星を突かれ、慌てて身構えるブーン。

( ・∀・)「いいよ 時間をあげよう 存分に話し給え」

と、余裕の表情で笑みを浮かべ、言った。
ブーンはそのモララーの様子に腹を立てつつも、ツンとの会話を続ける。


800 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:14:56.08 ID:wMLum2vV0

『ヒントをあげるわ ある所に双子がいました その双子には幼馴染がいて、
 その幼馴染は簡単にどっちが兄か、どっちが弟か見分けられます。
 どうしてでしょうか?』
 
しばしの、思案。

( ^ω^)(……癖とか、微妙な顔の違いとか?)

『違うわ 双子は二卵性双生児だったから まったく違う顔なのよ』

( ^ω^)(……)

『今貴方は、双子という単語でまったくそっくりな人間を思い浮かべた。
 そして次にでた幼馴染の件で、それは確定してしまった』
 
( ^ω^)(で?)

『バカ! 死ね! まだわかんないの?!』

(;^ω^)(ごめんお……)

『先入観は捨てなさい そして、モララーの今までの動きを思い浮かべて』

( ^ω^)(今までの動き……)

『使ってない物があるわ』


801 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:16:37.74 ID:wMLum2vV0

( ^ω^)(……剣……かお……)

『そうよ 彼は剣を【剣として】一度も使っていない。
 それどころか、まるで近接攻撃を嫌うようにしてる』

( ^ω^)(……! そういう……ことかお!)

『わかったようね それじゃ───いくわよ!』

ゆっくりと、腰を落とすブーン。
モララーのパートナーは剣と聞かされていた。
だから今まで、剣に注意して懐に入り込めずにいた。

しかし先程、剣で迎撃できたはずの直線的な攻撃に、モララーはただ避けるだけだったのだ。

もしかしてと、ブーンは考える。

( ・∀・)「もういいかね? ではそろそろ、終わりにしようか」

モララーが銃口を向け、込められた弾丸へさらに、殺意を込める。

( ^ω^)(ゼロシステム───起動!)

リストバンドが先程とは比べ物にならない程に、輝く。


802 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:18:42.27 ID:wMLum2vV0

ゼロシステム───ほんの一瞬だけ、パートナーの計算処理性能を爆発的に上昇させる機能。
パートナーが念を察知して、その部位に伝えるまで、一秒にも満たないがタイムラグがある。
それを『ゼロ』にしてしまう、一度の戦闘で一度しか使えない、奥の手。

銃弾が放たれてからでは、そのタイムラグが命取りなのだ。
モララーの「二撃目」に、捉えられてしまう。

ブーンは右足を右へ開き、構えた。

( ^ω^)(いくお……ツン!)

『OKよ! やっちゃいなさい!』

そして、モララーから殺意が放たれたと、同時。

( ^ω^)(駆けろ!!)

思うが刹那、いや、刹那にも満たない、ゼロ。

ブーンが疾走する。

(;・∀・)「なっ…!?」

その余りの反応速度に、モララーは驚嘆の声を上げる。
弾丸が発射されたと同時に、駆けだし、いや、弾丸の下を潜る様に、超低空に飛んだ。


804 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:20:51.66 ID:wMLum2vV0

開いた右足は、右へ跳ぶと言う布石。
ブーンは見た。モララーの剣を。
微かに光を放ちながらやはり、「剣先は右へ向いていた」

モララーが咄嗟に剣先を戻すも、間に合わない。


( `ω´)「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!」


ブーンの拳が、モララーの顔面を捉えた。


吹き飛び、倒れ気絶するモララー。
その手から転がる、剣と銃。

モララーは剣からも銃撃していたのだ。
見れば、ツバの部分に発射口があった。

『───ヒント、あげすぎちゃったかな』

と言ったツンの声は、どことなく、嬉しそうだった。

                                終わり。


お題
コンピューター○○ちゃん○○には好きなAAを
先入観に関する考察
ゼロシステム起動


ありがとうございました

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