( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

──第6話 『歌声』


 

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/20(月) 23:30:54.09 ID:4QIRUr480

(,,゚Д゚)「おし、タクシーがくるはずだから、ちょっと待っててくれ」

( ^ω^)「どうもすみませんお」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「いいっていいって」

と言うと、ギコは胸ポケットから煙草をとりだし、火をつける。

(,,゚Д゚)「あ、しまった アイツにも電話しないとな……」

ギコはブーン達から少し距離を置くと、また電話をし始めた。

ブーンはガードレールに突っ込んだままの車をじっと見つめている。

ξ゚听)ξ「……悪魔が実体化したら、こんな程度じゃ済まないと思う」

ブーンの視線の先を一緒に見つめながら、言った。

ξ゚听)ξ「私達が、止めないと」

( ^ω^)「……わかってるお…」

しかし視線は、車に向いていた。



6 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:32:27.69 ID:4QIRUr480

ξ゚听)ξ「……なーんか、口だけって感じね」

それはツンの言う通りだった。
ブーンの中では未だ釈然としない物がある。

悪魔が実体化したら大変なのはわかる。
自分がそれを止めることができるかもしれないことも、
そうでなくても自分にはそれをするべき力があることも。

ただ、他人に決められたということが嫌なのだ。
駄々をこねた子供のようだと思われるかも知れない事は、ブーンも重々承知だ。

頭ではわかっているのだ。しかし心が動かないでいた。

やがて見かねたツンが、

ξ゚听)ξ「ねぇブーン」

( ^ω^)「なんだお?」

言葉を続けようとした時、電話を終えたギコが近づいてきた。

(,,゚Д゚)「おう、じきに来ると思うぜって……取り込み中だったか?」

ξ゚听)ξ「あ、いえ、そんなことはないです ありがとうございます」



8 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:34:34.89 ID:4QIRUr480

暗がりでブーンとギコには見えなかったが、その言葉とは裏腹に、
ツンは少し残念そうな表情をしていた。

(,,゚Д゚)「ところで、二人は神社なんかで何してたんだ?」

(;^ω^)「おっ……」

(,,゚Д゚)「ああすまねぇ、職業柄ってか、気になるとつい口に出ちまうんだ
     気にしないでくれ 言えねぇなら、無理に話さなくていい」
     
( ^ω^)「……ありがとうですお」

ξ゚听)ξ「ちょっとマスコミの人を見直したかも……」

(,,゚Д゚)「あーいやまぁ、仕事上突っ込まないといけない時はあるけどな
     取材以外じゃ詮索なんかしねーよ」
     
どうやらこのギコと言う人は、良い人のようだ。
と、二人は思った。

少しの間談笑していると、ブーンが何かの光に気付いた。
木々の間からちらちらと光が見え隠れしている。

( ^ω^)「車がきたお」

そして二人も、その方向に視線を移した。



9 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:35:42.75 ID:4QIRUr480



( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです



第6話『歌声』




11 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:36:28.77 ID:4QIRUr480



車は進み、すでに玖都留(クトル)区へと入っていた。
窓に流れる景色は夜のそれ。
だが空は、普通の夜とは違う闇の濃さを増していた。

( ´∀`)「どの辺りですか?」

J・F『海に近かったホー 変な建物に入って行った気がするホー』

(´・ω・`)「海に近い建物……ちょっと範囲が広すぎるな」

( ゚∀゚)「おいお前 ちょっと見て来いよ」

J・F『お断りだホー』

(#゚∀゚)「てめっ! 俺はお前の主人だろ?!」

J・F『主人じゃなくて、オマエはオイラだホー 立場は平等だホー』

(#゚∀゚)「このやろっ……!」

川 ゚ -゚)「まぁまぁ、J・F、ひとつ頼まれてくれないか?」

J・F『ヒーホー! 任せておくホー!』

クーに言われると、J・Fは車の屋根をすり抜けて飛んで行った。

(  ∀ )



13 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:38:41.55 ID:4QIRUr480

川 ゚ -゚)「可愛いじゃないか」

(#゚∀゚)「どこがだよ!」

('A`)「ある意味ジョルジュに似てる……な」

(´・ω・`)「ふふっ そうだね」

(#゚∀゚)「だからどこがだよっ!」

( ´∀`)「とりあえず、私達はここで待ちましょうか」

そう言って、モナーは道脇に車を停止させた。

海に面した玖都留区は、いわゆる工業区に当たる。
大半の工場は一日の業務をすでに終えており、不気味な静けさを保っていた。

沈黙の中、ショボンが口を開いた。

(´・ω・`)「モナーさん」

( ´∀`)「はい」

(´・ω・`)「モナーさんは悪魔を見たことがあるんですか?」



14 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:40:37.79 ID:4QIRUr480

( ´∀`)「ありますよ」

ごく平然と言った。

( ´∀`)「悪魔というか、いわゆる霊の類ですが」

(´・ω・`)「ああ……お祓いとかですか」

( ´∀`)「そうですね 職業柄そういった物に出会う機会は多いです」

川 ゚ -゚)「悪魔と霊は違うものなんですか?」

( ´∀`)「根本は同じでしょうが、違うのは影響力ですかね」

(´・ω・`)「というと?」

( ´∀`)「精々が呪いであったり、幻覚を見せる程度しかできない感じです」

(´・ω・`)「直接触れたりはできないと?」

( ´∀`)「そうですね 強力な者は干渉力が強いようですが、大半がその程度です」

(´・ω・`)「なるほど……」




16 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:42:35.01 ID:4QIRUr480

そしてしばらく、モナーの武勇伝をショボン達は静かに聞いていた。
簡単なお祓いから口裂け女の退治まで、普通なら胡散臭いと思う内容だった。

しかし今のショボン達にとってはどれも興味深い話だった。
実際に異形化した死体を目の当たりにしているのだ。
信じるしかなかった。

('A`)「モナーさんのペルソナってどんな感じなんですか?」

( ´∀`)「知りたいですか? その時がくれば、見せてあげますよ」

その時。それはペルソナを出さざるを得ない状況。
そんな状況にならない方が良いに決まっている。

しかし、この場にいる全員が思っていた。

きっとそれはすぐに、やってきてしまうのだろうと。


『ただいまホー 案内するホー』

少しの沈黙の後、J・Fが戻ってきた。
モナーは車を発進させる。

窓に流れる景色は、不安を現したような闇。
案内をするJ・Fの陽気な声で、皆は幾分か気が楽になった。



17 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:45:17.22 ID:4QIRUr480

いくつかの交差点を曲がり、しばらく進むと、海が見えた。
闇のみを映した夜の海は、まるで手招きをしているようで。

そんな不気味な海の横を、車は進む。

左に海、右に倉庫。
そんな景色が続き、やがて道は海に直面した。

行き止まりだ。

J・F『あれだホー』

J・Fが右方向の倉庫を指差す。
それは、周囲の倉庫と似たような造りだった。
今のところ、誰のペルソナも騒いではいないようだ。

( ´∀`)「とりあえず、降りてみましょう」

モナーの声に、皆は車を降りた。

吹き付ける海の風は少し冷たく、寒がりなドクオは少し震えていた。

周囲に注意を払いながら、一同は倉庫に近づく。


18 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:47:27.11 ID:4QIRUr480

やはりそれは、他の倉庫と変わらない物だった。
重機で荷物を運ぶ為か、正面には大きな入口が一つ。
そしてその左側に人だけが出入りする為の扉が一つ。

窓が見当たらない為、どうやらその二つしか入れそうな場所はないようだ。

正面の入口は機械で操作して開ける仕組みだろう。
そう考えたモナー達は扉の方に近づいた。

試しにモナーがドアノブを捻ってみる。

( ´∀`)「まぁ…そう簡単にはいきませんか…」

やはり扉には鍵がかかっていたようだ。

ドクオが扉に耳を当て中の様子を探ろうと試みる。

('A`)「声とか……人の気配はしない感じだぜ」

( ゚∀゚)「なんかドラマとかで、ヤーさんが麻薬の取り引きしてそうなとこだな」

('A`)「実際してたら洒落になんねーな」

川 ゚ -゚)「なぁ、これを見てくれ」



19 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:49:31.04 ID:4QIRUr480

クーが何かに気付いたようだ。皆がそれに注目する。

( ´∀`)「よく見えませんね……どれ」

モナーが袴の袖からペンライトを取り出した。

( ´∀`)「こんなこともあろうかと思って、もってきて正解でした」

ペンライトでそれを照らす。
そこには小さな、ロゴのような物が張られていた。

そしてそれは、全員が見覚えのある物だった。

(´・ω・`)「これは……VIPのマーク……」

( ´∀`)「…どうやら、当たりのようです。」

J・Fが見かけた悪魔。そしてそれはこの倉庫へと消えていったという。
そしてその倉庫には、VIPのロゴマーク。

全員に緊張が走った。

( ゚∀゚)「J・F、中みてきてくれねーか?」

J・F『わかったホー』



20 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:51:02.16 ID:4QIRUr480

空気を読んだのか、J・Fは素直に倉庫の中へと消えていった。

( ´∀`)「……便利ですね…」

( ゚∀゚)「いつも言うこと聞いてくれりゃいいんですけどね」

( ´∀`)「あのようなタイプのペルソナは初めて見ました」

(´・ω・`)「やっぱりペルソナにも色々いるんですか?」

( ´∀`)「いえ、降魔して使役する以外は見た事はないですね」

(´・ω・`)「J・Fは完全にジョルジュから独立しているようですけど…」

( ´∀`)「そうですね……あれではまるで……」

悪魔のようだ。

そう言いかけてモナーは言葉を飲み込む。
J・Fから悪意は感じられないし、皆の、特にジョルジュの不安を煽る気がしたからだ。
しかし、J・Fがジョルジュの呼びかけに応え姿を現したのも事実。

ペルソナには違いがないはずだ。

モナーはそう思いつつも、何か釈然としない物があるようだ。




22 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:52:33.96 ID:4QIRUr480

やがて扉から、J・Fが頭だけを出して、

J・F『誰もいないっぽいホー ていうか真っ暗だホー』

( ゚∀゚)「おう、サンキューな」

(´・ω・`)「モナーさん、どうするんです?」

('A`)「蹴破っちまおうぜ」

( ´∀`)「まぁまぁ、ここは穏便にいきましょう」

そう言いながら、先程と同じ様にモナーは袖の中に手をいれる。
取り出したのは、よくわからない細長い金具がリングに複数ついた物。

(;´・ω・`)「それってまさか……」

( ´∀`)「こんなこともあろうかと」

平然と言い、モナーはそれでドアノブをいじり始めた。

('A`)「テレビで見るピッキングとかのあれか…?」

( ゚∀゚)「なんであんなもん持ってるんだ……しかも袖の中から…」




24 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:54:27.69 ID:4QIRUr480

皆の疑問をよそに、モナーは黙々と解錠を試みている。
少しすると、カチャリと音がした。

( ´∀`)「開いたようです 皆さん注意を」

モナーの言葉に、ショボン達は少し身を堅くした。

モナーがゆっくりと、ドアノブを捻る。

キィという音が少しして、扉が静かに開けられた。

当然の如く、中は真っ暗だった。
これでは入ろうにも入れない。
モナーは注意を払いながら、扉のすぐ横の内側の壁を探った。

( ´∀`)「ありました 電気のスイッチです」

そしてもう一度、注意を促す。
暗くてよく見えないが、モナーは全員が静かに頷いたのを確認すると、

( ´∀`)「点けます」

電気を点けた。




25 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:56:05.26 ID:4QIRUr480



( ^ω^)「うおっまぶしっ」

ハイビームなのか、車を見ていたブーンは思わず目を瞑る。
車はどうやら、かなりのスピードを出しているらしい。
飛ばし屋か何かだろう。とてもタクシーとは思えない速さだった。

ξ゚听)ξ「危ないから下がりましょ」

3人はガードレールをまたぎ、少し離れた所へ避難した。

走り屋と思われていた車は、その割にエンジン音は静かだった。
やがてそれがブーン達の前を横切る、その瞬間。


キィィィィィィィィィィィィィ!!


タイヤと地面が激しく擦れ、けたたましい音が響く。
そのまま車は反回転し、ゆらゆらと揺れながら停止した。
タイヤの焦げた匂いが辺りに漂う。

そして、運転席の扉が勢いよく開けられた。




26 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:57:38.70 ID:4QIRUr480

(*;−;)「ギコ君ギコ君!大丈夫!?」

現れたのは顔をくしゃくしゃにしながらギコの名前を呼ぶ、
少し小柄な女性だった。

(,;,゚Д゚)「しぃ?! おま、なんでここに…」

(*;−;)「電話くれたじゃない! 事故ったって!」

どうやらタクシーを呼んだ後に電話した先は、しぃだったようだ。

(,;,゚Д゚)「いやしたけど…お前別に普通だったじゃないか」

(*;−;)「だけど! 急に不安になったの! どこも痛くない?」

(,,゚Д゚)「ん、あぁ……怪我はないぞ 安心してくれ」

(*;−;)「よかった……ギコくぅん……」

そしてしぃはギコの胸の中に顔を埋め、少しの間肩を震わせた。
そんなしぃを慰めるように、ギコはそっとしぃの腰に両手を回し、優しく抱きしめる。

少し冷たい夜風が、抱きしめる腕を強くさせていた。



27 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/20(月) 23:59:29.60 ID:4QIRUr480

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

そんな2人を見つめる2人。

見つめるというか、呆気にとられていた。

(,;,゚Д゚)「あ……おい、しぃ 」

(*゚ー゚)「うん?」

ギコの胸から顔を上げたしぃは、すでに泣きやんでいた。

(,,゚Д゚)「えーと…人見てるから、な?」

(*゚ー゚)「え? あっ!」

しぃは呆然と自分達を見つめていたブーン達を見ると、慌ててギコから離れた。

(*゚ー゚)「えと、あと、うーんと? どちら様ですか?」

ブーンとツンも同じ事を聞きたかった。



29 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:01:19.40 ID:Z02nT8/I0

(,,゚Д゚)「この二人は事故った時に近くを通ってて、心配してくれたんだ」

(*゚ー゚)「あ、そうなんだ 主人の為に、ありがとうございます」

ξ゚听)ξ「いえ、とんでもないです」

(,,゚Д゚)「コイツは俺の嫁のしぃって言うんだ」

( ^ω^)「奥さんですかお 僕は内藤ホライゾンって言いますお」

ξ゚听)ξ「私はツンです」

(*゚ー゚)「恥ずかしい所をお見せして…ごめんなさい」

( ^ω^)「おっおっ 大丈夫ですお」

(,,゚Д゚)「そういや、俺も君達の名前は聞いてなかったな 改めてよろしく」

ξ゚听)ξ「よろしくです」

(,,゚Д゚)「しっかし、しぃが来てくれたなら、タクシーいらなかったな」

(*゚ー゚)「あれ? 直帰で大丈夫なの?」



30 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:03:00.45 ID:Z02nT8/I0

(,,゚Д゚)「今回の件は俺の独断だからな その方がいい」

(*゚ー゚)「……あんまり危ないことに首を突っ込まないでね…?」

(,,゚Д゚)「わかってる お前に心配はさせたくないからな」

(*゚ー゚)「心配させたばっかりじゃない」

(,;,゚Д゚)「わ、わりぃ…」

(*゚ー゚)「ばか……」

そしてまた、しぃがギコの胸に顔を埋め……

( ^ω^)「あいや、それはもういいですお」

ブーンの声に、しぃはまたぱっと離れた。

(*゚ー゚)「あ、あら私ったら……」

ξ゚ー゚)ξ「しぃさんがギコさんに夢中なのはよくわかりました」

(,,゚Д゚)「俺だってしぃに夢中だぜ」

(*゚ー゚)「ギコ君……」



32 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:04:58.35 ID:Z02nT8/I0

しぃが瞳を潤ませ、またギコの胸に

( ^ω^)「それはもういいから」

(,;,゚Д゚)「あ、あぁ、すまんすまん」

実にわかりやすい夫婦だった。

ξ゚ー゚)ξ「仲が良くて憧れます」

(*゚ー゚)「ありがとう ツンちゃんは可愛いから、きっとすぐにいい旦那さんが見つかるよ」

ツンが返事に困っていると、しぃはブーンをちらりと見、

(*゚ー゚)「……それとも、もう候補は居ちゃったりして?」

( ^ω^)「おっ? なんですかお?」

しぃの視線が自分に向けられたので、ブーンは疑問をそのまま言葉にした。

その瞬間。

( ゚ω゚)「ギャース!!」




33 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:06:47.09 ID:Z02nT8/I0

ブーンの後頭部に衝撃が走った。

ξ゚听)ξ「あんたは黙ってなさい!」

どうやら、ツンに鞄をぶつけられた様だった。

(*゚ー゚)「あらら、前途多難な二人ねー」

そんなやり取りを見て、しぃはクスクスと笑う。
ツンの行為は不器用な照れ隠しなのだが、ブーンはそれに気付くはずもなかった。


(,,゚Д゚)「お、タクシーが来たぜ」

しぃの時と同じように、ちらちらと見える光にギコが気付いた。
遠くに見える光は、しぃに比べるとひどくゆっくりに感じる。

一体何キロ出していたのだろうか……

(*゚ー゚)「あの車遅いねー」

3人は何も言わず、ただ静かに車が来るのを待った。

頬には、冷たい汗が伝っていた。



34 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:08:46.06 ID:Z02nT8/I0



点いた明かりは、入口周辺だけのようだった。
しかしずっと暗がりにいた一同は、急な明かりに少し目を細める。

やがて目が慣れた頃、皆は周囲を見渡した。

( ´∀`)「……何にも、ないですね」

(´・ω・`)「そうですね……ダンボールとか荷物のようなものすら…」

そこには本当に何もなかった。
見るからに倉庫の佇まいなのだが、何かを保管している様子が見当たらない。
物がないのだから、物陰もなく、人が隠れる場所もない。

( ´∀`)「主電源を探しましょう 薄暗いですから、お気をつけて」

ドアは閉めておいてください、と言い足して、モナーは奥へと歩いて行った。
ショボン達も固まって、警戒しながら主電源を探し始める。

( ゚∀゚)「ほんとにここに悪魔が入ってったのか?」

J・F『ホントだホー 多分アイツは、モー・ショボーだホー」

(´・ω・`)「モー・ショボー? どんな悪魔なんだい?」



36 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:11:04.73 ID:Z02nT8/I0

J・F『鳥女みたいなヤツホー』

('A`)「ゲームにでてくるハーピーみたいなヤツか」

J・F『ハーピーとはまた違うんだホー 人間に近い格好してるホー』

('A`)「ハーピーもいるのか……もうなんでもアリだな」

J・F『モー・ショボーは本気だすと鳥っぽくなるけど、普段はほとんど人間だホー』

川 ゚ -゚)「J・Fは物知りだな」

と言いながら、クーがJ・Fの頭を撫でる。

J・F『ヒーホー! なんでも聞いてくれホー!』

上機嫌なようだ。

談笑もほどほどに、ショボン達も主電源の捜索に気を入れる。
捜索と言っても、見た限り何もない倉庫だ。
壁伝いに歩いていけば、それはすぐに見つかった。

( ´∀`)「ありました 点けますね」

今度は言って直ぐに明かりを点けた。




37 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:13:39.95 ID:Z02nT8/I0

ゆっくりと電灯に明かりが灯り、徐々にその光を強くしていく。
見渡せる範囲が段々と広くなるのに合わせ、皆が周囲を見る。

そして明かりが頂点に達した頃、倉庫の全貌がその下に晒された。

( ゚∀゚)「何もねぇなぁ……」

(´・ω・`)「何もないね……」

中の隅々まで見渡せるようになってからの感想が、それだった。

本当に何もない。
あるのは、3メートル程の長さで腰の高さ程度の白い柵だけだった。
長い横棒が打ちつけられた柱は少し細く、そして間隔も短く設置されていた。
これは何を意味するのか、柵はコンクリートの床にしっかりと固定されている。

('A`)「怪しいのはアレだな」

ドクオの声に、全員の視線が柵に集中した。
皆はそれに近づき、観察を始める。

川 ゚ -゚)「柵だな……」

( ゚∀゚)「柵だな……」



38 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:15:25.52 ID:Z02nT8/I0

( ´∀`)「ううん……もう使われていないのでしょうか…」

川 ゚ -゚)「しかし、J・Fが嘘を言っているとも思えません」

('A`)「何かあるには違いねぇと思うんだけどな…」

暫くの間、皆が頭を抱え唸りながら柵を観察していた。

するとショボンが立ち上がり、

(´・ω・`)「どうやら人が出入りしてるのは間違いなさそうだよ」

('A`)「なんでわかるんだ?」

(´・ω・`)「まず電気 使ってないなら電気が通じてない可能性がある
      だけど他の倉庫と連結してるかもしれないから、この理由は弱いね」
     
( ´∀`)「他にまだあると?」

(´・ω・`)「ええ、ここを見てください」

全員が近寄り、ショボンが指さした場所を見る。
一見、そこはどの部分とも変わりがないようだった。

('A`)「ここがどうしたんだ?」


39 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:17:35.60 ID:Z02nT8/I0

(´・ω・`)「次に、ここ」

と言って別の場所を指差す。
そこも違いは見られない。

( ゚∀゚)「何か違いがあんのか?」

(´・ω・`)「ああ、見てて」

ショボンは2回目に指さした位置を指で軽くなぞった。

(´・ω・`)「ほら」

言いながら、指の腹側を皆に向ける。
指先には、白い粉のような細かい物が付着している。

( ´∀`)「埃……ですね」

(´・ω・`)「ええ そして最初の、ここ」

また指を差し、

(´・ω・`)「ドクオ 僕がやったみたいになぞってみて」

('A`)「ん、ああ」



41 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:20:08.28 ID:Z02nT8/I0

ショボンに倣い、ドクオがそこを指でなぞる。
そしてその指を見ると、

('A`)「……ついてねぇ」

(´・ω・`)「そうなんだ 見ていたけど皆ここは触ってない もちろん僕も
      でもここには埃がついてない……他のとこにはついているのに」
     
( ´∀`)「なるほど……お見事です」

(´・ω・`)「それも見た限りここくらいしか埃がないんだ」

川 ゚ -゚)「その周辺が怪しいというわけか」

(´・ω・`)「そういうことさ ここに手をついて、何かをする……例えば」

言いながらショボンはその部分を掴み、しゃがみこんだ。

(´・ω・`)「しゃがむとかね」

目の前の柵の柱を観察する。
他の皆は、そのショボンの姿をじっと見つめていた。

(´・ω・`)「……これか?」



43 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:23:01.21 ID:Z02nT8/I0

柵の柱の根元付近。ショボンはそこを見ながら呟いた。
そこには小さく、「Barbatos」と書かれている。

(´・ω・`)「奥から数えて8番目の柱にバルバトス……」

川 ゚ -゚)「ソロモン72柱か?」

( ゚∀゚)「ななじゅうふたはしら? なんだそりゃ」

川 ゚ -゚)「ソロモン王に封印された悪魔の話だ 序列8番目の悪魔、バルバトス」

J・F『変な堕天使野郎だホー』

(´・ω・`)「ああ、主天使(ドミニオン)クラスの堕天使だったと言われているね
      動物の言葉が解る彼は、皮肉にも狩人の姿で話に登場する」
     
ショボンが「Barbatos」と書かれた部分を掴み、ゆっくりと捻った。

最初は少し固かったが、やがてそれは素直に回るようになる。

(´・ω・`)「そしてバルバトスが知っているのは……」

カチャリ、と音がした。
同時に地面が少し揺れ、次に柵を中心とした大人2人分程の幅の床が、沈み始めた。

(´・ω・`)「魔術師の宝の隠し場所さ」



44 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:26:02.15 ID:Z02nT8/I0

(;゚∀゚)「うおおおおおおお! 沈みだした!」

('A`)「落ち着けよ ってかまさか床自体がエレベーターになってるとはなぁ…」

(;´∀`)「ショボンさん、お見事ですとしか言い様がありません……」

(´・ω・`)「いえ、ヒントが多かったですから」

J・F『コイツスゲーホー』

川 ゚ -゚)「ああ、スゲーな』

ショボンが道を見つけた事で、皆盛り上がったようだ。
最初こそゆっくりだったエレベーターだが、それは次第に速さを増していき、
今では普通のエレベーターと同じような浮遊感を皆は感じていた。

( ´∀`)「壁に気をつけて下さいね」

モナーの言う通り、手を伸ばせば届く距離に壁がある。
危険そうなのは皆見るだけで解っていた。

(´・ω・`)「この先はさすがに、何もないとは思えない 警戒しよう」

('A`)「ああ、そうだな」



45 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:29:17.77 ID:Z02nT8/I0

( ´∀`)「ここで何が行われているかはわかりませんが、
       恐らくVIPの人間がいるのは間違いないでしょう」
       
皆が顔を見合せ、気を引き締める。

('A`)「ま、普通の人間ならどうにでもなりそうだけどな」

川 ゚ -゚)「だが、J・Fが見たという悪魔も気になる」

( ゚∀゚)「だな 気合いれていこーぜ」

(´・ω・`)「あ、そういえばJ・F」

J・F『なんだホー?』

(´・ω・`)「この床は抜けられるかい? 悪魔はそうして入って行ったと思うんだけど」

J・Fは悪魔は人間に見えていないようだと言っていた。
それは恐らく、実体化をしていない証拠だろう。
とすると、現実の物に触れることは不可能なはずだ。

それと同じように、J・Fなら先の様子を見れるのではないかと、提案したようだ。

J・F『いけると思うホー いってく……』



46 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:31:50.99 ID:Z02nT8/I0

だがしかし、それは実行に移されなかった。
足元から段々と光が口を開けて行く。
それは、エレベーターの終着を意味していた。

( ´∀`)「気をつけて」

光が伸びる方向を向き、身構える。
人の気配は未だなく、ペルソナも騒いではいないようだった。
しかし皆の体には、緊張が走る。

そしてエレベーターは静かに停止した。
上の時と同じように、床との境目がわからない程ぴったりと納まっている。

モナーが静かに足を踏み出す。
最初の倉庫とはうって変わって、モナーが踏み出した床から伸びた先の風景は、
まるで病院のような清潔感溢れる通路が伸びていた。

奥に見える突き当たりまで部屋はなく、白い壁のみが続いている。

( ´∀`)「注意して、進みましょう」

モナーの声にショボン達が後に続く。
聞こえるのは自分達の足音だけ。

そして突き当たりに差し掛かり、曲がり角の手前で立ち止まった。




48 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:33:57.63 ID:Z02nT8/I0

( ゚∀゚)「……J・F」

ジョルジュが声を抑えてJ・Fを呼ぶ。
意図を察したのか、J・Fは返事をせずに曲がり角に出た。

別れた道は、右と左。
最初に右を、次に左を確認したJ・Fは振り返り、

J・F『誰もいないホー』

安全を知らせた。

モナー達も進み、左右を見る。
同じ様な白い壁が続き、今度は所々に扉があった。

川 ゚ -゚)「J・F、部屋の中を見てくれないか?」

J・F『オヤスイゴヨウだホー!』

ふよふよと浮遊しながら、J・Fは部屋の中へ姿を消していった。

(´・ω・`)「何かの研究所みたいな……造りはそんな感じかな」

( ´∀`)「ええ、そんな印象ですね」


49 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:36:50.69 ID:Z02nT8/I0

('A`)「まさか地下にこんな物があるなんてな」

( ゚∀゚)「金は有り余ってるみたいだしな、VIP様はよ」

川 ゚ -゚)「近々、世界トップ企業の南条グループとも連携するそうだぞ」

(´・ω・`)「テレビで言ってたね 南条グループも日本から伸し上がった大企業だ
      VIPとはどこか似ている物があるね」
     
( ゚∀゚)「んだけど、VIPのモララーは怪しいぜ……こんなもん作ってるし」

(´・ω・`)「でも不思議と悪い噂はないんだよね、VIPって」

( ´∀`)「はい モララーは学生時代も抜き出た存在でした
       きっと実力だけで発展させたのでしょう」
       
モナーの言葉に、ショボンは少し俯いて、
       
(´・ω・`)「天才……か」

ぽつりと、呟いた。

暫くすると、少し奥の部屋からJ・Fが顔を覗かせた。

J・F『なんかこの部屋変な壁があって悪魔がいるホー』




50 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:38:45.22 ID:Z02nT8/I0

悪魔。

その言葉を聞いて、皆から抜けていた緊張が再度体に走る。

J・F『多分モーショボーだけど、子供だったホー』

悪魔に大人子供があるのかはわからないが、J・Fが言うならそうなのだろう。

( ´∀`)「行ってみましょう」

一同はJ・Fが頭を出している部屋へと向かう。
途中にある部屋も気になっているようだが、入るタイミングを無くしていた。
ついた先は他と同じ、普通のドア。

( ´∀`)「開けます 用心を」

一言、注意を促した後、モナーはドアを開けた。

その部屋は電気が点けっ放しで、部屋の隅に置かれたデスクには書類の様な物が散乱していた。
その横で、起動されたままのノートパソコンがスクリーンセーバーを映している。
部屋の奥は透明なガラスの様な物で仕切られ、その奥でうずくまる影があった。

それは膝を抱え、体育座りで顔を伏せている少女。



52 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:41:39.54 ID:Z02nT8/I0

J・F『この壁、通り抜けれないんだホー』

J・Fの声に、少女がピクリと反応し、顔を上げた。


モ*゚−゚シ『……だれ……?』


その顔は少女というより幼女のような、幼い女の子だった。
しかし、頭に生えた茶色の小さな二つの羽根が、人間でないことを現している。
皆は顔を見合わせると、ゆっくりと女の子に近づく。

( ´∀`)「……どうしたんですか? なぜこんな所に?」

モ*゚−゚シ『……』

J・F『コイツはモーショボーの子供だホー』

(´・ω・`)「閉じ込められているのかな」

('A`)「悪魔も可愛いのがいるんだな…」

川 ゚ -゚)「このロリコンめ」




54 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:44:29.18 ID:Z02nT8/I0

(;'A`)「いや、決してそう言う意味じゃなくてだな…」

(´・ω・`)「まぁまぁ パソコンも点けっ放しだし、多分この部屋には人が戻ってくるよ」

( ´∀`)「ふむ……モーショボーさん? なぜこんなところに?」

モ*゚−゚シ『……おじちゃんたち、わたしがみえるの?』

( ´∀`)「ええ、見えますよ 大丈夫、ひどいことはしませんよ」

モナーの温厚な表情が功を奏したのか、警戒心は薄れたようだった。

( ´∀`)「なぜこんな所にいるのですか?」

モ*゚−゚シ『あのね、ぐねぐねーってなって、きがついたらしらないとこで、うたがきこえたの』

(´・ω・`)「歌……?」

モ*゚ー゚シ『うん うたがね、いうの おいでーって』

(´・ω・`)「歌に……呼ばれてる?」

川 ゚ -゚)「何か関係がありそうだな」




55 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:46:30.59 ID:Z02nT8/I0

モ*゚−゚シ『それでね、ここにきたら、おねーちゃんがここにはいれっていったの』

(´・ω・`)「この部屋の主かな?」

( ´∀`)「もっと色々聞きたいのですが……長居はできませんね」

そう。さっきショボンが言ったように、この部屋の主は戻ってくる可能性があった。
しばしの間、考え込む一同。

そして。

( ´∀`)「この子を連れていきましょう」

(;゚∀゚)「ええ?! まじっすか?」

( ´∀`)「悪魔ですし、誘拐にはなりませんよ」

(´・ω・`)「僕もそれがいいと思います」

('A`)「一応は悪魔だろ……大丈夫なのか…?」

( ´∀`)「大丈夫でしょう ペルソナが騒がないのが証拠です」

('A`)「まぁそうですけど……」



57 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:48:52.16 ID:Z02nT8/I0

( ´∀`)「この壁は……そうですね、破壊してしまいましょうか」

(;'A`)「えっ そんなことしていいんですか?」

( ´∀`)「想像以上の力を発揮して逃げ出した こうなると思います」

(;゚∀゚)「そんなうまくいくもんですか……」

(´・ω・`)「見つからなきゃいいのさ」

そう言い、ショボンが一歩前に出た。

(´・ω・`)「危ないから下がっててね」

モーショボーに注意し、ショボンがペルソナを呼ぶ。

(´・ω・`)『一文字斬り』

縦に2度、横に1薙ぎしガラスが長方形に切り取られる。
ガラスはどうやらアクリルのような物だったらしい。

( ´∀`)「さぁ、こっちへきてください」




59 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:50:37.44 ID:Z02nT8/I0

モナーに呼ばれ、モーショボーがとてとてと駆け寄り、アクリルの外に出た。

モ*゚ー゚シ『ありがとー』

(´・ω・`)「ふふっ 礼には及ばないさ」

( ´∀`)「では戻りましょうか」

言いながらモナーがモーショボーを抱きかかえる。

( ゚∀゚)「あれ? 触れるんですか?」

( ´∀`)「はい ペルソナの術者なら触れることはできますよ」

(´・ω・`)「J・Fに触れるのと同じ様な感じかな?」

( ゚∀゚)「そいやJ・Fにも触れるんだったな」

川 ゚ -゚)「ああ、触れるぞ ほら」

いつの間にか、クーはJ・Fを抱きかかえていた。
J・Fの顔はご満悦と言った感じだ。




62 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:52:39.92 ID:Z02nT8/I0

( ゚∀゚)「ったく……抜け目ねぇな……」

文句を言いながらジョルジュがドアを開けようとした、その時。

モ*゚−゚シ『う……た……』

( ´∀`)「うん? どうしました?」

モ*゚−゚シ『うたが……きこえる……おいでって……いってる』

( ゚∀゚)「歌? なんも聞こえねぇけど」

川 ゚ -゚)「J・Fは聞こえるか?」

J・F『きこえないホー』

(´・ω・`)「……悪魔にしか聞こえない歌、か……」

困惑する一同を後目に、モーショボーは虚空を見つめ、繰り返す。

モ*゚−゚シ『いかないと……うたが……」

(´・ω・`)「あのアクリルは、歌を遮断する為…? でもなんのために…」



64 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:55:01.98 ID:Z02nT8/I0

その時、部屋のドアが開けられた。
部屋に入ってきたのは、白衣を纏った一人の女性。

从;゚∀从「なっ?! お前ら何してる?!」

室内を見るなり、女は驚いて声を上げた。

川 ゚ -゚)『ドルミナー』

すかさずクーがペルソナを呼び、眠りを誘う言霊を紡ぐ。
女は少しふらつき、膝をついた。

が、眠ることはなかった。

川 ゚ -゚)「む……抵抗力がある……?」

从;゚∀从「ぐ……お前ら……ペルソナ使い……か?」

女はペルソナの事を知っているようだ。
だがショボン達はペルソナの共振を感じていない。
それはこの女がペルソナ使いでないことを意味していた。

そしてモナーが一歩前に出、

( ´∀`)「突然の無礼、お許しください」




66 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:57:04.90 ID:Z02nT8/I0

( ´∀`)「あなたが声を出さないというのなら、危害は加えません」

从;゚∀从「いきなりぶっ放しといてよく言うぜ……まぁ、大人しくはする」

(´・ω・`)「ジョルジュ、ドアを閉めて鍵も」

( ゚∀゚)「お、おう」

ドアに最も近かったジョルジュがドアを閉め、鍵をかける。

从 ゚∀从「とりあえず、その子を元に戻すんだ 歌に呼ばれる」

( ´∀`)「ふむ……解りました」

ひとまずモナーは女に従い、モーショボーをアクリルの中へと戻す。
開けてしまった箇所は、頼りないが立てかけただけだ。

モ*゚ー゚シ『うたがとまった』

どうやら我に返ったようだ。

その間に女は立ち上がり、散らかったデスクの椅子に腰かけた。

从 ゚∀从「で、あんたらはなんなんだ?」



68 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 00:58:40.14 ID:Z02nT8/I0

( ´∀`)「不法侵入者相手に、随分と冷静ですね」

从 ゚∀从「はっきり言う人だな ま、説明してやるよ」

女がモナー達を見回し、やがて話し出した。

从 ゚∀从「まず、あんたらはペルソナ使いのようだ あたしがどうにかできる相手じゃない
      無駄な争いはしたくないんでね」
     
从 ゚∀从「そして……最近の騒動について探ってるんだろう?」

(´・ω・`)「察しがいいですね」

从 ゚∀从「なめんなよ高校生 これでも博士号持ちだぜ」

女は得意気に言った。どうやら気は相当強いようだ。

从 ゚∀从「んで……ペルソナ使いが探ってるとなると……
      この場所、尻尾を掴んでるとしたら、VIPに不信感を抱いている 違うか?」
     
( ´∀`)「……自分もVIPの人間でしょうに、はっきり言う人ですね……」

モナーは女に言われたことと同じ事を言う。




70 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/21(火) 01:00:15.90 ID:Z02nT8/I0


从 ゚∀从「VIPに不審を抱いてるなら、あんたらはあたしの味方だ」

VIPであるはずの女が、はっきりと味方だと言った。

(´・ω・`)「……あなたはVIPの方では……?」

すると女は、大きく息を一つ吐き、

从 ゚∀从「あたしはこの研究所に勤める、副所長のハインリッヒ高岡だ
      ハインと呼んでくれ」
     
名を名乗った。


                                         続く。

 


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