( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

──第7話 『ディオスクロイ』


2 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:45:01.71 ID:7cadKrgs0

 
 


( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
 
 
 


第7話『ディオスクロイ』
 
 
 

 

3 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:46:21.17 ID:7cadKrgs0

ハインと名乗った女は、無造作に足を組み、モナー達を見回した。
何かを待っているようだ。

しかし沈黙を続けるモナー達に痺れを切らし、

从 ゚∀从「自己紹介はしてくれないのか?」

( ´∀`)「保身の為に黙秘します 信用ができると判断できたらします」

ハインは少し口元を吊り上げ、肩をすくめた。

从 ゚∀从「ハイハイ、わかりましたよ そうだねぇ……どこから話すか……」

(´・ω・`)「あなたもVIPに対して不審を抱いているようですが、その辺りから」

从 ゚∀从「かー! 高校生に尋問されるとはねぇ……こういうプレイも悪くないな」

(´・ω・`)「茶化さないでください」

从 ゚∀从「ハイハイ、悪かったよ」

そう言った顔は笑っていた。
ハインは余裕を見せながら、話し始める。

从 ゚∀从「5年前、社長は鳴留羅(ナルラ)山の遺跡に行ったのを境に、怪しいことを始めた」

 

5 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:48:48.68 ID:7cadKrgs0

从 ゚∀从「それまでは至極真っ当な事業を展開してたんだが……急に土地を買い漁ったり、
      ここみたいな研究所の建設をし始めた」
     
( ´∀`)「ここのような施設がまだあると?」

从 ゚∀从「あぁ、覇洲(ハス)、津阿都(ツアト)、紅都亜(クトア)、そんで鳴留羅に一つずつある
      ここが一番規模がでかいけどな やってることも場所によって違う」
     
(´・ω・`)「ここでは何を?」

从 ゚∀从「まぁ落ちつけよ そんでここの副所長に任命されたあたしに任されたこと
      それが、『ある特定の種にしか聞こえない周波数を発する物を作れ』だった」
     
(´・ω・`)「それがあの子が言っていた『歌』だと?」

从 ゚∀从「半分正解だ そんなもん作ったって、歌になんかなりゃしねぇ
      ま、第一段階ってとこかな」
     
するとハインは、机の上にあるノートパソコンをいじり始める。

从 ゚∀从「開発が進んで少しした時、社長が検体を持ってきたんだ」

( ´∀`)「検体?」

从 ゚∀从「……これだよ」

ハインはノートパソコンのディスプレイをモナー達に向けた。
 


7 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:50:50.10 ID:7cadKrgs0

そこに映っていたのは、虫の羽のような物が背中に4枚生えた少女だった。
静かに眠っているようだったが、手足が拘束されている。

( ゚∀゚)「……なんだこりゃ?」

J・F『ピクシーだホー』

从 ゚∀从「なんだソイツ? ぬいぐるみじゃないのか……悪魔か?」

( ゚∀゚)「ペルソナだよ」

从 ゚∀从「へぇ 変わってんだな」

(´・ω・`)「こんなもの一体どこから?」

从 ゚∀从「知らん 社長がいきなり持ってきたんだ」

そう言ってまたノートパソコンを自分の方へ向けた。

从 ゚∀从「音をこいつの声帯に合わせろってな……無茶言いやがるぜ」

川 ゚ -゚)「そして出来上がった物がその『歌』なのか?」

从 ゚∀从「ああそうだ 人間には聞こえない超音波をこいつの声に合わせた
      どう聴こえてるかはしらねーけど、悪魔には歌みたいに聞こえてるみたいだ」
     
 


10 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:53:26.27 ID:7cadKrgs0

从 ゚∀从「だがまだ試作段階だ 似たようなタイプの悪魔にしか聴こえない」

(´・ω・`)「なるほど それでモーショボーか」

从 ゚∀从「他にもよくわからんもんが来てるけどな それもここ数日の間に、急にだ」

( ´∀`)「……昨日の病院のあれ以前からすでに悪魔が……」

从 ゚∀从「病院か……あれは津阿都の担当だったな
      詳しくは知らねーけど」
     
(´・ω・`)「それで、呼んだ悪魔で何をしてるんです?」

从 ゚∀从「知らねーよ どういうわけか『歌』に呼ばれた悪魔達は洗脳されたみたいに大人しい
      その間に運ばれるんだ 覇洲区の研究所に」
     
(´・ω・`)「副所長なのに、わからないんですか?」

从 ゚∀从「所長が最前線でやってるからな あたしは補佐しかしてない
      何考えてるかわからねー人だ」
     
( ´∀`)「それで、あなたがVIPに不審を抱く理由がわからないのですが」

从 ゚∀从「話はまだ終わってねえよ ……続けるぞ」
 


12 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:55:59.99 ID:7cadKrgs0

从 ゚∀从「最近、いろんな悪魔がくるようになってからまた社長がきたんだ」

川 ゚ -゚)「やけにアクティブな社長だな」

从 ゚∀从「あの人は神出鬼没なんだよ で、
      今度は新しく呼ばれた奴を使って改良しろ、だとさ」
     
从 ゚∀从「……こんな見たこともない奴等を解剖して、わけのわからないことされて、
      どーにも釈然としない物があった」
     
ハインは一つ大きく息を吐いた。

从 ゚∀从「社長と頻繁に話してんのは所長だ だから聞いたんだ、所長に」

(´・ω・`)「その答えは?」

从 ゚∀从「───君が知る必要はない 黙って研究に専念したまえ、だとさ」

(´・ω・`)「お決まりのセリフですね」

从 ゚∀从「予想はしてたけどな そんでその後に言ったんだ その子を研究対象にしろってな」

ハインは視線をモー・ショボーに向ける。
皆もその先を見た。

モ*゚ー゚シ『?』
 



15 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 20:58:39.29 ID:7cadKrgs0

从 -∀从「できるか? 人間とほとんど変わらねぇ……悪魔っつったって、色々いる
      人間だって悪い奴もいればいい奴もいる 人と変わらねえんだよ……」
     
皆はじっと、モー・ショボーを見つめている。
その顔はとても無邪気で、人間の子供と変わらない。

从 ゚∀从「そんな子を解剖して、もっと悪魔を呼んで、何すんだって話だ」

モナー達は何も言うことはできなかった。

从 ゚∀从「自我がある、感情がある、じゃあ動物はいいのかって言われたら、何も言えねぇ、
      偽善者と言われたら違うとも言わねぇ でもあたしは、その一線だけは越えられない」
      
言いながら、ハインはモー・ショボーに近づく。
そして屈み、また彼女を見つめた。

从 ゚∀从「研究者として、科学者として、あたしは自分が情けない
      この子がどこからきたかもわからないから、帰してやる方法もわからない
      だからここで保護することしかできない……情けねぇ……」
     
モ*゚ー゚シ『おねーちゃんどうしたの?』

从 ゚∀从「ははっ なんでもないよ」

その姿は、妹を慕う姉の様な、子を想う母の様な、そんな姿だった。

ショボン達は顔を見合せ、一つ頷く。
 


18 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:01:00.11 ID:7cadKrgs0

(´・ω・`)「ハインさん、僕はVIP高校のショボンと言います」

( ゚∀゚)「俺はジョルジュ ジョルジュ長岡だ」

('A`)「俺はドクオ」

川 ゚ -゚)「私は素直クール クーでいい」

4人はハインの話を、ハインという女性のことを信じたようだ。
その証拠にと、自己紹介をした。
モナーはただじっと、その様子を見つめている。

ハインは少し笑い、立ち上がってショボン達を見つめた。

(´・ω・`)「ハインさんは、なぜこの子が見えるんですか?」

川 ゚ -゚)「私の魔法も効果が薄かったのも気になる」

从 ゚∀从「あぁ、まずはショボン君の方だけど」

そう言ってハインは下を向き、人差し指の先を目に軽く当てた。
そして顔を上げた後、その指先に残っていたのは、コンタクトレンズ。

从 ゚∀从「あたしが開発した、『悪魔みえみえレンズ』だ」

ネーミングがよくわからないが、すごいという事はショボン達は理解できた。
 


20 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:02:52.65 ID:7cadKrgs0

从 ゚∀从「悪魔は特殊な電磁波を出してるんだが、それを捉えて映像化したデータを
      脳にヴィジョンとして送る すごいんだぜ」
     
(´・ω・`)「へぇ……さすが科学者ですね……」

从 ゚∀从「ナノテクはあたしの専門だ こういうのは任せとけだぜ」

得意気に語り、またコンタクトをはめる。

从 ゚∀从「次に、……クーくんの質問だが」

川 ゚ -゚)「クーでいいですよ」

从 ゚∀从「わかった、クーの質問だがな、この白衣に秘密がある」

一見、何の変哲もないただの白衣だ。

从 ゚∀从「ペルソナ能力を持っている人は、悪魔と同様に特殊な電磁波が体を覆ってる
      それは悪魔の攻撃に耐性を持ってるみたいなんだが、
      この白衣はその電磁波を微々たるものだが放出することができる」
     
(´・ω・`)「科学的に見るとそんな感じなんだね」

从 ゚∀从「本家の電磁波に比べると屁にもならねーが、効果はさっきの通りだ」
 


22 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:04:59.45 ID:7cadKrgs0

(´・ω・`)「でもなぜそんな物を?」

从 ゚∀从「たまに暴れだす悪魔がいるんだ うちの専属のガードマンが処理するんだけど、
     いきなり攻撃されたらたまらねーからな 防弾チョッキみたいなもんさ」
     
(´・ω・`)「なるほど」

( ´∀`)「……そのガードマンはペルソナ使いなのですか?」

从 ゚∀从「ああそうだ VIP専属のペルソナ使いは結構いる」

( ´∀`)「そうですか……」

それを聞いてモナーは腕を組み、何かを考える素振りを見せた。
ペルソナ使いが複数いるとなると、モララー一人を叩くことは難しい。
おまけに、目的はわからないが、こんな大がかりな施設をいくつも設けている。

少し厄介なことになったと、モナーは考えていた。

从 ゚∀从「で、あたしからも質問なんだけど」

(´・ω・`)「なんでしょうか?」

从 ゚∀从「どうやってここに入ったんだ? ここはVIP本社からか、
      あるとこからしか入れないはずなんだが」

 

24 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:06:01.70 ID:7cadKrgs0

(´・ω・`)「多分、そのある所……倉庫から入りました」

从 ゚∀从「あの仕掛けを見抜いたのか」

(´・ω・`)「偶然ですけどね」

从 ゚∀从「そうか……所長はソロモン72柱が好きでね そういうのが多いんだ」

(´・ω・`)「なるほど……」

从 ゚∀从「次の質問なんだが、……お前達の目的はなんだ?」

( ´∀`)「モララーを止める為です」

从 ゚∀从「……随分はっきりと言い切ったな……なんでそこまで動く?」

( ´∀`)「過去の友人を止めたいだけ、ですよ」

(´・ω・`)「僕らはモララーは知りませんが、ペルソナを与えた存在に言われたんです
       この世に危機が迫っていると」
     
( ゚∀゚)「そんで、モナーさんの話を聞いて、動かなくちゃってな」

从 ゚∀从「……本気で死ぬかもしれないんだぞ?」

('A`)「それはわかってるさ」
 



25 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:07:19.94 ID:7cadKrgs0

(´・ω・`)「でもやらないといけない ペルソナがそう言ってる」

川 ゚ -゚)「そして、私達自身もそう思っている」

ショボン達に宿るのは、確たる意思。
それを確認したハインは、少し目を閉じた後、またしっかりとショボン達を見、言った。

从 ゚∀从「わかった その子と一緒に、あたしも連れてってくれないか?」

突然の申し出。

ショボン達は顔を見合せ、やがて全員が向いた先はモナーだった。
モナーは少し考え、そして。

( ´∀`)「私は津阿都神社の神主、モナーと申します よろしくお願いします」

从 ゚∀从「ありがてぇ よろしく頼む」

二人は握手を交わすと、モーショボーに視線を移す。

( ´∀`)「あの子はどうするんですか?」

从 ゚∀从「ああ、この帽子をかぶってもらう」

言ってハインは、白衣の大きなポケットからベレー帽のような帽子を取り出した。
 


27 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:08:17.87 ID:7cadKrgs0

(´・ω・`)「それは?」

从 ゚∀从「アムドゥスキアスの周波を遮断する物だ」

( ゚∀゚)「アム……なんだって?」

从 ゚∀从「ん、言ってなかったか モララーに言われて作った悪魔を呼ぶシステムだ
      通称、『アムドゥスキアス・システム』」
     
川 ゚ -゚)「またソロモン72柱か」

从 ゚∀从「そうだ、詳しいな」

川 ゚ -゚)「オカルトは結構好きなんだ」

从 ゚∀从「へぇ、奇麗な顔して変な趣味だな」

川 ゚ -゚)「あなたもな」

二人はクスリと笑う。

アムドゥスキアス。ソロモン72柱の一柱で、ユニコーンの姿で描かれる。
序列67番目の彼は、人には見えない音楽隊を率いているという。

悪魔にしか聴こえない音を発することに関連して、つけられたのだろう。



28 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:09:05.96 ID:7cadKrgs0

从 ゚∀从「生地にはこのアクリルと同じ繊維を混ぜてある 触れることもできるはずだ」

ハインはモーショボーに近づき、彼女を呼び寄せる。

从 ゚∀从「ほら、こっちきな」

モ*゚ー゚シ『はーい』

とてとてと、ショボンが開けた穴からモーショボーが出てきた。
そしてハインに帽子をかぶらせる。

モ*゚ー゚シ『えへへ』

どうやら気に入ったようだ。
しっかりと両手で帽子を抑えつけて、ご満悦の様子だ。

(´・ω・`)「じゃあどうしますか?」

从 ゚∀从「とりあえず、ここから出る 今日はだめだ ここにはまだ所長がいる
      専属のボディーガードもいるし、何より所長自身がペルソナ使いだ」
     
( ´∀`)「そうですか……一旦出直した方が賢明ですね」

( ゚∀゚)「ぶっ倒しちゃえばよくね?」

(´・ω・`)「相手の力量もわからないから、それは無謀だよ」


30 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:10:51.53 ID:7cadKrgs0

( ゚∀゚)「……そっか、そうだよな」

ジョルジュはアザピーの時のことを思い出していた。
また何も考えずに突っ込んで、仲間を危険な目に合わせてしまう所だった。
そんなことは、もうごめんだ思ったばかりなのに。

( ´∀`)「モララーに雇われる程の使い手なら、相当の手練でしょう
      ここはハインさんから情報を色々お聞かせ願うのが最善です」
       
('A`)「次はブーン達も連れて、準備万端で行こうぜ」

从 ゚∀从「そうと決まれば脱出だ 人がいないか見てくるぜ」

そう言ってハインはノートパソコンだけを持つと、部屋から出て行った。

モ*゚ー゚シ『おでかけするのー?』

( ´∀`)「ええ、お引越しです 歩けますか?」

モ*゚ー゚シ『もしょはとべるんだよー ほらほら』

言いながら、モーショボーはふわふわと浮きだした。

( ´∀`)「すごいですね ところでモショと言うのはお名前ですか?」

モ*゚ー゚シ『なまえ? よくわかんない』


31 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:13:47.49 ID:7cadKrgs0

川 ゚ -゚)「いいんじゃないか 正直呼びにくいしな」

('A`)「モショちゃんだな!」

( ゚∀゚)「ドクオ……」

(;'A`)「な、なんだよ……」

(´・ω・`)「ふふっ よろしくね、モショちゃん」

モ*゚ー゚シ『……うんっ よろしくね』

モショは嬉しそうにぱたぱたと羽を揺らす。

そうしていると、ハインが部屋に戻ってきた。

从 ゚∀从「いいぞ 今のうちだ」

一同は急いで、来た道を引き返す。

ハインの帽子の効果は抜群のようだ。
モショが歌を聴くことはなかった。嬉しそうにJ・Fと一緒に飛んでいる。

そして再びエレベーターに乗り、ハインの操作によって上昇していった。


34 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:14:35.69 ID:7cadKrgs0

(´・ω・`)「しまったな、明かりは消しておくべきだった」

頭上に小さく見えている出口の光を見上げながら言った。

从 ゚∀从「まぁ大丈夫だ ここを使う奴はそんないない」

( ゚∀゚)「そうなのか?」

从 ゚∀从「ひとまずただの研究員でこっちを使う奴はいない
      車も入れないしな、こっちからだと」
     
('A`)「そういや、VIP本社と繋がってるって言ってたな」

从 ゚∀从「ああ、直通の通路があってな 大体はそこを通って通勤してるんだ」

(´・ω・`)「そんな大規模な地下トンネルが……」

从 ゚∀从「それも急ピッチで作られた 何をそこまで急いでるのかは知らねーけど」

(´・ω・`)「なるほど……ここはどちらかと言うと、悪魔用の入口なのかな」

从 ゚∀从「そうだな 稀に使ってる奴もいるけどな」

モ*゚ー゚シ『らくちんらくちん♪』

J・F『便利な世の中だホー』


35 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:15:53.91 ID:7cadKrgs0

そしてエレベーターは地上へと出た。
相変わらず倉庫内はがらんとしている。
ハインは主電源を落とし、一同は外への扉へと向かった。

ショボンがドアノブを握り、


止まった。


( ´∀`)「ハインさん」

从 ゚∀从「ん? なんだ?」

後から来たハインに声をかけるモナー。

( ´∀`)「モショちゃんと、少し下がっていてくれませんか?」

从 ゚∀从「別にいいけど、なんでだ?」

モナーは正面のドアを見ながら、言った。
その顔からは、普段の温厚な色は消え、少し険しい表情をしていた。

( ´∀`)「少し、危なくなるかもしれませんので」


36 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:17:41.03 ID:7cadKrgs0

ペルソナ使いであるモナー達は、すでにそれを感じ取っていたのだ。
自分と同じ存在の、波長を。

それは即ち、ペルソナの共振。

ハインがモショを呼び、自分の後ろに隠れるように言いつける。

ショボンが全員を見回し、静かに一つ頷くと、ドアノブを捻る。

キィと乾いた音を立てながら、ドアが開く。
同時に入りこむのは、夜の海の冷たい風。

ショボン達の肌が粟立つ。
しかしそれは、冷たい風だけのせいではない。


向けられた、敵意によってだ。


モナーの車にもたれかかる様に立っていた影は2つ。
言うまでもなく、敵意を放っていたのはこの2人だ。

倉庫からモナー達が出て、対峙する。

やがて、2人の男が静かに動いた。


38 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:20:08.09 ID:7cadKrgs0





(*゚ー゚)「どおー? おいしい?」

( ^ω^)「すっごくおいしいですお! ギコさんが羨ましいですお」

ξ゚ー゚)ξ「ほんと、とってもおいしいです」

しぃの手料理を食べながら、褒めちぎる2人。

タクシーを丁重に断った後、ブーンとツンはギコの車で送ってもらうことになった。
そこでしぃが2人を食事に招待したのだ。
最初は断ったが、しぃの懇願によりついに折れた2人は、ギコとしぃが住むアパートにきていた。

ちなみに家には連絡済みである。

(,,゚Д゚)「うめぇだろ? たくさん食えよ」

言われずとも、ブーンなど夢中で貪っていた。

ξ゚听)ξ「ブーン、もう少し落ち着いて食べなさいよ」



41 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:21:47.66 ID:7cadKrgs0

( ^ω^)「おっ……でも箸が止まらんお」

ξ゚ー゚)ξ「ま、ほんとにおいしいもんね」

(*゚ー゚)「いい食べっぷりねー 見てて気持ちいいわ」

(,,゚Д゚)「だなー 若さを感じるぜ……」

(*゚ー゚)「あら ギコ君だって充分若いじゃない」

(,,゚Д゚)「俺ももう30だ 色々感じる物がだなぁ……」

ξ゚听)ξ「えー、見えませんよ 充分お若いと思います」

(,,゚Д゚)「そ、そうか? 俺もまだまだいけるのか?」

(*゚ー゚)「うんっ かっこいいよ!」

(,,゚Д゚)「しぃ……お前も可愛いぞ」

(*////)「やだ……ギコ君ったら……」

ξ゚听)ξ「あ、ブーン、お醤油とって」



43 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:24:01.92 ID:7cadKrgs0

2人の世界に入ってしまったギコとしぃを放置して、ツンも食事に集中した。
イチャつく2人を後目に、ブーンはもりもりと貪り、ツンもぱくぱくと食べる。

……そう言えば、ブーンと晩御飯食べたの久しぶりだな……

ツンはそんな事を思った。
幼馴染の二人は、小さな時はよく互いの家で食事をした事があったり、
2人の家族と一緒に外食へでかけたりしていたのだが、それもいつしか減っていった。

高校に入った今では、そういうことはまったくなくなった。
少し昔を思い出しながら、夢中でご飯を口に運ぶブーンを、ツンは見つめる。
昔と変わらない、実に気持ちのいい食べっぷりだった。

そんな姿を見て、思わず口元が緩んでしまう。

気付くと、そんな様子をギコとしぃが見ながらにやにやしていた。
ツンは途端に真っ赤になり、正面を向きなおしてまた食事を始めた。

そんなツンを見て、クスリと笑う2人。
2人も食べ始め、温かい料理はみるみるうちに無くなっていった。

しかし、4人を包む空気は、温かいままだった。



45 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:25:52.07 ID:7cadKrgs0

( ^ω^)「ごちそうさまでしたお」

(*゚ー゚)「お粗末さまでした」

すぐさま食器を片づけ始めたしぃを見て、

ξ゚听)ξ「あ、私も手伝います」

ツンが手伝いを申し出た。

(*゚ー゚)「あら、ありがとう」

気をよくして、素直に好意を受ける。

( ^ω^)「おっ 僕も手伝いますお」

(*゚ー゚)「ありがと でもここは女の子に任せてね」

( ^ω^)「おっ……わかりましたお」

立ち上がりかけた所、しぃに丁重に断られ、再び椅子に座り直す。

(,,゚Д゚)「しぃはな、男は台所出入り禁止!ってな……こえーんだよ」


48 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:27:49.45 ID:7cadKrgs0

ギコがぼそりと言う。
それを聞き逃さなかったしぃは、ギコをギロリと睨んだ。

両手を顔の前で合わせ、頭を下げるギコ。
しぃは満足気に頷くと、ツンと一緒に台所へと消えて行った。

(,,゚Д゚)「ふー……で、内藤くんよ」

( ^ω^)「なんですかお?」

(,,゚Д゚)「ツンちゃんとは、どこまでいってるんだ?」

いかにも興味津々といった様子だ。

( ^ω^)「どこまで? いつも学校まで行ってますお」

(,;,゚Д゚)「いやそうじゃなくてだな…」

ブーンのずれた回答に、ギコは思わずガクっと首を曲げる。

(,,゚Д゚)「ツンちゃんのこと、好きなのか?」

これならどうだと、ストレートに聞いた。


50 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:29:18.35 ID:7cadKrgs0

( ^ω^)「好きですお 昔からよく一緒に遊んでますお」

はっきりと好きと言った。
だがそれはきっと、友達として好きと言う意味なのだろう。
ブーンの口調がそれを物語っていた。

(,,゚Д゚)「んー……ま、これからゆっくりってとこか」

( ^ω^)「なにがですかお?」

(,,゚Д゚)「いやいいんだ 俺が言うことじゃねーし、頑張るんだぞ!」

(;^ω^)「おっ? よくわかりませんお」

困惑するブーンを後目に、ギコは笑いながらうんうんと頷いていた。

そして女性サイドでも、そんなやり取りが行われていた。

(*゚ー゚)「ツンちゃん、内藤君とはどこまでいっているの?」

突然の質問に、皿を拭いていたツンは思わず皿を落としそうになってしまう。

ξ;゚听)ξ「ど、どこまでって、そんなんじゃありませんから!」

ツンはさすがに、質問の意図がわかったようだ。
というか、わからない方がおかしい。



51 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:31:13.00 ID:7cadKrgs0

(*゚ー゚)「あららぁ 付き合ってるわけじゃないのねぇ」

ξ;゚听)ξ「そ、そうですよ! 変なこと言わないでください!」

(*゚ー゚)「でも、ツンちゃんは内藤君のこと好きなんじゃないの?」

ξ;゚听)ξ「う……」

それは図星だった。

(*゚ー゚)「好きでも色んな形があるもんね 内藤君は鈍いみたいだし、
     ツンちゃんが大丈夫なら、今のままでもいいかもね?」
     
ξ゚听)ξ「そう……ですね……」

(*゚ー゚)「あら 満足してないのかしら?」

ξ゚ー゚)ξ「……そんなことはないですよ」

ツンは少しだけ嘘をついた。
毎日ブーンと学校で会って、馬鹿をしていることには確かに満足していた。
しかし、ついブーンにきつく当たってしまう自分には、満足していなかった。

小さい男の子が、好きな子に意地悪をしてしまうという話はよく聞く。
自分の性格は、それによく似ている。好きな人に素直に接することができない。
そんな自分が嫌だったのだ。


52 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:32:14.63 ID:7cadKrgs0

ブーンにきつく当たる度、またやってしまったと後悔するのだが、
結局同じ事を繰り返してしまっている。
ブーンは笑って許してくれているが(というか慣れているが)、
いつか自分が嫌われてしまうのではないかと、恐れてもいた。

ツンの様子を見ていたしぃは、それが嘘であることを見抜いていた。
理由や心境まではわからなかったが。

(*゚ー゚)「ねぇ、ツンちゃん」

ξ゚听)ξ「はい?」

(*゚ー゚)「内藤君みたいな鈍い子相手には、こっちから動かないとだめよ」

ξ゚听)ξ「……」

(*゚ー゚)「でも全部押す必要はないと思うの そうだなぁ……スイッチを入れてあげるの」

ξ゚听)ξ「スイッチ?」

(*゚ー゚)「そう 恋愛のスイッチ」

ξ゚听)ξ「恋愛の……スイッチ……」

(*゚ー゚)「うん 内藤君の恋愛のスイッチを、ツンちゃんがつけてあげるの」


54 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:34:34.93 ID:7cadKrgs0

(*゚ー゚)「そうしてスイッチが入った男の子は、段々と意識をしていくの」

ξ;゚听)ξ「ゆ……誘惑とかですか?」

ツンの思わぬ発言にしぃは少し笑って、

(*゚ー゚)「それはやりすぎよー そうだなぁ……好きな人はいるの? とかね」

ξ゚听)ξ「でもそれじゃ……」

(*゚ー゚)「大丈夫 内藤君は鈍いから気付かないわ
    でもそういうのが元で、恋愛について考えてくれるようになるかもね」
    
ξ゚听)ξ「なるほど……」

(*゚ー゚)「そうやって少しずつ、スイッチを入れてあげるの
     でもいつもの調子を崩しちゃだめよ? ありのままの自分で聞くの」
    
ξ゚听)ξ「ありのままの自分……」

自分の嫌いな、自分。

(*゚ー゚)「内藤君がいつもと違う感じになったら、チャンスよ
     あの子は本当に鈍そうだから、時間かかると思うけど、頑張ってね」
    
ξ゚ー゚)ξ「……はい」



55 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:35:41.54 ID:7cadKrgs0

(*゚ー゚)「お姉さん応援してるからねー あ、そうだ
     よかったらメールアドレス交換しない?
    
ξ゚ー゚)ξ「あ、喜んで」

そして2人は笑いながら、洗い物を続ける。
ツンはしぃを姉のように、しぃはツンを妹のように感じていた。

他人が見ても、2人はきっと、仲の良い姉妹に見えるだろう。



(,,゚Д゚)「いやまじ、2は登場悪魔が濃いよな!」

( ^ω^)「ですおね! でもボス戦ラッシュがきついですお……」

(,,゚Д゚)「しかし一番恐ろしいのはテンタラフー無双だと思うんだが」

( ^ω^)「あれが8体出た時の絶望感と言ったら……」

こちらはゲームの話に花を咲かせていた。
二人もまた、仲のいい兄弟のようである。


しかし、そんな和んだ空気は、1本の電話によって打ち壊されてしまう。



59 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:37:54.12 ID:7cadKrgs0

不意に音が鳴り、ギコが携帯を取る。
楽しそうにゲームの話をしていたギコの顔は一変し、仕事の顔になる。

洗い物を終えたしぃとツンもリビングに戻ってくる。
しぃは電話をしていたギコを見て、少し不安そうな顔になった。

ブーンとツンは、その微妙な空気に顔を見合せ、口を出せずにいた。

ギコは短い返事を繰り返している。
そして静かに電話を切った。

顔を上げしぃを見て、

(,,゚Д゚)「すまん、仕事だ ちょっと会社に戻らなくちゃいけなくなった」

(*゚ー゚)「……今日は帰ってこれる?」

(,,゚Д゚)「多分、すぐ帰ってこれると思う いつものアレだ 上司に呼ばれた」

(*゚ー゚)「そっか それなら大丈夫だね」

(,,゚Д゚)「そんな心配すんな 変な事には首突っ込まねぇさ」


60 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:39:23.40 ID:7cadKrgs0

大丈夫だと、しぃの不安を打ち消す様に微笑むギコ。
その顔を見て、しぃも笑顔で頷いた。

(,,゚Д゚)「会社は近いから、ついでに2人も送っていくぜ」

( ^ω^)「わかりましたお」

ξ゚听)ξ「あ、しぃさん アドレス交換だけでも」

(*゚ー゚)「あ、うん」

二人はいそいそと携帯を取り出し、互いのメールアドレスを交換し始めた。
ギコも一旦脱いだスーツをまた着直し、出かける支度を終えた。

ξ゚ー゚)ξ「よろしくお願いします」

(*゚ー゚)「こちらこそよろしくね」

2人もアドレス交換を終えたようだ。
すでに玄関に向かっていたブーンとギコの後に続く。

(,,゚Д゚)「それじゃ、行ってくる」

(*゚ー゚)「うん 気をつけてね」

( ^ω^)「お邪魔しましたお」


62 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:41:51.54 ID:7cadKrgs0

ξ゚ー゚)ξ「お邪魔しました ご馳走様です」

(*゚ー゚)「うん また来てね」

玄関先で挨拶を交わし、3人は駐車場へと向かった。
その背中が見えなくなっても、しぃは部屋には戻らず、少しの間外を見ていた。

足早に車に乗り込み、エンジンをかける。
ブーンとツンが後部座席に乗ったのを確認すると、

(,,゚Д゚)「んじゃ、行こうか」

ギコは車を発進させた。

(,,゚Д゚)「先に送ってくけど、家は津阿都区内だったよな?」

( ^ω^)「そうですお 御影(ミカゲ)町ですお」

ξ゚听)ξ「私も一緒です」

(,,゚Д゚)「御影町か 会社のが近いな」



64 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:43:57.86 ID:7cadKrgs0

( ^ω^)「ギコさんの用事を先に済ませてからでもいいですお?」

(,,゚Д゚)「急に呼ばれたってこたぁ、またなんか急な特集の原稿受け取るだけだろうし…
     んー、じゃあ、先に寄っていいか?」
     
ξ゚听)ξ「はい 大丈夫です」

(,,゚Д゚)「わりぃな んじゃ、行くぜ」

そうして3人を乗せた車はギコの会社へと向かって行った。


車内は無言。ツンは携帯を取り出し何やらメールをうっている。
そんなツンを視界の端に捉えながら、ブーンはあることを考える。
思い出すのは、出かける前のギコの言葉。

『変な事には首突っ込まねぇさ』

ギコはモナーに何の用事があったのだろうか。
もしそれが、VIPに……モララーに繋がることだったとしたら?
そうでなくとも、モナーは今悪魔の調査という危険な事をしているはずだ。

そんなモナーに関わりを持ったら、普通の人間のギコには危険だ。


67 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:45:52.33 ID:7cadKrgs0

止めるべきか、悩んでいた。
しかしもし、ギコが本当にVIPを追っているのだとしたら、
そんな事を言ったらきっと質問責めにあい、ギコはますます足を踏み入れるだろう。

止めるか、否か。

ブーンの心にモヤモヤとした物がわだかまる。

ブーンは思う。
自分は力があるからいい。自分の身は自分で守れるからと。
だがギコは普通の人間だ。

またあんな化け物が出たら、ひとたまりもない。
こういう時、力がある自分がどうにかするべきなのではないだろうか、と。

霞みがかっていたそれは、段々と形になって行く。
何かが、掴めそうな気がしていた。

ξ゚听)ξ「ブーン?」

ブーンの思いつめた顔に気付いたツンが、少し心配そうに声をかける。

( ^ω^)「大丈夫だお」

ツンを安心させるように、優しく言った。



69 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:47:53.74 ID:7cadKrgs0

そうしているうちに車はギコの会社に到着し、狭い駐車場に停車する。

(,,゚Д゚)「うし、じゃあちょっと行ってくる」

ブーンとツンは軽く頷くと、ギコの背中を見送った。
辺りは暗闇。密室の中で、男女が2人きり。

そんなシチュエーションに、ツンはしぃとの会話を思い出し、少し気まずそうにしていた。
チラチラとブーンを見ては、携帯を閉じたり開いたり……。
当のブーンは、そんなツンの様子などに気付くこともなく、窓の外を眺めていた。


そしてそれに、気付く。


駐車場の隅、細い路地が僅かに青く、ぼんやりと光っていることに。
そしてその光を見ていると、心が、ペルソナが安らぐような気がしていた。

( ^ω^)「ツン」

ξ;゚听)ξ「えっ? な、なに?」

急に名を呼ばれたツンは、慌てて返事をする。
そしてブーンが指さした方向に目をやる。


73 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:50:02.14 ID:7cadKrgs0

ξ゚听)ξ「なに……あの光……」

ブーンと同じく、ツンもその光を見て不思議な感覚を覚える。
じっと光を見ていると、そのうちにブーンが車の扉をあけ、降りた。

何も言わずに、ツンも後に続く。
二人は感じていたのだ。
あの光の先に、自分達を呼んでいる存在が居ることを。

真っ直ぐに細路地へと向かい、その奥に視線を移す。
そこにあるのは、一つの古ぼけた木の扉。
両隣にはビル。奥にもビル。

扉だけが、その間に立っていたのだ。
青い光を放っているのも、その扉だった。

なんと不気味な光景だと思うだろうが、2人は変わらずに心を落ち着かせていた。
お互いの顔を見合せ、一つ頷くと、ブーンが手を伸ばしドアノブを握る。
ゆっくりとドアノブを捻り、扉を開けた。

そこは、薄暗い青い部屋だった。
青くぼんやりと照らされた照明。壁の元の色すらわからない。
そして、壁以外何もない、空っぽの部屋。

しかし2人は、自分達を呼ぶ存在の気配を感じていた。
少し戸惑いつつも、ゆっくりと部屋に入り、扉を閉めた。



74 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:52:07.95 ID:7cadKrgs0





「こんな時間に、お散歩かな? 高岡副所長」

从;゚∀从「……っ ……お前らか……」

「どうもどうも、覚えていてくれて光栄だ」

从;゚∀从「散歩って言ったら、見逃してくれるのか?」

「いいですよ ただ……」

やっと、モナー達は暗闇に目が慣れてきた。
ハインは声で相手が誰だかわかったようだが、モナー達も警戒をしつつ影を凝視していた。
隠れていた月が顔を出し、2人の顔がその下に晒される。

( ´_ゝ`)「モー・ショボーたんは置いていってもらおうか」

(´<_` )「兄者、その高校生達も帰すわけにはいかないのではないか?」

( ´_ゝ`)「おおそうか 流石だな弟者」

2人の男は、まったく同じ黒いスーツを纏い、顔もまたそっくりだった。



75 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:53:55.78 ID:7cadKrgs0

( ´_ゝ`)「ということだ 君達はこんな所で何をしていたのかね?」

(´・ω・`)「悪人の調査ですよ」

( ´_ゝ`)「そうかそうか 正義の味方ごっこもいいが、ちょっと首を突っ込みすぎたな」

( ´∀`)「御二方は、ここで何が行われているのか知っているのですか?」

( ´_ゝ`)「知らん 金がいいから、ここにいるだけだ」

(´<_` )「たまに暴れる悪魔を処理するだけで、後はネット三昧でも怒られない」

( ´_ゝ`)「素晴らしいとは思わんか」

从;゚∀从「お前ら、他のガードマン達となんか違うと思ったら……」

(´・ω・`)「やれやれ 何も知らないってことか」

( ゚∀゚)「能天気な奴等だぜ」

('A`)「こんな奴等ほっといて、さっさと帰ろうぜ」

( ´_ゝ`)「まぁまぁ……しかし俺達にもメンツと言う物がある」


77 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:55:57.39 ID:7cadKrgs0

从 ゚∀从「流石兄弟……自分達が何の片棒を担がされてんのかわかってんのか?」

(´<_` )「そういうあんたも、わかってるのか?」

从 ゚∀从「知らねーよ 逆に知らねーからこそ、ここにいるんだ」

(´<_` )「なるほど……しかし俺達も、自分達の担当日に侵入者を逃がしたとなっては…
      面目が立たんわけだ」
       
( ´_ゝ`)「それにだな……」

兄者がゆっくりと腕を上げ、ある一点を指差す。
その先には───

モ*゚ー゚シ9m『?』

指を差されたモショもビシっと、兄者の真似をして指を差していた。

( ´_ゝ`)「俺の安らぎ、モー・ショボーたんを連れて行かれるわけにはいかない」

从 ゚∀从「変態かよ」

( ´_ゝ`)「なんとでも言え」

倉庫を出る前は緊張で張り詰めていた空気が、徐々に緩んでいっていた。
このまま誤魔化して帰れないだろうかと、モナー達は思っていた。



78 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:57:53.69 ID:7cadKrgs0

(´<_` )「む……兄者……そろそろ……」

( ´_ゝ`)「何? もうこんな時間か」

なにやらぼそぼそと2人で話した後、兄者はまたモナー達を指差し、

( ´_ゝ`)9m「もうすぐ見たいアニメが始まるんだ さっさと始末させてもらう」

また妙な事を言い出した。
流石兄弟はふざけているわけではないのだが、約2名、苛立っている者達がいた。

( ゚∀゚)「さっきからギャーギャーうるせーんだよ」

('A`)「録画しとけタコ」

( ´_ゝ`)「馬鹿め リアタイで見て且つ、録画することに意義があるんだ」

( ゚∀゚)「くだらねえって言ってんだよ こっちは真剣にやってんだ
     遊んでんならさっさとそこどけよ」
     
( ´_ゝ`)「むぅ……最近の若者はすぐに切れる……」

(´<_` )「カルシウムが足りないな 兄者も足りてないが」

( ´_ゝ`)「む、そうか……これは牛乳を飲まないといけないな」



80 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 21:59:49.30 ID:7cadKrgs0

('A`)『グライ』

突如紡がれた言霊。
呼びだしたイシュタムがゆっくりと手を下ろし、重力を流石兄弟に叩きつける。

その瞬間、流石兄弟はそれぞれ左右に跳び、それを避けた。
さっきまで2人が立っていたコンクリートが、虚しくへこむ。

( ´_ゝ`)「おいおい、いきなり危ないじゃないか」

(´<_` )「まったく、最近の若い奴ときたら……」

('A`)「うるせーよ どくかどかないかはっきりしろ やるなら……」

(#゚∀゚)「かかってこいや!」

ジョルジュの怒声と共に、空気が再び凍りついた。
それはジョルジュによるものではない。

流石兄弟から放たれている、ピリピリと肌をつく殺気。

( ´_ゝ`)「やはり少し……」

(´<_` )「お仕置きが必要だな」

ゆっくりと、モナー達を見据える。



81 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 22:01:50.46 ID:7cadKrgs0

( ´∀`)「ハインさん、下がっていて」

从 ゚∀从「あ、あぁ……気をつけてな」

( ´∀`)「ショボンさん 私が片方の相手をします 君達でもう一人を」

(´・ω・`)「わかりました」

モナーは弟者と、ショボン達は兄者と対峙する。

(´<_` )「やれやれ……なめられたものだな……」

( ´_ゝ`)「弟者、俺なんか子供が相手だぞ」

(´<_` )「ま、兄者、足元をすくわれるなよ」

( ´_ゝ`)「大人として紳士にあしらってやるさ」

殺気はそのままに、余裕を見せつける二人。
ジョルジュとドクオなどはさらに頭に血が上ったようだ。

今にも飛びかかりそうな2人をショボンが手で制し、前に出る。

(´・ω・`)「ところで、兄者さんかな? よかったね」



82 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 22:03:24.54 ID:7cadKrgs0

( ´_ゝ`)「なにがだ?」

(´・ω・`)「これからはゆっくりと、アニメを見ることができるよ」

( ´_ゝ`)「ん? 言葉の意味がわからないのだが……」

ショボンは少し笑った後、言い放つ。

(´・ω・`)「病院のベットで、ゆっくりとね」

これから病院送りにするという、明らかな挑発。
その言葉にジョルジュとドクオも思わず顔に笑みが浮かぶ。

一方の兄者はと言うと。

( ´_ゝ`)「……弟者」

(´<_` )「なんだ? 兄者」

( ´_ゝ`)「気が変わった 徹底的にやるぞ」

(´<_` )「把握した」

そしてさらに膨れ上がる殺気。


84 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/10/25(土) 22:05:41.35 ID:7cadKrgs0



( ´_ゝ`)『ペルソナ!』(´<_` )



息を揃えて、ペルソナを呼ぶ。
力ある言霊に応え、2人のペルソナが静かにその姿を現す。

一方は馬にまたがり、全身を覆う甲冑を身につけ、その手には槍が握られている。
一方は鎧は軽装で、その手には一振りの両刃の剣が握られている。

兄が使役するのは、英雄と謳われた馬術の名手。

( ´_ゝ`)『行くぞ、カストル』

弟が使役するのは、同じく英雄と謳われた、剣術と格闘に長けた剛の者。

(´<_` )『続くぞ、ポリュデウケース』

凶悪な殺意が、放たれた。

モナー達が、それを迎え撃つ。

戦いが、始まった。
 
                                   続く。


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