( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

──第8話 『ベルベットルーム』


 

2 名前:◆iAiA/QCRIM[] 投稿日:2008/11/01(土) 20:27:30.09 ID:wMLum2vV0

月に照らされ、二つの武器の影が交差する。

一つは、獲物を貫く長槍。
一つは、獲物を切り裂く長剣。

殺意を槍に乗せ、ショボン達と対峙するのは兄者、カストル。
一方、モナーと対峙するのは弟者、ポリュデウケース。

双子座を構成する二大恒星の名を冠したペルソナ。


 ('A`)( ゚∀゚)『ペルソナッ!』(´・ω・`)川 ゚ -゚)
 
 
ショボン達も半身を呼び、臨戦態勢に入る。

( ´∀`)「皆さん、お気をつけて」

視線は弟者のままに、皆に注意を促す。

( ´∀`)『ペルソナ』

モナーも静かに、その力を呼び起こした。

弟者がモナーの力を感じ、口元を僅かに吊り上げる。



3 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:29:54.29 ID:wMLum2vV0

(´<_` )「あんた……強いな……面白い」

モナーの呼びかけに応え、ペルソナがその姿を現す。

ピリピリと肌を刺すその威圧感に、弟者は気を引き締めた。

緑色に光り輝く絢爛豪華な鎧を纏い、三又の鉾(ホコ)、三叉戟(サンサゲキ)をその手に力強く握る。
その顔は険しく、まさに鬼神。あらゆる者を射抜くような眼光を放つ。

四大王衆天(シダイオウシュウテン)、所謂四天王の一角を担う、武神。
一般には、七福神の方が馴染み深いだろう。

( ´∀`)『ビシャモンテン』

猛り、三叉戟を勢いよく振り上げ、ピタリと、その矛先を弟者に向ける。

それに応えるように、ポリュデウケースも剣先をモナーへ向けた。

(´<_` )「紳士的じゃないか… オーケー、踊ろうか」

( ´∀`)「残念ながら、私は踊りを知らないのです……が」

モナーが笑った。それはいつもの優しい笑みではなく、不敵にだ。

( ´∀`)「貴方を踊らせることはできますよ」

その言葉が、戦いの火蓋を切った。




4 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:31:43.21 ID:wMLum2vV0

(´・ω・`)「……すごいな……」

モナーの力をその肌に感じたショボンが、思わず感嘆の声を上げた。
他の三人もそれは思っていた。

思い出される、アサピーの力。
あの時ショボン達が感じたのは絶望的な脅威だった。
しかし今は、例えるなら幼い頃見た父の背中の様な。

大らかで、優しく、力強い頼れる存在。
ショボン達は安心して、目の前の兄者へと視線を移す。

兄者は笑っていた。

( ´_ゝ`)「あっちの方が面白そうだ すまんがすぐ終わらせてもらう」

お前達など、歯牙にもかけていないと言う宣言。
それを聞いてクーがクスリと笑い、

川 ゚ -゚)「気が合うじゃないか」

(´・ω・`)「ああ、そうだね」

( ´_ゝ`)「……何?」




8 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:33:57.69 ID:wMLum2vV0

('A`)「俺達も、そのつもりさ」

( ゚∀゚)「とっととお前をぶっ倒すってことだよ」

ゆっくりと、モナーからショボン達へと視線を移していく兄者。
その動きと共に、段々と顔も歪んでいった。

( ´_ゝ`)「ふ…はは……ハハハハハハッ!」

怒りと歓喜が混じりあった、高らかな笑い。

( ´_ゝ`)「いいぞ! お前達! 抗え! 踊れ!」

(´・ω・`)「踊るのはアンタさ」

身構えるショボン達。
兄者は尚も口元を吊り上げ、余裕を見せる。

しかしその目は、獲物を狙う、狩人の目。
視線に殺意を乗せ、貫く。

ショボン達に走る、緊張感。

( ´_ゝ`)「獲物は眼前だ いくぞ、カストル」

兄者が、仕掛けた。




9 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:35:33.73 ID:wMLum2vV0



( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです



第8話『ベルベットルーム』





10 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:37:42.64 ID:wMLum2vV0

( ´_ゝ`)『二段突き!』

カストルから放たれた鋭い槍の一撃。
ショボン、クー、ドクオは右に、ジョルジュは左に跳びそれをかわす。

すかさずドクオとクーが、反撃に出る。

('A`)『グライ!』

川 ゚ -゚)『ガル!』

イシュタムにより叩きつけられる重力と、タレイアから放たれた風の刃。

( ´_ゝ`)「ふっ!」

兄者は後ろに跳躍し、ドクオのグライをかわす。
それを追いかけるクーのガル。
風の刃が、兄者を捉えた。

川 ゚ -゚)「何!?」

しかし刃は、虚しく兄者を通り過ぎて行った。

兄者の顔には、変わらず笑みが浮かんでいる。




12 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:40:20.94 ID:wMLum2vV0

( ´_ゝ`)「悪いな 俺のカストルにそれ系は無効だ よって俺にも効かん」

それはアサピーも言っていた、相性のことだ。
ペルソナには属性が存在する。それを理解していれば、
避ける必要のない攻撃はわかると言うわけだ。

(´・ω・`)「敵にすぐ情報を与えるのは、関心しないよ」

すぐさまショボンが駆ける。

(´・ω・`)『一文字斬り!』

ヤマが横薙ぎに剣を振るう。

しかしその剣は、カストルの槍によって止められた。

( ゚∀゚)『ブフ!』

その瞬間、ジョルジュも攻撃に移った。


J・Fから放たれた氷の飛礫が兄者に迫る。




14 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:42:33.43 ID:wMLum2vV0

兄者はそれを、さらに後ろに跳びかわした。

そして再び対峙する。

( ´_ゝ`)「みえみえなんだよ、攻撃が」

言い放ち、すぐさま第二波を放つ。

( ´_ゝ`)『マハガル!』

カストルが長槍を大きく振りかぶり、勢いよく横薙ぎに払い抜ける。
空気がねじれ、歪み、その衝撃がショボン達に駆ける。

風は鋭さを増していき、生み出されたのは複数の風の刃。

(´・ω・`)「!」

ショボンが真横に跳び、それをかわす。

(;'A`)「っく!」

ドクオもかわそうとしたが、僅かに右足を風がかすめていった。

川 ゚ -゚)「ドクオ!」



15 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:45:28.96 ID:wMLum2vV0

クーもかわし切れてはいなかったが、ダメージはほぼなかった。
制服のスカートの裾が僅かに切れている程度だ。
先程の相性のことだろう。

初撃をショボン達とは逆方向に避けたジョルジュには、攻撃は届いていない。

(´・ω・`)「クーのガルの範囲版……って感じか」

( ´_ゝ`)「わかったところで、何ができる」

言って兄者は、ショボン目掛け駆けた。
ペルソナの恩恵か、その動きは素早い。

( ゚∀゚)『ブフ!』

横合いから、一撃を放つジョルジュ。

( ´_ゝ`)「む!」

氷の飛礫が、ショボンと兄者の間を虚しく通り過ぎて行った。

その後、すぐさま間に現れた影。

(#゚∀゚)「オラァ!」

ブフを放つと同時に、ジョルジュもまた駆けだしていたのだ。




17 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:47:46.08 ID:wMLum2vV0

勢いのまま、兄者の顔面目掛け右拳を叩きこむ。
兄者はその拳を左手で受け止めた。

( ´_ゝ`)「惜しかった、なっ!」

無防備なジョルジュの腹に、兄者が右拳を放つ。
ジョルジュはそれを左足を上げて膝で止めた。

(;゚∀゚)「ぐおっ…!」

膝への衝撃に、顔を歪ませる。
条件はジョルジュに分があった。
だが、ペルソナの付加能力の差が出てしまった。

(#´_ゝ`)「はぁっ!」

力のままに、受け止めていた右手を掴み、真横へ投げ飛ばす。

(;゚∀゚)「がっ……」

そのまま肩から地面に叩きつけられるジョルジュ。
兄者はこの機を逃さない。

( ´_ゝ`)『二段突き!』

すぐさまペルソナで追い打ちをかけた───




19 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:50:29.82 ID:wMLum2vV0


───……


対峙する二人。
しかしその場は、どこか乱れている様子だ。

決定的な二人の違い。

モナーは動かずにいた。

そして弟者は、動けずにいた。

(´<_`;)(ハッタリじゃない……強い……)

手を出せないのだ。モナーの、ビシャモンテンの威圧感に。
対するモナーが動かない理由は、ショボン達だ。

視線こそ弟者から外さないものの、ペルソナの共振でそれを感じていた。
向こうは四対一だが、圧倒的に経験が違う。

彼等は自分達の希望だ、ここで失うわけにはいかないと。



21 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:52:52.28 ID:wMLum2vV0

しかし弟者にもプライドがある。
恐れをなし、兄者がこちらにくるまで時間を稼ぐ気など、毛頭なかった。

(´<_` )(心ここにあらずといった感じか……行くか)

意を決し、弟者が動く。

(´<_` )『ポリュデウケース!』

降魔と同時に、駆ける。
モナーも一歩足を引き、それを迎え撃つ構え。

(´<_` )『ツインスラッシュ!』

頭上に構えた剣を、一気に振り下すポリュデウケース。
モナーはそれを僅かに左に避け、かわす。

虚しく空を切る剣。
その剣が、モナーの脇腹辺りの高さでピタリと止まる。

そして次に、斜めに斬り上げる。

鋭い二撃目が、モナーの腋目掛け襲いかかる。



22 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:55:21.54 ID:wMLum2vV0

しかし剣は、モナーの体を切り裂くことはなかった。
しっかりと、三叉戟の先端でその剣を受け止めていた。

(´<_` )「チッ!」

それを確認すると、すぐにまた距離をとる。
モナーは追わず、また静かに構え直す。

完全に、受けの態勢。

再び対峙し、冷たい風が通り抜けた。

(´<_` )(……何を狙っている……?)

自分の攻撃を防いだ後、反撃に出れたはずだ。
しかしモナーは動かなかった。
カウンターを狙うなら、今のは好機だったはずだが……

弟者の心に、戸惑いの色が生まれる。

(´<_` )(ビシャモンテンは武の神……格闘では劣るか…)

戸惑いを薙ぎ払うように、落ち着いて相手を分析する。



24 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 20:58:10.68 ID:wMLum2vV0

(´<_` )(……ならば……)

(´<_` )『ジオ!』

言霊に応え、ポリュデウケースが一筋の雷撃を放つ。
それは一直線にモナーへと走る。

モナーはまったく意に介さず、左へ跳びかわした。

(´<_` )『ジオ!』

すかさず二撃目を放つ。
それと同時に、弟者は駆けだしていた。

雷撃に重なり、隠れるように。

( ´∀`)「!」

二撃目のジオも、モナーは避けていた。
同じ様に跳躍してだ。

異なる点は、着地点に弟者が居た事。

(´<_` )「ぬん!」



25 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:00:08.32 ID:wMLum2vV0

重心を乗せた重い蹴りをモナーに放つ。
対するモナーは、体勢が悪い。

(´<_` )(入る──!)

一瞬の内に、弟者は確信した。

次の瞬間、弟者は宙を舞っていた。

(´<_` )「え───?」

自分のその状況に、弟者は理解できずにいた。
はっきりとモナーを捉えていた視界に、いつのまにか月が映っていたのだ。

あの瞬間、モナーは弟者が蹴り上げた右足を、下から押し上げた。
その勢いをまったく殺さずに、真上へと。

自分と、そしてモナーの力を加えられた弟者は、見事に反転し、宙を舞う形になった。

( ´∀`)「───津阿都流多聞天合気」

多聞天(タブンテン)。自らのペルソナの別称を冠した、合気の流派。
弟者は失念していた。ペルソナ、ビシャモンテンばかりに気を取られていたのだ。

術者モナー自身も、格闘術の達人だったのである。



28 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:02:26.54 ID:wMLum2vV0

(´<_`;)「っぐ!」

そして背中から地面に叩きつけられた弟者。
攻撃を受け流され、さらに自分の力も利用されたことに気付いたのは、
背中への衝撃を感じた時だった。

こうなっては仕方がないと、弟者は次の行動に移る。

即ち、追撃への対処。

先程より大きな、素人が見てもわかる決定的な隙。
しかしモナーから追撃が放たれることはなかった。

弟者が痛みを堪えながらモナーを見上げる。

その顔は自分には向いていなかったのだ。
モナーが見ていたのは、ショボン達の戦いだった。

ここにきて、弟者は気付いた。
モナーの徹底的な受けの動作の意味に。

(´<_`;)(始めから…俺など眼中になかったと言うのか……)

そう。モナーは隙を窺っていたのだ。
弟者ではなく、兄者の隙を。


29 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:05:03.31 ID:wMLum2vV0

モナーが弟者をあしらい、視線を移した時。
その弟者と同じように地面に転がるジョルジュが見えていた。

兄者がペルソナを呼び、殺意を込めて長槍を構える。

( ´_ゝ`)『二段突き!』

そして放たれた、長槍での突き。
ジョルジュに避ける術はない。

( ´∀`)『テトラカーン!』

咄嗟にモナーが紡いだ言霊。
ビシャモンテンが素早く両腕を突き出し、壁を支えるような姿をとる。

それと同時に、光り輝く薄い壁が、ジョルジュの前に現れた。
兄者の突きは、止まらない。

(;´_ゝ`)「ぐおっ!?」

長槍が壁に触れた瞬間、その力は壁に弾かれ、反動をその身に受けた。
後ろに弾かれながらもなんとか体勢を立て直し、鋭くモナーを睨む。

(# ´_ゝ`)「貴様……!」


30 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:07:00.70 ID:wMLum2vV0

川 ゚ -゚)『ディア』

その隙にクーがドクオの足を治療する。

(;'A`)「す……すまねぇ……」

川 ゚ -゚)「気にするな」

兄者は今、モナーと対峙している。
ショボンがクー達に近づいた。

(´・ω・`)「ドクオ よく聞いてくれ」

('A`)「ん…なんだ?」

(´・ω・`)「────────」

手短に、それを伝えた。

ドクオが静かに頷く。それを確認してショボンが立ち上がる。

( ´∀`)「ショボンさん」

(´・ω・`)「ええ、任せて下さい」

( ´∀`)「……解りました」



32 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:08:54.86 ID:wMLum2vV0

( ´_ゝ`)「待て 俺の用は終わって───」

(#゚∀゚)『ブフ!』

仕返しとばかりに、ジョルジュが氷の飛礫を叩きこむ。

(;´_ゝ`)「ちぃっ!」

完全に隙を突かれた兄者は避け切れず、右肩にその飛礫を受けた。
衝撃と同時に、肩に霜が薄く走る。

(#´_ゝ`)「ガキが!」

すぐさまジョルジュを睨み、襲いかかろうとした。
その間に割り込んだ、一つの影。

ショボンだった。

(´・ω・`)『ヤマ……!』

(# ´_ゝ`)『どいつもこいつも……カストル!』

降魔し、対峙する二人。


34 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:10:40.41 ID:wMLum2vV0

川 ゚ -゚)『スクカジャ』

クーがショボンに向け、発する。
女神タレイアの祝福を受けたショボンの神経が研ぎ澄まされていく。

(´・ω・`)「ありがとう さぁ、いくぞ!」

同時に、駆ける。

(# ´_ゝ`)「なめるな!」

迎え撃つ、兄者。

カストルが大きく長槍を横に構え、力を溜める。
これまでで最も大きな、殺気と、威圧感。

しかしショボは怯まない。
一直線に───疾駆した。

(#´_ゝ`)『ヒートウェイブ!!』

溜めた力を、横薙ぎに払い一気に放出する。
そして生まれるのは、槍圧による衝撃波。

殺意と、魔力を乗せたその斬撃は、赤い波となってショボンに迫る。



35 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:13:57.97 ID:wMLum2vV0

(´・ω・`)「ふっ!」

ショボンが、消えた。
兄者にはそう見えただろう。

しかし横から見ていたクー達にはショボンの動作がはっきりと見えていた。

迫りくる赤い斬撃を、ショボンはスライディングでかわしたのだ。

靴を、膝を擦りながら、尚もショボンは止まらない。
そしてやっと、兄者はショボンを視界に捉えた。

時すでに遅し。
迎え撃つ事は、できない。

(´・ω・`)『一文字斬り!!』

ヤマが横薙ぎにその剣を振るう。
クーのスクカジャによりその鋭さを増した、ショボンの一撃。

(;´_ゝ`)「うおおおぉぉぉぉおお!」

後ろへ、後ろへ跳べと、強い想いが咆哮となる。
脳が理解し、足を動かす。



38 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:16:27.25 ID:wMLum2vV0

ヤマの剣が、先に届いた。

しかし、

(´・ω・`)「浅い……!」

剣は兄者の両腿を僅かに切るだけに留まった。
カストルを降魔した兄者の物理防御力を超えることはできなかった。
ショボンの視界から遠ざかって行く兄者。

あわよくばこの一撃で。

そう思っていたショボンだったが、一歩、及ばなかった。
ショボンからの追撃は、ない。

託したのだ。


───ドクオに。


(#'A`)『グライバ!!』

イシュタムが両腕を掲げ、勢いよく振り下ろす。



40 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:19:14.59 ID:wMLum2vV0

(; _ゝ )「ぐっ! ぐおぉぉぉぉぉ!!」

グライの上位、グライバ。
幾重にも分かれた重力の波が、兄者を押し潰す。

膝をつき、尚も耐える兄者。

(;'A`)「っく! はぁ……はぁぁぁぁぁ!」

ドクオの消耗も激しい。

ショボンも近寄ることができない。

ドクオが押し切るか。
兄者が耐えるか。

(; _ゝ )「っく……がぁぁっっ!」

やがて手をついた兄者。
もう少しで、ドクオが押し切る。

(;'A`)「くそおおぉぉぉぉぉ……!」

だがドクオの消耗も限界だった。

その時、兄者の頭上に光る何かが現れた。



42 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:21:16.02 ID:wMLum2vV0

ゴオォォォォォォォォォォォォォン!!


(; _ゝ )「なっ……なんじゃ……こりゃ……」


どさりと崩れ落ちた兄者。

(;´・ω・`)

(;'A`)

川 ゚ -゚)

(;´∀`)

从;゚∀从

(´<_`;)

呆気にとられ、音を立てて転がるそれに視線が集う。
それは勢いを段々と弱め、やがて止まる。

兄者に止めを刺した物。

それは巨大な、タライだった。



44 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:23:07.07 ID:wMLum2vV0

( ゚∀゚)「おっしゃあああああぁぁぁ! ざまぁみやがれ!」

沈黙の中、突如勝利の雄叫びを上げたジョルジュ。

(;'A`)「おま……俺の見せ場……っぐ…」

川 ゚ -゚)「おっと」

疲労が限界に達し、倒れそうになったドクオを、クーが支えた。

( ゚∀゚)「勝ちゃいいんだよ!」

満足気に勝ち誇るジョルジュ。

(;´・ω・`)「ま、まぁそれはいいとして、なんでタライ?」

( ゚∀゚)「スウィートトラップっつって、ちゃんとした魔法だぜ?」

J・F『ヒーホー! タライとか、植木鉢とか、色々落すんだホー!』

( ゚∀゚)「それをドクオのグライバで威力はさらに向上! どーよ!?」

場は再び静まりかえる。




45 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:24:53.46 ID:wMLum2vV0

(;゚∀゚)「あ、あれ? なにその反応……?」

(´・ω・`)「プッ……あはははは!」

川 ゚ー゚)「ははっ 一本とられたな、ドクオ」

(;'A`)「へっ 緊張感のない奴だぜ……」

( ´∀`)「モナモナ お見事ですよ」

从 ゚∀从「勝ちゃいいってのは、こういうことだな」

モ*゚ー゚シ『あははー』

誰も予想だにしなかった幕切れに、皆が笑う。

しかし、それをよしとしない男が一人。

(´<_` #)『ペルソナ!』

緊張が解かれた場に、突如割り込む弟者。
狙いは、疲弊し切っていた、ドクオ。

(´<_` #)『ツインスラッシュ!!』

刃が、振り下ろされた。

─────………



48 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:26:43.63 ID:wMLum2vV0





そこには何もなかった。
いや、なかったはずだと言う方が正しいかもしれない。

ブーンとツンが『気がつく』と、それはそこに在ったのだ。

まず最初に、椅子が現れた。
手前に一つ、次にもう一つ。

最初は、ペルソナでその存在を感じていた。
やがてそれは視覚的、そして聴覚的にもその存在を現していく。

どこからともなく音が聞こえた。
それはピアノの音。
無論スピーカーなど部屋にはない。

また気がつくと、部屋の隅には一つのグランドピアノ。
そんな大きな物、部屋に入る前から気がつかないとおかしい。

が、最初の椅子がそうであったように、二人が『気がつくと』在ったのだ。

次に聞こえるのは、ピアノの旋律にのせた歌声。

その歌は心を、ペルソナを落ち着かせる。



51 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:29:55.13 ID:wMLum2vV0

それは、全ての人の魂の詩。

ここは、全ての魂(ペルソナ)が集う場所。


『ようこそ、ベルベットルームへ』

ベルベットルーム。

手前の二つの椅子に向かい合うように、また一つの椅子が現れ、
そこに座るのは声の主。一人の老人。

とんでもない猫背で椅子に腰掛ける老人は、この世のものとは思えない風貌をしていた。
魚のように見開いた、真円に近い目。太く、そして異常に長く突き出た鼻。
纏う喪服も、異質さを醸し出す。

人と言うよりは、悪魔や妖怪と言った方が合っているかもしれない。

しゃがれているが妙に耳に残る高い声を残し、ピアノの気がつけば、ピアノを弾く男が一人。

『……俺はナナシ 閉ざされし、心の扉を開くピアノ弾き…』

ピアノを弾き続けながら、語る男、ナナシ。
こちらは渋いナイスミドルと言った印象だが、やはり纏う物は喪服。
そしてもう一つの異質な点。ナナシの目には、藍色の目隠しが巻かれてあった。



53 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:32:22.06 ID:wMLum2vV0

『私はベラドンナ〜♪ 己という魔物に挑む、もののふ称える歌歌い〜♪』

伴奏の合間に、突如自己紹介をした、詩を紡ぐ女。
同じ様に真っ黒なドレスを身に纏う、オペラ歌手のような風貌と声だった。

『どうぞ、お掛け下さい』

老人はそう言って、掌を上にして、正面の椅子へ伸ばす。
ブーンとツンは一度顔を見合わせた後、静かに座った。

『ここは、人の心の様々なる形を呼び覚ます部屋……』

二人が座るなり、淡々と語りだす。

『我らが主、フィレモン様の命により、貴方がたをお待ちしておりました』

( ^ω^)「フィレモンの……」

ゆっくり、こくりと頷き、

『我々はフィレモン様の従者 我が名はイゴールと申します』

イゴール『我ら3人、貴方がたの手助けをするようにと、仰せつかっております
       以後、お見知り置きを…』
     
イゴールが頭を下げ、その後にブーンとツンも小さく頭を下げる。

イゴール『さて……まずは一つ、お二方のペルソナを拝見させて頂きましょう』


55 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:35:12.58 ID:wMLum2vV0

言って、イゴールが二人に掌を見せる様にかざす。
すると、二人の胸元が淡い光を放ち、その光の中から一枚のカードがくるくると回りながら現れた。

ξ;゚听)ξ「こ、これは…?」

イゴール『ペルソナの一つの形 彼等はその寓意をタロットカードとして表すのです』

寓意(ぐうい)とはその姿を抽象化し、具現化すること。
アレゴリーとも言う。

イゴール『内藤様、貴方のペルソナのアルカナは、SUN』

( ^ω^)「太陽……?」

イゴール『いかにも SUNが表す物は成功、誕生、祝福、約束された将来…
       輝かしく、雄々しいアルカナです』

( ^ω^)「約束された……将来……」

イゴール『……しかし、貴方の寓意は未だ傾いた形 SUNの逆位置は不調、落胆、衰退……
      貴方の心の迷いもまた、ペルソナに影響を及ぼしてしまうのです』
     
( ^ω^)「……」

イゴール『お悩みなさい 私はこれまで、貴方の様な多くのペルソナ使いを見てきました
      その誰もが、己について悩み、戦っておられました』
     
イゴールがそっと手を前に差し出すと、タロットが静かに宙を漂い、
そのままブーンの胸の中へと消えて行った。



57 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:37:17.46 ID:wMLum2vV0

イゴール『貴方もフィレモン様より見定められた御方 必ずやその答えを見つけるでしょう』

するとイゴールはツンに視線を移し、また続けた。

イゴール『ツン様、貴女のアルカナはLOVERS 
       合一、恋愛を意味する実に女性らしいペルソナです』
     
ξ゚听)ξ「……」

イゴール『他にも、試練の克服という物も意味しております
       貴女もこの先、必ず大きく成長していくことでしょう』
     
言い終えて、同じ様にツンの胸の中へと消えて行くタロット。
ブーンはイゴールの言葉を考え、沈黙していた。
ツンがあることに気付き、口を開く。

ξ゚听)ξ「そ、そういえば、なんで私達の名前を…?」

イゴール『ここは意識と無意識の狭間をたゆたう部屋……
      覚えておられませんかな? 貴方がたは一度、ご自分の名を名乗られているはず』
      
言われ、ツンははっとする。
そう。フィレモンと初めて会った時に確かに、名乗っていた。

イゴール『全ての人間の心は、普遍的無意識で繋がっている
      この部屋も、全ての人の心に通じているのです』



60 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:40:12.14 ID:wMLum2vV0

イゴール『さて……そろそろ時間のようです 運命の歯車はすでに回り出しています
      歯車と成り身を委ねるか、杭と成りその動きを止めるかは貴方がた次第……
      ゆめゆめ、忘れることのないように……』
     
その言葉が終わると、詩が、音が、段々と遠のいていく。
二人が気付くとイゴール達の姿は消え、ピアノが消え、椅子が消え……
そしてまた気付いた時、二人は壁の前に立っていた。

ξ;゚听)ξ「あ、あれ?」

最初に入った路地はない。
あるのはビルの、コンクリートの壁だけだった。

(;^ω^)「わけわからんお……」

ξ;゚听)ξ「うん……でも……」

夢や幻ではない。
二人の耳に、頭に残るイゴールの声がそれを証明していた。

( ^ω^)「とりあえず、車に戻ろうお」

ツンが頷き、二人は車へと戻った。
ギコはまだ戻っていない。

沈黙が、車内を包む



63 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:42:32.59 ID:wMLum2vV0

ブーンは考える。
自分の思いを、イゴールの言葉と混ぜ合わせて。

ブーンは今までこう考えていた。

『自分は何がしたいのだろう』

突如投げ込まれた歯車の間に、ブーンは丸裸で挟まれた。
ペルソナ、悪魔、様々な異質な存在達。
この歯車の中、自分がどうしたいのかと。

いくら考え、模索しても、その答えに触れることはできなかった。

しかしイゴールとの接触で、彼の言葉で、ブーンは考え方を変える。
答えばかり追い求めたからいけないのだ。
答えがあるのかすら、わからないのに。

辿り着いた、道。


── 今自分が、するべきこと ──


進もう。答えを見つける為に。
歯車の、一部と成って。

────────………



65 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:44:15.57 ID:wMLum2vV0





反応できたのは、一人だけだった。

モナーが咄嗟にドクオの前に出る。

( ´∀`)『ペルソナ!』

ビシャモンテンの腕でポリュデウケースの刃を受け止めた。
白い袴の袖に、うっすらと血が滲む。

(;'A`)「はっ……はっ……」

驚き、息が乱れるドクオ。

(´<_` )「ッチ……」

舌打ちし、弟者はそれ以上何もしなかった。
わかっていたのだ。これ以上何をしても無駄と言う事が。

( ´∀`)「……わきまえているようですね」

弟者はモナーを一瞥すると、兄の元へと歩み寄る。



67 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:46:01.44 ID:wMLum2vV0

(´<_` )「ああ、俺達の負けだ」

兄を見、背中で語りかける。

(´<_` )「だが勘違いするな 俺達は二人で一つ まだ本気を出しちゃいない」

(´・ω・`)「……出せなかったんでしょ」

(´<_` )「なんだと?」

(´・ω・`)「モナーさんの術中にはまってたのさ」

( ´∀`)「見たところ、貴方が補助し兄の方がアタッカーとなるのでしょう
      挑発を受け、分かれる事に応じてしまったこと そして……」
       
モナーはショボン達に少し視線を移した後に、また弟者を見る。

( ´∀`)「彼等を甘く見たのが、貴方達の敗因です」

(´<_` )「………」

( ゚∀゚)「んでもドクオ、えらいうまく決まったよなー」

(;'A`)「んぁ……ショボンのおかげだ……」



69 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:48:39.83 ID:wMLum2vV0
  _
( ゚∀゚)「ん? どういうことだ?」

(´・ω・`)「何度か攻撃した時に、気付いたんだ
      兄者って人は後ろに跳ぶ癖があるんじゃないかってね」
     
('A`)「そこを狙ってくれって言われたんだ」

(´・ω・`)「でも確実にそうとは言い切れない 僕は賭けに出たんだ」
      
( ゚∀゚)「なるほどねぇ……」

(´・ω・`)「少しヒヤヒヤしたけどね うまくいってくれた」

うっすらと、ショボンの頭から一筋の血が流れ落ちた。

川 ゚ -゚)「ん 怪我してるぞ」

(´・ω・`)「ああ、すまない」

川 ゚ -゚)『ディア』

淡い優しい光がショボンを照らす。

( ´∀`)「……と、言うわけですよ」



70 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:50:19.11 ID:wMLum2vV0

(´<_` )「ふん……負けは負けだ 好きにしろ」

弟者のその言葉を聞いて、モナーは皆の方を向き。

( ´∀`)「では、帰りましょうか」

( ゚∀゚)「へーい あー疲れたぜ……」

(´・ω・`)「今日はぐっすり眠れそうだね」

(;'A`)「歩いて帰れるかな……」

( ´∀`)「モナモナ 送って差し上げますよ」

('A`)「おお ありがとうございます」

弟者、そして兄者をほったらかして、車へと歩くモナー達。

(´<_` )「おい 止めは刺さないのか?」

( ´∀`)「なぜですか? 貴方はすでに戦意を失っています
       これ以上何をしろと?」
       
(´<_` )「……またお前達を狙うかもしれないんだぞ?」

( ´∀`)「その時は、またお相手致します」



72 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:52:05.32 ID:wMLum2vV0

(´・ω・`)「腕を磨いておくよ」

川 ゚ -゚)「返り討ちにしてくれるわ!」

(;'A`)「クーさんキャラが違いますよ?」

川 ゚ -゚)「一度言ってみたかったんだ」

どっと、笑いが溢れた。
笑いながら、モナー達は車に乗り込む。

そして二人を残し、走り去って行った。

(´<_` )「………」

尚も気を失って横たわる兄を見つめる弟者。

その横に、弟者も寝転がった。
星を仰ぎ、口元を吊り上げる。


(´<_` )「負けたな、兄者」


その言葉は海風に流され、消えて行った。


75 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:54:15.59 ID:wMLum2vV0

高いテンションは車内でも続いていた。
戦いの興奮をそのままに、皆が口を開く。

モ*゚ー゚シ『♪〜』

モショはクーの膝の上で大人しく座っていた。
モショの落ち着く姿を見て、ジョルジュが言う。

( ゚∀゚)「そいや、クーには妹がいたっけなぁ」

川 ゚ -゚)「ああ よく面倒を見ていたからな 子供は好きだし」

(´・ω・`)「クーは意外と面倒見がいいんだね」

川 ゚ -゚)「意外とは失礼な奴だな」

(´・ω・`)「ははっ ごめんごめん でも意外と言えば、ドクオも意外だったね」

('A`)「ん? 何が?」

( ゚∀゚)「俺も思った あの兄弟にタンカきってたじゃん」

川 ゚ -゚)「そういえば、ドクオはビビリ症だったな」

(;'A`)「ビビリ症って……」



76 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:56:18.34 ID:wMLum2vV0

( ゚∀゚)「覇洲高の奴等に因縁つけられた時、ブルってたよな」

(´・ω・`)「僕にも言える事だけど、やっぱりペルソナのせいなのかな?」

そこで運転しているモナーが会話に混ざる。

( ´∀`)「ペルソナはもう一人の自分です 荒々しい自分が出たのでしょう」

('A`)「そうかもなぁ…自分でも不思議だったとは思う」

( ´∀`)「ましてや、皆さんは目覚めたばかりです
       うまく感情のコントロールができない場合もあります 気をつけて下さい」
       
( ゚∀゚)「そっか……そうだよな」

( ´∀`)「見ていて皆さんは大丈夫だとは思いますが…余りに強力なペルソナ、
       つまり分不相応なペルソナをいきなり降魔してしまうと……
       ペルソナに逆に支配されてしまうケースもあります」
       
(´・ω・`)「それは…ペルソナに体を乗っ取られると?」

( ´∀`)「本質的には、違います 例えるなら、一つの感情しか見えなくなります」

从 ゚∀从「興味深いな と言うと?」

( ´∀`)「怒りなら、怒りだけが増幅してしまい、周りが見えなくなります」



78 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 21:58:20.49 ID:wMLum2vV0

( ゚∀゚)「暴れまわっちまうってことか……」

( ´∀`)「はい 逆に哀しみなら、深く深く心を閉ざしてしまったりするでしょう」

(´・ω・`)「なるほど……」

('A`)「……そうなった人は、どうなるんですか?」

( ´∀`)「とにかく、もうそこしか見えなくなります そしてペルソナは暴走します
      その感情の一点だけを糧に、力を奮います」
       
(´・ω・`)「怒りなら破壊の限りを尽くす……」

('A`)「哀しみなら現実逃避しまくるって感じか」

( ´∀`)「そうです 対処としては、暴れているなら気絶させればいいでしょう
      後者の場合は、主に説得でしょうね」
       
( ゚∀゚)「めんどくせえなぁ」

(´・ω・`)「でも覚えておくにこしたことはないはずさ」

( ´∀`)「それで……ハインさんですが」

从 ゚∀从「おう なんだ?」




79 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 22:00:27.58 ID:wMLum2vV0

( ´∀`)「これからどうするのですか?」

从 ゚∀从「勢いで車のっちまったんだけど、自宅とか危ねぇだろうなぁ……」

( ´∀`)「……うちの神社に来ますか?」

从 ゚∀从「実はその言葉を待ってたんだよ」

(;´∀`)「……やっぱりですか」

从 ゚∀从「ああ モショも行って問題ないか?」

( ´∀`)「暴れださないなら大丈夫だと思います」

从 ゚∀从「そうか…モショ、大丈夫か?」

モ*゚ー゚シ『?』

川 ゚ -゚)「モショ お利口さんにできるか?」

モ*゚ー゚シ『できるよー』

(*'A`)「モショちゃん……」

(;゚∀゚)「ドクオ……」




81 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 22:03:10.17 ID:wMLum2vV0

( ´∀`)「それなら、大丈夫ですね では皆さんを送った後に、帰りましょうか」

从 ゚∀从「よろしく頼む」

(´・ω・`)「今後だけど、どうしようか?」

川 ゚ -゚)「ひとまず明日、ブーンとツンも連れてハインから話を聞くのが妥当だろう」

( ´∀`)「皆さんがよろしければ、私もそれを考えていました」

从 ゚∀从「あたしも賛成だ 知ってることは全て提供したい」

( ´∀`)「……ブーン君ですが、来てくれるでしょうか?」

モナーは感じ取っていた。ブーンの雰囲気を。
何か否定しているような、そんな印象を感じていたのだ。

ショボン達は顔を見合せ、黙っていた。
実は同じことを感じていたのだ。

しかし一人だけ、違う者がいた。

('A`)「きますよ アイツは」

ドクオだった。



83 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 22:05:40.30 ID:wMLum2vV0

('A`)「アイツは絶対にきてくれます そういう奴です」

瞳に、言葉に、確信の色を乗せて言い切った。
それは一番古い付き合いだから言えるのかはわからない。
一つ言えるのは、完全な信頼を寄せていると言うこと。

('A`)「迷ってたみたいだけど、俺達が危険な事に首を突っ込んでる
   アイツがそれを見過ごすわけがない こう言うと、ちょっと卑怯ですけどね」
   
( ´∀`)「そう、ですか」

('A`)「ブーンほど、友達思いな奴はいませんから」

少し遠い目をして、言った。
それが何を意味するのか、誰も知らない。

( ゚∀゚)「ま……今日はお疲れさん、だな」

モ*゚ー゚シ『おつかれさまー』

(*'A`)「おつかれさまー!」

(´・ω・`)「ついさっきまで真面目だったのに…」

川 ゚ -゚)「仕方がない モショは可愛いからな」

(*'A`)「ああ! 持って帰りてぇ!」



84 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 22:07:23.00 ID:wMLum2vV0

再び笑いが溢れる車内。

談笑の中、モナーは静かに思う。
それはドクオの言葉の中に在ったもの。


『ブーンほど友達想いな奴はいませんから』


思い出すのは、過去のこと。
親友と呼べた、男のこと。

もちろんアサピーも、過去のことだがモララーも当時は親友と思っていた。
親友はと問われれば、誰もが最初に思う人が居るだろう。

モナーにも、最初に浮かんだ男がいた。

( ´∀`)(もう……二十年か……)

温厚なその顔に、少しだけ、哀しみの影がかかっていた。

一同は進む。

まるで、闇の中へとその身を投じるように───



86 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 22:10:01.06 ID:wMLum2vV0





「む……」

(´<_` )「気がついたか、兄者」

弟者が上体を起こし、兄者を見る。

( ´_ゝ`)「……負けたか……」

夜空を見上げながら、ぽつり呟いた。
弟者は少し笑いながら、

(´<_` )「ああ、負けたよ」

少しの、沈黙。

( ´_ゝ`)「……帰るか」

(´<_` )「報告は?」

( ´_ゝ`)「しない 俺達だけで、片付ける」

(´<_` )「そうか」



88 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/01(土) 22:12:05.76 ID:wMLum2vV0

(;´_ゝ`)「うおおお…なんというタンコブ……」

頭を押さえながら兄者が起き上がる。
弟者が先に立ち上がり、兄者へ手を伸ばした。

(´<_` )「つかまれ」

しっかりと、弟の手を掴む兄者。

( ´_ゝ`)「次は油断しないぞ」

(´<_` )「ああ、そうだな」

同じ笑顔で、同じ誓いを交わす。
二人に油断は、もうない。

( ´_ゝ`)「あ〜…転生少女イシュキックたんを見逃してしまったな…」

(´<_` )「ま、録画してあるからいいじゃないか」

( ´_ゝ`)「しかしやはり、リアタイで見ることに価値があるのだ」

(´<_` )「よくわからんが──流石だな、兄者」

弟者が兄者に肩を貸し、そんなことを話しながら歩く。
二人もまた、闇の中へと消えて行った。

                          
                                      続く。


TOPへ  戻る  次へ

inserted by FC2 system