2 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:08:28.35 ID:XfAHCR4v0
( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
第10話『嫉妬』
5 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:10:30.48
ID:XfAHCR4v0
('A`)「お? おはよう」
ドクオが教室に入って少しして、ブーンとツンも教室に現れた。
すぐ後ろに居たなら声をかけてくれればと、ドクオは不思議がって挨拶をする。
( ^ω^)「おはようございます」
ξ゚听)ξ「おはようございます」
(;'A`)「え? なに? なになに?」
二人の妙な挨拶に戸惑う。
そんなドクオの横を通り過ぎ、二人は自分達の席へ向かった。
(´・ω・`)「やぁ、おはよう」
川
゚
-゚)「おはよう」
( ^ω^)「おいすー」
ブーンの席にはすでに、ショボンとクーが待機していた。
朝のホームルームまでの時間、この五人がブーンの席に集まるのは、定例の事だ。
ξ゚听)ξ「おっはよー」
6 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:12:18.80
ID:XfAHCR4v0
少し遅れて、鞄を自分の席に置いてきたツンも挨拶と同時にやってきた。
そのまま、ブーンの机に座る様にもたれかかる。
短い制服のスカートからすらりとした白い太ももが伸びる。
健全な男子高校生であるならば、自ずとそちらに目がいく事は当然で。
( ^ω^)「…………」
ガン見である。
いつもなら鉄拳が飛ぶのだが……
ξ;゚听)ξて
ブーンの視線に気付いたツンは、さっとスカート裾を引っ張るだけに留まった。
少しの恥ずかしさを感じつつ、ツンはしぃの言葉を思い出す。
ξ*゚听)ξ(スイッチかぁ……でもこれって……ゆ、誘惑? やだ私ったら……)
逆に、ツンの方が意識してしまっているようだ。
当のブーンはというと。
( ^ω^)(女の子なのに机に座るのは行儀悪いお……)
見事に、すれ違っていた。
7 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:13:39.81
ID:XfAHCR4v0
そんな二人の思案には、誰も気付くはずもなく。
ドクオも来たところで、ショボンが切り出した。
(´・ω・`)「……途中、『居た』かい?」
出来る限り小さな声で、『居たか』、と言う質問。
何が、とは敢えて言わなかった。
('A`)「変な小さいのなら、二匹いた」
川
゚
-゚)「私は四匹と遭遇した 弱かったから問題はなかったが……」
ξ゚听)ξ「私は三匹かな」
( ^ω^)「僕は一匹だお」
皆の回答を聞いて、ショボンは一つ息を吐いた後。
(´・ω・`)「僕は四匹だ なんか、いよいよって感じだね」
何かが、起き始めている。
日を重ねるごとに、顕著にその徴候が現れ始めている。
( ^ω^)「ショボン、昨日何があったか聞かせてほしいお」
10 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:15:10.47
ID:XfAHCR4v0
(´・ω・`)「ん、ああ、わかった」
予想していなかったブーンの積極的な質問に少し戸惑いつつ、
ショボンは昨夜のことを話し始める。
玖都留(クトル)市の謎の施設。
アムドゥスキアス・システム。
ペルソナ使いとの戦い。
そして、ハインリッヒ高岡という協力者の事。
簡単に、説明した。
ξ;゚听)ξ「なんだか……大変だったのね……」
('A`)「正直、本気で死んでたかもしれなかったなぁ……」
川
゚
-゚)「まぁ、終わり良ければと言うだろう」
(´・ω・`)「そうなんだけどね、でもまだ何も、終わっていない」
( ^ω^)「……」
12 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:17:07.02
ID:XfAHCR4v0
(´・ω・`)「それで今日、学校が終わったらモナーさんの所で話し合いをするんだ。
……ブーンとツンは、大丈夫?」
( ^ω^)「行くお」
ξ゚听)ξ「行くわ」
ツンは確実にくるだろうと、ショボンは思っていた。
だがツンよりも早く、はっきりと行くと答えたブーンに、少し驚いたようだ。
('A`)(……ブーン……)
一人。
ドクオだけは、信じていた。
(´・ω・`)「わかった、じゃあお昼は……」
ショボンが続けようとした、その時。
突如背中に気配を感じた。
(;´・ω・`)「?」
驚き、振り返る。
皆も何かを感じ取っていたのか、ショボンが振り返った先へと視線が集中する。
14 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:18:59.36
ID:XfAHCR4v0
川д川
そこに居たのは、一人の女子生徒。
ショボンにギリギリ接触するかしないか、絶妙の間合いを取り佇んでいた。
ばさりと下ろした長い黒髪は腰近くまで達し、顔は鼻と口しか見えていない。
肌は透き通ったように白く、黒髪と対照的だ。
僅かに覗いた鼻筋はすっきりとしており、素顔は案外、美人なのかもしれない。
だが、残念なことに今のままでは不気味な印象しか与えられない。
川
゚
-゚)「貞子さんじゃないか いあいあー」
川д川「素直さん……いあいあー」
どうやらクーは、突如現れた女生徒、貞子の事を知っているようだ。
(;´・ω・`)「い、いあいあ? クー、友達かい?」
川
゚
-゚)「ああ、隣のクラスで、オカルト研究会部長の貞子さんだ いあいあは挨拶だな」
川д川「今後ともヨロシク……」
ξ;゚听)ξ「よ、よろしく……」
(;^ω^)(こえー……)
17 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:20:30.86 ID:XfAHCR4v0
川 ゚
-゚)「で、一体どうしたんだ?」
それは、この場に居る誰もが聞きたいことだった。
川д川「……感じるの……」
川゚д川 カッ!!
川゚д川「あなた達から、霊的な物を感じるの……!」
勢いよく顔を上げたせいで、瞳も露わになる。
21 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:21:42.82 ID:XfAHCR4v0
川 ゚
-゚)「そうかそうか、とりあえず落ち着いてくれ」
川д川「私としたことがつい……」
川 ゚
-゚)「で、それを感じたのがどうしたんだ?」
川д川「……数日前までは何も感じなかったのに……突然あなた達から感じるようになったの。
その事で、ちょっと話を聞きたくて」
川 ゚
-゚)「なるほど」
そしてクーは、様子を窺っていた(というか口を挟めなかった)皆に顔を向ける。
やはり、困惑している表情を浮かべていた。
一同がクーに送る視線に乗せられた言葉は。
『……任せた……』
クーは静かに、頷いた。
川
゚
-゚)「貞子さんは霊感が強いからな で、それがどうしたんだ?」
川д川「何か……切っ掛けがあったのなら教えてもらいたいわ……」
川
゚ -゚)「切っ掛けか……」
22 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:22:57.01
ID:XfAHCR4v0
川д川「そこらに居る霊じゃない……守護霊とも違う……もっと、とても力強いものを感じるの。
たまに街でそういう人がいるけど、あなた達もそういう人と同じ……」
(;'A`)(そこらにいる……霊……?)
川д川「何があったのか……よかったら聞かせてくれないかしら?」
川
゚
-゚)「ふむ 一応、秘密にしておいてもらえると助かる」
川д川「ええ、大丈夫よ 私は口が堅いから」
川゚д川 カッ!!
川゚д川「なんなら約束を破ったら呪い殺される呪術をかけてもらっても……」
川
゚ -゚)「ああ、生憎そんなものは知らないから大丈夫だ」
川д川「そう……」
川 ゚
-゚)「それで、切欠の話だけど」
川д川「ええ」
23 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:24:38.17 ID:XfAHCR4v0
川 ゚
-゚)「貞子さんも知ってるだろう? ペルソナ様遊びだよ」
川д川「ペルソナ様遊び……VIP高校七十七不思議の六十三番目に座する、あの……」
( ^ω^)(設立三年目なのに七十七もあるのかお……)
川
゚
-゚)「そう、それそれ それが切欠だ 別にこれと言って変わった感じはしないけどな」
さらりと、嘘をついた。
川д川「そう……自覚症状はないのね……ありがとう……調べてみる……わ…ブツブツ」
川
゚
-゚)「いやいや、研究会には顔を出せないですまない」
川д川「いいのよ……一人は好きだしね……」
オカルト研究会の部員は、貞子とクーの二名だけだった。
川д川「……時間もないし、教室に戻るわ……それじゃあ……あいあいー」
川
゚ -゚)「あいあいー」
ちなみに『あいあい』とは、別れの挨拶だ。
25 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:26:15.87
ID:XfAHCR4v0
(;'A`)「なんかすげえ濃い人だな……」
貞子が完全に教室から姿を消したのを確認した後に、ドクオが言った。
川
゚
-゚)「悪い子じゃないぞ あれで結構話好きだし」
ξ;゚听)ξ「ていうかクーが入ってた部活ってオカルト研究会だったのね……」
川
゚
-゚)「ああ 一年の頃空き教室から謎の呪文が聞こえてきてな。
入ったら貞子さんが居た そこで意気投合したんだ」
(;^ω^)「今の話で意気投合できたクーがすごいお」
ξ;゚听)ξ「同感……」
(;'A`)「オカルト趣味ってのは知ってたけど、そんな部活に入ってたとはな……」
(´・ω・`)「驚いたね いあいあってのはクトゥルーかい?」
川
゚
-゚)「ああ、ハスターの件だな」
(´・ω・`)「なるほど」
数瞬、会話が途切れた後に。
( ^ω^)「それで、ショボン」
27 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:29:32.72
ID:XfAHCR4v0
(´・ω・`)「うん?」
( ^ω^)「昼、授業が終わったら、どうすればいいんだお?」
ブーンの言葉に、ショボンははっとした。
貞子が来る前に、言いかけていたことの続きだ。
それを自ら聞いてきたブーンからは、やはり昨日とは違う物を感じる。
(´・ω・`)「うん アザピー先生に連れてきてもらえるようにしてもらってる」
( ^ω^)「わかったお 皆で保険室にいけばいいんだおね?」
(´・ω・`)「ああ、そうだね」
ξ゚听)ξ「わかったわ」
('A`)「んじゃ、そろそろ先生もくるだろうし、席に戻るか」
川
゚
-゚)「そうだな」
(´・ω・`)「うん じゃあまた、休憩時間に」
そうして、ショボン達はブーンを残し、自分達の席へと戻って行った。
ブーンは顔を伏せて、すでに居眠りを始めそうな勢いだ。
最後に振り向いたツンがそれを見て、やれやれといった様子で、苦笑した。
29 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:31:01.54
ID:XfAHCR4v0
そしてツンが正面を向き直した時。
ζ(゚、゚*ζ「おはよ」
一瞬、鏡を見たような錯覚に陥った。
だがすぐにそれは違うと、ツンは気付いた。
ξ゚听)ξ「おはよ」
少し間を空けて、挨拶を返す。
自分とそっくりな女子生徒、デレに。
二人は少し、学年で有名だった。
双子ではないのに、双子のようにそっくりな二人。
おまけに美少女ともなれば、自ずと話題になるだろう。
入学当初は、お互いを珍しがってよく話していたようだが、
今はそれぞれの友達のグループに属し、話すことは少なくなっていた。
そんなデレが、珍しく挨拶をしてきた。
ツンを真正面に見据えて、だ。
ζ(゚、゚*ζ「ちょっといい?」
32 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:32:51.01
ID:XfAHCR4v0
珍しく話し掛けてきたのには、やはり何か用事があってのことらしい。
ξ゚听)ξ「うん? そろそろ先生来ちゃうんじゃ……」
ζ(゚、゚*ζ「いいから ちょっと付き合ってよ」
そう言うとデレは早々に身を翻し、教室から出て行った。
ツンは半ば呆れ気味で、デレの後に続く。
ξ゚听)ξ(何かしら……ペルソナがあるし、変なことでも大丈夫、よね……?)
少しの不安を抱えながら。
何も語らない背中を見つめながら、ツンはデレの後ろを歩く。
自分の背中を見るとこんな感じなのだろうか、と思っていた。
ツンはツインテールを縦巻きに。
デレはツインテールを緩いウェーブに。
違いと言ったら、そんな程度だ。
若干、デレの方が化粧に気合いが入っている気もする。
付き合う友達、環境によって、そういう部分は変わるのであろう。
ξ゚听)ξ(てか……どこまでいくのかしら……)
35 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:34:54.02
ID:XfAHCR4v0
階段を一つ上り、四階へ。
そのフロアは、科学室や音楽室と言った特別教室のあるフロアだ。
誰もいない廊下を二人は歩き、やがてデレがその歩みを止めた。
ζ(゚、゚*ζ「ここ」
短く言って、デレが教室に入った。
そこは、使われていない空き教室だ。
ξ゚听)ξ(…………)
ツンはまた少し戸惑ったが、中に入った。
教室内は、天気のいい朝だと言うのに薄暗かった。
隙間なく閉められた、暗幕のせいだ。
教室内には机や椅子すらない、空っぽの空間だ。
ξ゚听)ξ「……デレ? どうしたの?」
少し気味が悪くなったツンは、早く戻ろうと用件を言うように急かす。
デレは教室の中央で、ツンに背を向けたままに話しだした。
ζ(、*ζ「……岡田君に告白されたのって、本当?」
ξ;゚听)ξ(あ……そういうことね……)
37 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:36:54.54
ID:XfAHCR4v0
デレの直球な質問に、ツンは動じることはなかった。
貞子の事があったばかり。もしかしたら、悪魔についてかと思っていたからだ。
そちらに比べれば、可愛い質問であった。
ξ゚听)ξ「ほんとだけど……」
ζ(、*ζ「ふーん……じゃあ、断ったのもほんとなんだ?」
ξ゚听)ξ「そうよ」
そして訪れる、沈黙。
岡田とは、陸上部に所属する短距離走で有名な生徒の事だ。
大会でも常に表彰台に立ち、その容姿も相まって、女子生徒の人気を集めている。
実はツンは、先日その岡田に告白され、そしてばっさりと断っていた。
理由はもちろん、ブーンのことが最も大きかったのだが、
岡田はクーにもアプローチしていた時期があったことを知っていたのも、理由の一つ。
女癖が悪いと言うのも、一つの噂だったが、実の所ははっきりとしていない。
ζ(、*ζ「じゃあ……」
静寂の中、突如また口を開く、デレ。
38 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:38:04.74
ID:XfAHCR4v0
ζ(、*ζ「私が岡田君を好きだってことは、知ってた?」
ξ;゚听)ξ「え……知らないわよ……」
デレと大して話さなくなってから、一年以上経つ。
そんな話など、知っているわけがなかった。
ζ(、*ζ「ふぅん……」
聞いておいて、まったく興味がないといったような返事をする。
ツンはそれに少し、頭にきたようだ。
ξ゚听)ξ「……話はそれだけ? 私、教室に戻るわよ?」
ζ(、*ζ「…………」
黙殺。
デレはツンに背を向けたまま、佇んでいた。
ξ゚听)ξ「……じゃあ、ね」
一言残し、ツンは教室を後にした。
デレは変わらず、動かなかった。
43 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:40:19.23
ID:XfAHCR4v0
やがて、振り向く。
ζ(゚ー゚*ζ「私はね、ふられたの 岡田君に」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしてかなぁ……? こんなに好きなのに……」
ζ(゚ー゚*ζ「なんで……ツンなの……?」
ζ(゚ー゚*ζ「私の方が、ちゃんとお化粧もして、綺麗なのに」
ζ(゚ー゚*ζ「…………同じ……顔なのに……どうして私はだめなの?」
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ……どうして……?」
ζ(、*ζ「ねぇ……誰か……教えてよ……」
44 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2008/11/22(土) 21:40:57.94
ID:XfAHCR4v0
─────────ネェ……オシエテヨ…………
ペルソナサマ─────────…………
46 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:42:10.71
ID:XfAHCR4v0
───────ドクン。
ξ゚听)ξ(……?)
一瞬、心がぶれた。
立ち止まり、周囲を見渡す。
本当に、ほんの一瞬だけ、ツンは共振を感じた気がしていた。
長く続く廊下には、誰の姿もない。
デレが残っている、空き教室へ視線を送ろうとした時。
ξ;゚听)ξ(やば……予鈴だわ……)
朝のホームルームを告げる鐘の音に、ツンの意識は現実に戻された。
駆け足で階段を下り、教室へと戻る。
その時にはもう、ツンは共振の事など綺麗に忘れ去っていた。
日常生活に戻った女生徒の足音を反響させた後、フロアは再び静寂を取り戻す。
しかし、空き教室からは、異様な気配が漂っていた。
47 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:44:59.42
ID:XfAHCR4v0
「悔しいですか、哀れな子羊よ」
ζ(゚、゚;ζ「!? 誰!?」
声など、するはずがない。
さっきまでは、あの忌々しい女がいた。
今はいない、私だけだ。
だけど、はっきりと、聞こえた。
聴き覚えのある、声が。
「案ずるな 私は君を救いに来たのです」
この声、間違いない。
でも、いつのまにここに……
ζ(゚、゚*ζ「…………」
声のする方に、体を向けた。
やはり、居た。
私の、知っている人が。
52 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:48:27.99 ID:XfAHCR4v0
/ ゚、。
/
担任、鈴木ダイオード。
しかしなぜ、先生がここに。
/ ゚、。
/「悔しいですか?」
悔しい?何が?
/ ゚、。
/「憎いですか?」
憎いって、誰が。
/ ゚、。
/「……殺したい、ですか」
殺…………コロ、シタイ?
/ ゚、。
/「貴女の鏡の様な存在、ツンを」
ツ……ン…………
53 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:50:26.88 ID:XfAHCR4v0
/ ゚、。
/「貴女の愛しい人の心を虜にした、ツンを」
…………。
/ ゚、。
/「貴女より、頭のいいツンを」
…………。
/ ゚、。
/「同じ姿なのに、貴女より愛されている、ツンを」
…………クヤシイ……
……ニクイ……
コロ………
ζ(、*ζ「殺したい あの女を、今すぐにでも」
55 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:51:53.55 ID:XfAHCR4v0
/ ゚、。
/「…………」
一瞬、無表情なダイオードの顔が笑みを浮かべた気がした。
男だが、中性的な顔をしている。所謂美形だ。
何を笑うのか。お前も殺してやろうか。
/
゚、。
/「これを」
ダイオードが手を差し伸べた。
その手には、私の手の平でもすっぽり納まりそうな、黒い小さな箱のような物。
/
゚、。 /「これが貴女に力を与えてくれます」
こんな、こんなちっぽけな物が?
/ ゚、。
/「黒き、トラペゾヘドロンと言う物です」
トラ……ぺ……?
何を言っているんだろうか、この男は。
あぁ、イライラする。
/
゚、。 /「さぁ……」
56 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:53:57.23
ID:XfAHCR4v0
ダイオードが私の目の前まで手を伸ばしてきた。
近くで見ても、ただの箱に見える。
暗くてよく見えないせいかもしれない。
……暗い?
おかしい。さっきまではこんなに暗くはなかった。
暗幕を閉めていると言っても、外は快晴で、薄暗い程度だったはずだ。
なのに、なぜ。
暗い。
いや。
……黒い。
まるで、この箱の色のように。
黒だけのはずなのに、壁が、床が、天井がうねっているように見える。
うねって、蠢いて、生きてる、ように…………
手を伸ばし、その箱を、掴んだ。
またダイオードが、笑った気がした。
それを最後に、私の意識は、そこで途切れた。
58 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:55:36.37
ID:XfAHCR4v0
※
「遅いぞ、ツンくん」
ξ;゚听)ξ「す、すみません」
ツンは急いで戻ったのだが、出席確認には間に合わなかったようだ。
副担任から軽く叱責を受けた後、席に着く。
ξ゚听)ξ(……鈴木先生はいないんだ……)
座ってから、そんな事を思った。
規則に厳しい鈴木の姿が見えないのは、珍しい事だったからだ。
ツンはちらりと、ブーンに視線を送る。
すでに豪快に机に突っ伏し、寝ていた。
ξ゚ー゚)ξ(やれやれ……)
それは、最近のかけ離れた出来事からの、少しばかりの帰還。
退屈な授業も、久しぶりに真剣に受けることができそうだと、ツンは思った。
正面を向き、ありふれた日常へと、身を投じた。
61 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 21:57:47.42
ID:XfAHCR4v0
※
从ぅ-∀从「おはよーす……」
ミセ*゚ー゚)リ「おはようございます」
モ*゚ー゚シ『おはよー』
( ´∀`)「おはようございます」
重い瞼を擦りながら、ハインがモナーに挨拶をする。
ここは、津阿都(ツアト)神社本殿から少し離れた所にある道場。
モナーはここで寝泊まりをしている。
急なこともあって、ハインとジョルジュは道場のすぐ近くにある個室で寝ていた。
( ´∀`)「起こしてしまいましたか?」
从
゚∀从「うんにゃ、大丈夫だ 久々に畳の上で寝れて、気持ちよかった」
( ´∀`)「そうですか それはよかったです」
63 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:00:27.10 ID:XfAHCR4v0
从
゚∀从「んで……」
ハインはモナーの足元に目を移す。
そこには。
( ∀
)
仰向けに倒れている、ジョルジュがいた。
从
゚∀从「こりゃまた随分としぼられてるねえ」
( ´∀`)「本人の希望ですから 一切の手加減は無しです」
どうやら、相当絞られたようだ。
66 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:02:13.57 ID:XfAHCR4v0
从
゚∀从「てか、学校は?」
( ´∀`)「休むそうです 私は反対したのですが、半日だし授業はないと」
从
゚∀从「ふぅん……」
モ*゚ー゚シ『じょるじゅねー、こてんぱんにされてたの! いたそうだった!』
从
゚∀从「そうかそうか、それは見たかったなぁ」
ふと、ハインがあることに気付く。
从
゚∀从「あれ? J・Fは?」
そう。J・Fの姿がなかったのだ。
( ´∀`)「早朝、散歩してくると言って出ていったきりです」
从
゚∀从「ふぅん……」
モナーの返答に、先と同じ様な返事をした。
何を思ったのかは、深く読み取れない。
( ∀
)「…………ハッ」
68 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:03:51.53 ID:XfAHCR4v0
勢いよく、ジョルジュが上体を起こす。
从
゚∀从「おー、おはよう」
モ*゚ー゚シ『おはよー!』
(;゚∀゚)「お、おはよって……いてててててて…………」
腰を摩りながら、苦痛に顔を歪ませた。
( ´∀`)「受け身がとれていない証拠です」
そんなジョルジュを心配せずに、厳しい指摘を飛ばす。
(;゚∀゚)「あ、はい……」
( ´∀`)「と言っても、よくついてこれてますね」
( ゚∀゚)「ま、まだまだいけますよ!」
言いながら、立ち上がる。
が、腰が痛いのか、気持ち前屈みになっていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ふふっ 体が壊れては元も子もないですから、朝食にしましょう」
72 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:05:50.60
ID:XfAHCR4v0
_
(*゚∀゚)「は、はい!」
モナーにした返事よりも、元気が良かった。
実はミセリも、この道場で生活をしていた。
モナーとは血縁ではないようだが、はたして。
なんにせよ、ジョルジュにとっては願ったり叶ったりである。
从
゚∀从「調子いいなーコイツ」
( ´∀`)「若いですねぇ……」
(;゚∀゚)「ぐ……」
( ´∀`)「そういうことですし、朝食にしましょうか」
从
゚∀从「お、待ってたのか? 悪い」
( ´∀`)「いいんですよ」
表情は、そのままで。
( ´∀`)「色々と、お話も聞きたいですから」
本題に、触れた。
75 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:07:56.89
ID:XfAHCR4v0
─────………
ミセ*゚ー゚)リ「どうぞ」
八畳ほどの座敷へ移動した後に、皆の前にミセリが作った食事が並べられた。
モナーとミセリの前には、精進料理が。
ジョルジュとハインの前には、精進料理に鮭の塩焼きが足されていた。
ミセ*゚ー゚)リ「お二人には、味気ないと思いまして」
少しばかりの、配慮だった。
( ゚∀゚)「いやいや! ありがたくいただきます!」
高い音が出るほど強く両の手を合わせ、掛け声と共にお辞儀をする。
( ゚∀゚)「いただきますッ!」
豪快に料理を口に運ぶジョルジュを見て、皆も食事をし始めた。
少しして、
从
゚∀从「んで、聞きたい事は?」
77 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:10:49.18
ID:XfAHCR4v0
鮭の身をほぐしながら、ハインが言った。
( ´∀`)「そうですね……今後の動向については皆さんがきてからとして……」
ほうれん草のおひたしを口に運び、ゆっくり咀嚼した後、飲み込む。
( ´∀`)「お若い貴女が何故、副所長という重要な役割に就いたのかを」
从
゚∀从「ふぅん……わかったよ」
少し、気を悪くした様な返事。
モナーの質問で、まだどこか信用し切れていない物を感じたのだろう。
構わずに、続ける。
从
゚∀从「あたしがあそこに行く前は、ボトムアップ方式の研究をしてた。
VIP傘下の研究所でな」
( ゚∀゚)「ボトムズ? 装甲騎兵か!」
从
゚∀从「お前いくつだよ 所謂、ナノテクってやつだ あたしの得意分野な。
んで、優秀な研究結果を残していったあたしに、モララーは目を付けたってわけ」
( ´∀`)「なるほど……」
78 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:12:29.50
ID:XfAHCR4v0
実際、ハインの科学、技術力には目を見張るものがある。
悪魔が見えるようになるコンタクトレンズや、モショの帽子がそれだ。
いまいち、モナーは納得していない様子だが、次の質問へと移った。
( ´∀`)「では次に、各区にある研究所と言う物は、場所は知っていますか?」
少しの間を置き。
从
゚∀从「……ああ、知ってるぜ」
( ´∀`)「そうですか 教えて頂けませんか?」
从
゚∀从「ん……」
すると、ハインは空いた皿にご飯粒を並べた。
中央に一粒、その上下、そして左右に一粒。
从
゚∀从「真中が、VIPだ その下が、昨日の玖都留(クトル)、これはわかるな?」
米粒を箸で指しながら言う。
ミセ*゚ー゚)リ(行儀悪い……)
81 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2008/11/22(土) 22:14:30.28 ID:XfAHCR4v0
从
゚∀从「んで、上が紅都亜(クトア)、左が覇洲(ハス)、右が津阿都(ツアト)だ
紅都亜は、施設自体は山の中にある 入口は紅都亜神社だ」
(;´∀`)「あんなところですか……」
紅都亜神社は、紅都亜山の頂上近くにあり、山道もまったく整備されていない為、
登山家すらも訪れない場所だ。
从
゚∀从「次に、覇洲 ここはあれだ 最近できた、アバドンの地下だ」
( ゚∀゚)「アバドンって……ゲーセンとかプールとか映画館とかある、あそこか?」
从
゚∀从「そうだ 超大規模アミューズメントパーク、アバドン」
( ´∀`)「……しかしあれは、構想自体が、十年程前からあったような……」
从
゚∀从「ああ、急遽地下に作ったらしい 出来る限り、何かで隠したかったんだと思う」
( ´∀`)「そうですか……では、津阿都は?」
从;゚∀从「あー……」
そして、ハインが言葉に詰まる。
( ´∀`)「? どうしたのです?」
83 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:16:31.30
ID:XfAHCR4v0
モナーが首を傾げ、尋ねる。
が、ハインは視線を逸らし、言い淀んでいる。
やがてハインは、チラリとジョルジュを見た。
( ゚∀゚)「んあ? なんだ?」
从
゚∀从「……まぁ、言わなきゃ始まらねぇしな……」
( ´∀`)「お願いします」
モ*゚ー゚シ『きになるー』
話の内容を理解しているのかはわからないが、
食事を終えたミセリの膝の上に座っているモショも急かす。
( ゚∀゚)「お、言っちまえ どうせ片っ端から潰すんだから」
ジョルジュの言葉に、ハインは少し笑った後に、口を開いた。
从
゚∀从「津阿都の研究所がある場所は───………
85 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:18:24.83
ID:XfAHCR4v0
※
まず最初に起こったのは、共振。
いや、共振よりもさらに大きな、揺れ。
ξ;゚听)ξ(な、何……!?)
(;´・ω・`)(これは……?)
体の奥が、熱い。
それは病院で最初に感じた、あれに似ていた。
即ち、ペルソナからの、警告。
次に、まるで学校全体が跳び上がった様な、足元からからの衝撃。
机が、椅子が、掃除用具を仕舞うロッカーすらも、一瞬浮き上がった後に、盛大な音を立てて転がる。
人が立っていることすらままならない、激震。
90 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:20:32.82
ID:XfAHCR4v0
物が倒れ、ガラスが割れる音。
そこに、生徒と教員達の悲鳴が入り混じる。
(;゚ω゚)「な、なんだお!?」
「と、とにかく、頭を守りなさい!」
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
副担任の声も、混乱しきった生徒達の悲鳴に掻き消されてしまう。
揺れは未だ、治まらない。
恐怖は未だ、膨らみ続ける。
突如VIP高校を襲った、大地震。
しかし、空き教室で静かに佇む、一人の女生徒。
彼女の周囲だけが、揺れていない。
口元を吊り上げながら、掲げた右手には、一つの黒い箱。
91 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2008/11/22(土) 22:22:13.89
ID:XfAHCR4v0
「へぇ……こうやって使うのね……」
「アハハ! 馬鹿みたいな悲鳴が聞こえる! アハハハハハ!」
「黒きトラペゾヘドロン、もっと、もっともっと、恐怖を食べさせてあげる」
「メインディッシュは、ちゃんと用意してあるから」
「アハハハハ……! ……待ってなさいよ 下衆女」
ζ(、*ζ「私が殺してあげるから───………
93 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2008/11/22(土) 22:23:02.06 ID:XfAHCR4v0
※
从
゚∀从「あるだろ? 最近、つい三年前に造られた、建物が」
最初に気がついたのは、ジョルジュだった。
(;゚∀゚)「ま、まさか……」
从
-∀从「……あぁ……津阿都の研究所がある場所は……」
「VIP高校だ」
続く。
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