( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

──第10話 『嫉妬』


 
 
2 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:08:28.35 ID:XfAHCR4v0


 
 


( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

 
 


第10話『嫉妬』
 
 
 


 
5 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:10:30.48 ID:XfAHCR4v0

('A`)「お? おはよう」

 ドクオが教室に入って少しして、ブーンとツンも教室に現れた。
 すぐ後ろに居たなら声をかけてくれればと、ドクオは不思議がって挨拶をする。
 
( ^ω^)「おはようございます」

ξ゚听)ξ「おはようございます」

(;'A`)「え? なに? なになに?」

 二人の妙な挨拶に戸惑う。
 そんなドクオの横を通り過ぎ、二人は自分達の席へ向かった。
 
(´・ω・`)「やぁ、おはよう」

川 ゚ -゚)「おはよう」

( ^ω^)「おいすー」

 ブーンの席にはすでに、ショボンとクーが待機していた。
 朝のホームルームまでの時間、この五人がブーンの席に集まるのは、定例の事だ。
 
ξ゚听)ξ「おっはよー」
 
 


6 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:12:18.80 ID:XfAHCR4v0

 少し遅れて、鞄を自分の席に置いてきたツンも挨拶と同時にやってきた。
 そのまま、ブーンの机に座る様にもたれかかる。
 
 短い制服のスカートからすらりとした白い太ももが伸びる。
 健全な男子高校生であるならば、自ずとそちらに目がいく事は当然で。
 
( ^ω^)「…………」

 ガン見である。
 いつもなら鉄拳が飛ぶのだが……
 
ξ;゚听)ξて

 ブーンの視線に気付いたツンは、さっとスカート裾を引っ張るだけに留まった。
 少しの恥ずかしさを感じつつ、ツンはしぃの言葉を思い出す。
 
ξ*゚听)ξ(スイッチかぁ……でもこれって……ゆ、誘惑? やだ私ったら……)

 逆に、ツンの方が意識してしまっているようだ。
 
 当のブーンはというと。
 
( ^ω^)(女の子なのに机に座るのは行儀悪いお……)

 見事に、すれ違っていた。
 
 


7 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:13:39.81 ID:XfAHCR4v0

 そんな二人の思案には、誰も気付くはずもなく。
 ドクオも来たところで、ショボンが切り出した。
 
(´・ω・`)「……途中、『居た』かい?」

 出来る限り小さな声で、『居たか』、と言う質問。
 何が、とは敢えて言わなかった。
 
('A`)「変な小さいのなら、二匹いた」

川 ゚ -゚)「私は四匹と遭遇した 弱かったから問題はなかったが……」

ξ゚听)ξ「私は三匹かな」

( ^ω^)「僕は一匹だお」

 皆の回答を聞いて、ショボンは一つ息を吐いた後。
 
(´・ω・`)「僕は四匹だ なんか、いよいよって感じだね」

 何かが、起き始めている。
 日を重ねるごとに、顕著にその徴候が現れ始めている。
 
( ^ω^)「ショボン、昨日何があったか聞かせてほしいお」
 
 


10 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:15:10.47 ID:XfAHCR4v0

(´・ω・`)「ん、ああ、わかった」

 予想していなかったブーンの積極的な質問に少し戸惑いつつ、
 ショボンは昨夜のことを話し始める。
 
 玖都留(クトル)市の謎の施設。
 
 アムドゥスキアス・システム。
 
 ペルソナ使いとの戦い。
 
 そして、ハインリッヒ高岡という協力者の事。
 
 簡単に、説明した。
 
ξ;゚听)ξ「なんだか……大変だったのね……」

('A`)「正直、本気で死んでたかもしれなかったなぁ……」

川 ゚ -゚)「まぁ、終わり良ければと言うだろう」

(´・ω・`)「そうなんだけどね、でもまだ何も、終わっていない」

( ^ω^)「……」
 
 

12 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:17:07.02 ID:XfAHCR4v0

(´・ω・`)「それで今日、学校が終わったらモナーさんの所で話し合いをするんだ。
     ……ブーンとツンは、大丈夫?」
     
( ^ω^)「行くお」

ξ゚听)ξ「行くわ」

 ツンは確実にくるだろうと、ショボンは思っていた。
 だがツンよりも早く、はっきりと行くと答えたブーンに、少し驚いたようだ。
 
('A`)(……ブーン……)

 一人。
 ドクオだけは、信じていた。
 
(´・ω・`)「わかった、じゃあお昼は……」

 ショボンが続けようとした、その時。
 突如背中に気配を感じた。
 
(;´・ω・`)「?」

 驚き、振り返る。
 皆も何かを感じ取っていたのか、ショボンが振り返った先へと視線が集中する。
 
 


14 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:18:59.36 ID:XfAHCR4v0

川д川

 そこに居たのは、一人の女子生徒。
 ショボンにギリギリ接触するかしないか、絶妙の間合いを取り佇んでいた。
 
 ばさりと下ろした長い黒髪は腰近くまで達し、顔は鼻と口しか見えていない。
 肌は透き通ったように白く、黒髪と対照的だ。
 僅かに覗いた鼻筋はすっきりとしており、素顔は案外、美人なのかもしれない。
 
 だが、残念なことに今のままでは不気味な印象しか与えられない。
 
川 ゚ -゚)「貞子さんじゃないか いあいあー」

川д川「素直さん……いあいあー」

 どうやらクーは、突如現れた女生徒、貞子の事を知っているようだ。
 
(;´・ω・`)「い、いあいあ? クー、友達かい?」

川 ゚ -゚)「ああ、隣のクラスで、オカルト研究会部長の貞子さんだ いあいあは挨拶だな」

川д川「今後ともヨロシク……」

ξ;゚听)ξ「よ、よろしく……」

(;^ω^)(こえー……)
 
 

17 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:20:30.86 ID:XfAHCR4v0

川 ゚ -゚)「で、一体どうしたんだ?」

 それは、この場に居る誰もが聞きたいことだった。
 
川д川「……感じるの……」









川゚д川 カッ!!








川゚д川「あなた達から、霊的な物を感じるの……!」

 勢いよく顔を上げたせいで、瞳も露わになる。
 
 


21 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:21:42.82 ID:XfAHCR4v0

川 ゚ -゚)「そうかそうか、とりあえず落ち着いてくれ」

川д川「私としたことがつい……」

川 ゚ -゚)「で、それを感じたのがどうしたんだ?」

川д川「……数日前までは何も感じなかったのに……突然あなた達から感じるようになったの。
     その事で、ちょっと話を聞きたくて」
    
川 ゚ -゚)「なるほど」

 そしてクーは、様子を窺っていた(というか口を挟めなかった)皆に顔を向ける。
 やはり、困惑している表情を浮かべていた。
 
 一同がクーに送る視線に乗せられた言葉は。
 
 
 『……任せた……』
 
 
 クーは静かに、頷いた。
 
川 ゚ -゚)「貞子さんは霊感が強いからな で、それがどうしたんだ?」

川д川「何か……切っ掛けがあったのなら教えてもらいたいわ……」

川 ゚ -゚)「切っ掛けか……」
 
 


22 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:22:57.01 ID:XfAHCR4v0

川д川「そこらに居る霊じゃない……守護霊とも違う……もっと、とても力強いものを感じるの。
      たまに街でそういう人がいるけど、あなた達もそういう人と同じ……」
    
(;'A`)(そこらにいる……霊……?)
 
川д川「何があったのか……よかったら聞かせてくれないかしら?」

川 ゚ -゚)「ふむ 一応、秘密にしておいてもらえると助かる」

川д川「ええ、大丈夫よ 私は口が堅いから」


川゚д川 カッ!!


川゚д川「なんなら約束を破ったら呪い殺される呪術をかけてもらっても……」

川 ゚ -゚)「ああ、生憎そんなものは知らないから大丈夫だ」

川д川「そう……」

川 ゚ -゚)「それで、切欠の話だけど」

川д川「ええ」
 
 

23 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:24:38.17 ID:XfAHCR4v0

川 ゚ -゚)「貞子さんも知ってるだろう? ペルソナ様遊びだよ」

川д川「ペルソナ様遊び……VIP高校七十七不思議の六十三番目に座する、あの……」

( ^ω^)(設立三年目なのに七十七もあるのかお……)

川 ゚ -゚)「そう、それそれ それが切欠だ 別にこれと言って変わった感じはしないけどな」

 さらりと、嘘をついた。
 
川д川「そう……自覚症状はないのね……ありがとう……調べてみる……わ…ブツブツ」

川 ゚ -゚)「いやいや、研究会には顔を出せないですまない」

川д川「いいのよ……一人は好きだしね……」

 オカルト研究会の部員は、貞子とクーの二名だけだった。
 
川д川「……時間もないし、教室に戻るわ……それじゃあ……あいあいー」

川 ゚ -゚)「あいあいー」

 ちなみに『あいあい』とは、別れの挨拶だ。
 
 


25 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:26:15.87 ID:XfAHCR4v0

(;'A`)「なんかすげえ濃い人だな……」

 貞子が完全に教室から姿を消したのを確認した後に、ドクオが言った。
 
川 ゚ -゚)「悪い子じゃないぞ あれで結構話好きだし」

ξ;゚听)ξ「ていうかクーが入ってた部活ってオカルト研究会だったのね……」

川 ゚ -゚)「ああ 一年の頃空き教室から謎の呪文が聞こえてきてな。
     入ったら貞子さんが居た そこで意気投合したんだ」
     
(;^ω^)「今の話で意気投合できたクーがすごいお」

ξ;゚听)ξ「同感……」

(;'A`)「オカルト趣味ってのは知ってたけど、そんな部活に入ってたとはな……」

(´・ω・`)「驚いたね いあいあってのはクトゥルーかい?」

川 ゚ -゚)「ああ、ハスターの件だな」

(´・ω・`)「なるほど」

 数瞬、会話が途切れた後に。
 
( ^ω^)「それで、ショボン」
 
 


27 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:29:32.72 ID:XfAHCR4v0

(´・ω・`)「うん?」

( ^ω^)「昼、授業が終わったら、どうすればいいんだお?」

 ブーンの言葉に、ショボンははっとした。
 貞子が来る前に、言いかけていたことの続きだ。
 それを自ら聞いてきたブーンからは、やはり昨日とは違う物を感じる。
 
(´・ω・`)「うん アザピー先生に連れてきてもらえるようにしてもらってる」

( ^ω^)「わかったお 皆で保険室にいけばいいんだおね?」

(´・ω・`)「ああ、そうだね」

ξ゚听)ξ「わかったわ」

('A`)「んじゃ、そろそろ先生もくるだろうし、席に戻るか」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(´・ω・`)「うん じゃあまた、休憩時間に」

 そうして、ショボン達はブーンを残し、自分達の席へと戻って行った。
 ブーンは顔を伏せて、すでに居眠りを始めそうな勢いだ。
 最後に振り向いたツンがそれを見て、やれやれといった様子で、苦笑した。
 
 


29 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:31:01.54 ID:XfAHCR4v0

 そしてツンが正面を向き直した時。
 
ζ(゚、゚*ζ「おはよ」

 一瞬、鏡を見たような錯覚に陥った。
 だがすぐにそれは違うと、ツンは気付いた。
 
ξ゚听)ξ「おはよ」

 少し間を空けて、挨拶を返す。
 自分とそっくりな女子生徒、デレに。
 
 二人は少し、学年で有名だった。
 双子ではないのに、双子のようにそっくりな二人。
 おまけに美少女ともなれば、自ずと話題になるだろう。
 
 入学当初は、お互いを珍しがってよく話していたようだが、
 今はそれぞれの友達のグループに属し、話すことは少なくなっていた。
 
 そんなデレが、珍しく挨拶をしてきた。
 
 ツンを真正面に見据えて、だ。
 
ζ(゚、゚*ζ「ちょっといい?」
 
 


32 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:32:51.01 ID:XfAHCR4v0

 珍しく話し掛けてきたのには、やはり何か用事があってのことらしい。
 
ξ゚听)ξ「うん? そろそろ先生来ちゃうんじゃ……」

ζ(゚、゚*ζ「いいから ちょっと付き合ってよ」

 そう言うとデレは早々に身を翻し、教室から出て行った。
 ツンは半ば呆れ気味で、デレの後に続く。
 
ξ゚听)ξ(何かしら……ペルソナがあるし、変なことでも大丈夫、よね……?)

 少しの不安を抱えながら。
 
 何も語らない背中を見つめながら、ツンはデレの後ろを歩く。
 自分の背中を見るとこんな感じなのだろうか、と思っていた。
 
 ツンはツインテールを縦巻きに。
 デレはツインテールを緩いウェーブに。
 
 違いと言ったら、そんな程度だ。
 若干、デレの方が化粧に気合いが入っている気もする。
 
 付き合う友達、環境によって、そういう部分は変わるのであろう。
 
ξ゚听)ξ(てか……どこまでいくのかしら……)
 
 

35 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:34:54.02 ID:XfAHCR4v0

 階段を一つ上り、四階へ。
 そのフロアは、科学室や音楽室と言った特別教室のあるフロアだ。
 誰もいない廊下を二人は歩き、やがてデレがその歩みを止めた。
 
ζ(゚、゚*ζ「ここ」

 短く言って、デレが教室に入った。
 そこは、使われていない空き教室だ。
 
ξ゚听)ξ(…………)

 ツンはまた少し戸惑ったが、中に入った。
 
 教室内は、天気のいい朝だと言うのに薄暗かった。
 隙間なく閉められた、暗幕のせいだ。
 教室内には机や椅子すらない、空っぽの空間だ。
 
ξ゚听)ξ「……デレ? どうしたの?」

 少し気味が悪くなったツンは、早く戻ろうと用件を言うように急かす。
 デレは教室の中央で、ツンに背を向けたままに話しだした。
 
ζ(、*ζ「……岡田君に告白されたのって、本当?」

ξ;゚听)ξ(あ……そういうことね……)
 
 

37 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:36:54.54 ID:XfAHCR4v0

 デレの直球な質問に、ツンは動じることはなかった。
 貞子の事があったばかり。もしかしたら、悪魔についてかと思っていたからだ。
 
 そちらに比べれば、可愛い質問であった。
 
ξ゚听)ξ「ほんとだけど……」

ζ(、*ζ「ふーん……じゃあ、断ったのもほんとなんだ?」

ξ゚听)ξ「そうよ」

 そして訪れる、沈黙。
 
 岡田とは、陸上部に所属する短距離走で有名な生徒の事だ。
 大会でも常に表彰台に立ち、その容姿も相まって、女子生徒の人気を集めている。
 
 実はツンは、先日その岡田に告白され、そしてばっさりと断っていた。
 理由はもちろん、ブーンのことが最も大きかったのだが、
 岡田はクーにもアプローチしていた時期があったことを知っていたのも、理由の一つ。
 
 女癖が悪いと言うのも、一つの噂だったが、実の所ははっきりとしていない。
 
ζ(、*ζ「じゃあ……」

 静寂の中、突如また口を開く、デレ。
 
 


38 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:38:04.74 ID:XfAHCR4v0

ζ(、*ζ「私が岡田君を好きだってことは、知ってた?」

ξ;゚听)ξ「え……知らないわよ……」

 デレと大して話さなくなってから、一年以上経つ。
 そんな話など、知っているわけがなかった。
 
ζ(、*ζ「ふぅん……」

 聞いておいて、まったく興味がないといったような返事をする。
 ツンはそれに少し、頭にきたようだ。
 
ξ゚听)ξ「……話はそれだけ? 私、教室に戻るわよ?」

ζ(、*ζ「…………」

 黙殺。
 
 デレはツンに背を向けたまま、佇んでいた。
 
ξ゚听)ξ「……じゃあ、ね」

 一言残し、ツンは教室を後にした。
 
 デレは変わらず、動かなかった。
 
 


43 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:40:19.23 ID:XfAHCR4v0


 やがて、振り向く。
 
 
ζ(゚ー゚*ζ「私はね、ふられたの 岡田君に」


ζ(゚ー゚*ζ「どうしてかなぁ……? こんなに好きなのに……」


ζ(゚ー゚*ζ「なんで……ツンなの……?」


ζ(゚ー゚*ζ「私の方が、ちゃんとお化粧もして、綺麗なのに」


ζ(゚ー゚*ζ「…………同じ……顔なのに……どうして私はだめなの?」


ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ……どうして……?」


ζ(、*ζ「ねぇ……誰か……教えてよ……」
 



44 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:40:57.94 ID:XfAHCR4v0








─────────ネェ……オシエテヨ…………







      ペルソナサマ─────────…………
      
      
      
      
      
 
 

      

46 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:42:10.71 ID:XfAHCR4v0


───────ドクン。


ξ゚听)ξ(……?)

 一瞬、心がぶれた。
 立ち止まり、周囲を見渡す。
 
 本当に、ほんの一瞬だけ、ツンは共振を感じた気がしていた。
 
 長く続く廊下には、誰の姿もない。
 デレが残っている、空き教室へ視線を送ろうとした時。
 
ξ;゚听)ξ(やば……予鈴だわ……)

 朝のホームルームを告げる鐘の音に、ツンの意識は現実に戻された。
 駆け足で階段を下り、教室へと戻る。
 
 その時にはもう、ツンは共振の事など綺麗に忘れ去っていた。
 
 日常生活に戻った女生徒の足音を反響させた後、フロアは再び静寂を取り戻す。
 
 
 しかし、空き教室からは、異様な気配が漂っていた。
 
 


47 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:44:59.42 ID:XfAHCR4v0

「悔しいですか、哀れな子羊よ」

ζ(゚、゚;ζ「!? 誰!?」

 声など、するはずがない。
 さっきまでは、あの忌々しい女がいた。
 
 今はいない、私だけだ。
 だけど、はっきりと、聞こえた。
 
 聴き覚えのある、声が。
 
「案ずるな 私は君を救いに来たのです」

 この声、間違いない。
 でも、いつのまにここに……
 
ζ(゚、゚*ζ「…………」

 声のする方に、体を向けた。
 
 やはり、居た。
 
 私の、知っている人が。
 
 


52 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:48:27.99 ID:XfAHCR4v0

/ ゚、。 /

 担任、鈴木ダイオード。
 しかしなぜ、先生がここに。
 
/ ゚、。 /「悔しいですか?」


 悔しい?何が?

 
/ ゚、。 /「憎いですか?」


 憎いって、誰が。

 
/ ゚、。 /「……殺したい、ですか」


 殺…………コロ、シタイ?
 
 
/ ゚、。 /「貴女の鏡の様な存在、ツンを」

 ツ……ン…………
 
 


53 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:50:26.88 ID:XfAHCR4v0

/ ゚、。 /「貴女の愛しい人の心を虜にした、ツンを」


 …………。

 
/ ゚、。 /「貴女より、頭のいいツンを」


 …………。
 
 
/ ゚、。 /「同じ姿なのに、貴女より愛されている、ツンを」


 …………クヤシイ……
 
 ……ニクイ……
 
 コロ………
 
 
ζ(、*ζ「殺したい あの女を、今すぐにでも」
 
 


55 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:51:53.55 ID:XfAHCR4v0

/ ゚、。 /「…………」

 一瞬、無表情なダイオードの顔が笑みを浮かべた気がした。
 男だが、中性的な顔をしている。所謂美形だ。
 
 何を笑うのか。お前も殺してやろうか。
 
/ ゚、。 /「これを」

 ダイオードが手を差し伸べた。
 その手には、私の手の平でもすっぽり納まりそうな、黒い小さな箱のような物。

/ ゚、。 /「これが貴女に力を与えてくれます」

 こんな、こんなちっぽけな物が?
 
/ ゚、。 /「黒き、トラペゾヘドロンと言う物です」

 トラ……ぺ……?
 何を言っているんだろうか、この男は。
 
 あぁ、イライラする。
 
/ ゚、。 /「さぁ……」
 
 

56 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:53:57.23 ID:XfAHCR4v0

 ダイオードが私の目の前まで手を伸ばしてきた。
 近くで見ても、ただの箱に見える。
 暗くてよく見えないせいかもしれない。
 
 ……暗い?
 
 おかしい。さっきまではこんなに暗くはなかった。
 暗幕を閉めていると言っても、外は快晴で、薄暗い程度だったはずだ。
 
 なのに、なぜ。
 
 暗い。
 
 いや。
 
 ……黒い。
 
 まるで、この箱の色のように。
 
 黒だけのはずなのに、壁が、床が、天井がうねっているように見える。
 うねって、蠢いて、生きてる、ように…………
 
 手を伸ばし、その箱を、掴んだ。
 
 またダイオードが、笑った気がした。
 
 それを最後に、私の意識は、そこで途切れた。
 
 


58 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:55:36.37 ID:XfAHCR4v0





「遅いぞ、ツンくん」

ξ;゚听)ξ「す、すみません」

 ツンは急いで戻ったのだが、出席確認には間に合わなかったようだ。
 副担任から軽く叱責を受けた後、席に着く。
 
ξ゚听)ξ(……鈴木先生はいないんだ……)

 座ってから、そんな事を思った。
 規則に厳しい鈴木の姿が見えないのは、珍しい事だったからだ。
 
 ツンはちらりと、ブーンに視線を送る。
 すでに豪快に机に突っ伏し、寝ていた。
 
ξ゚ー゚)ξ(やれやれ……)

 それは、最近のかけ離れた出来事からの、少しばかりの帰還。
 退屈な授業も、久しぶりに真剣に受けることができそうだと、ツンは思った。
 
 正面を向き、ありふれた日常へと、身を投じた。
 
 


61 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 21:57:47.42 ID:XfAHCR4v0





从ぅ-∀从「おはよーす……」

ミセ*゚ー゚)リ「おはようございます」

モ*゚ー゚シ『おはよー』

( ´∀`)「おはようございます」

 重い瞼を擦りながら、ハインがモナーに挨拶をする。
 ここは、津阿都(ツアト)神社本殿から少し離れた所にある道場。
 
 モナーはここで寝泊まりをしている。
 急なこともあって、ハインとジョルジュは道場のすぐ近くにある個室で寝ていた。
 
( ´∀`)「起こしてしまいましたか?」

从 ゚∀从「うんにゃ、大丈夫だ 久々に畳の上で寝れて、気持ちよかった」

( ´∀`)「そうですか それはよかったです」
 
 


63 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:00:27.10 ID:XfAHCR4v0

从 ゚∀从「んで……」

 ハインはモナーの足元に目を移す。
 そこには。
 
 
 
 
 
(  ∀ )





仰向けに倒れている、ジョルジュがいた。

从 ゚∀从「こりゃまた随分としぼられてるねえ」

( ´∀`)「本人の希望ですから 一切の手加減は無しです」

 どうやら、相当絞られたようだ。
 
 

 

66 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:02:13.57 ID:XfAHCR4v0

从 ゚∀从「てか、学校は?」

( ´∀`)「休むそうです 私は反対したのですが、半日だし授業はないと」

从 ゚∀从「ふぅん……」

モ*゚ー゚シ『じょるじゅねー、こてんぱんにされてたの! いたそうだった!』

从 ゚∀从「そうかそうか、それは見たかったなぁ」

 ふと、ハインがあることに気付く。
 
从 ゚∀从「あれ? J・Fは?」

 そう。J・Fの姿がなかったのだ。
 
( ´∀`)「早朝、散歩してくると言って出ていったきりです」

从 ゚∀从「ふぅん……」

 モナーの返答に、先と同じ様な返事をした。
 何を思ったのかは、深く読み取れない。
 
(  ∀ )「…………ハッ」
 
 


68 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:03:51.53 ID:XfAHCR4v0

 勢いよく、ジョルジュが上体を起こす。
 
从 ゚∀从「おー、おはよう」

モ*゚ー゚シ『おはよー!』

(;゚∀゚)「お、おはよって……いてててててて…………」

 腰を摩りながら、苦痛に顔を歪ませた。
 
( ´∀`)「受け身がとれていない証拠です」

 そんなジョルジュを心配せずに、厳しい指摘を飛ばす。
 
(;゚∀゚)「あ、はい……」

( ´∀`)「と言っても、よくついてこれてますね」

( ゚∀゚)「ま、まだまだいけますよ!」

 言いながら、立ち上がる。
 が、腰が痛いのか、気持ち前屈みになっていた。
 
ミセ*゚ー゚)リ「ふふっ 体が壊れては元も子もないですから、朝食にしましょう」
 


72 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:05:50.60 ID:XfAHCR4v0
 _
(*゚∀゚)「は、はい!」

 モナーにした返事よりも、元気が良かった。
 
 実はミセリも、この道場で生活をしていた。
 モナーとは血縁ではないようだが、はたして。
 
 なんにせよ、ジョルジュにとっては願ったり叶ったりである。
 
从 ゚∀从「調子いいなーコイツ」

( ´∀`)「若いですねぇ……」

(;゚∀゚)「ぐ……」

( ´∀`)「そういうことですし、朝食にしましょうか」

从 ゚∀从「お、待ってたのか? 悪い」

( ´∀`)「いいんですよ」

 表情は、そのままで。
 
( ´∀`)「色々と、お話も聞きたいですから」

 本題に、触れた。
 
 

75 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:07:56.89 ID:XfAHCR4v0

─────………


ミセ*゚ー゚)リ「どうぞ」

 八畳ほどの座敷へ移動した後に、皆の前にミセリが作った食事が並べられた。
 モナーとミセリの前には、精進料理が。
 ジョルジュとハインの前には、精進料理に鮭の塩焼きが足されていた。
 
ミセ*゚ー゚)リ「お二人には、味気ないと思いまして」

 少しばかりの、配慮だった。
 
( ゚∀゚)「いやいや! ありがたくいただきます!」

 高い音が出るほど強く両の手を合わせ、掛け声と共にお辞儀をする。
 
( ゚∀゚)「いただきますッ!」

 豪快に料理を口に運ぶジョルジュを見て、皆も食事をし始めた。
 
 
 少しして、
 
 
从 ゚∀从「んで、聞きたい事は?」
 
 


77 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:10:49.18 ID:XfAHCR4v0

 鮭の身をほぐしながら、ハインが言った。
 
( ´∀`)「そうですね……今後の動向については皆さんがきてからとして……」

 ほうれん草のおひたしを口に運び、ゆっくり咀嚼した後、飲み込む。
 
( ´∀`)「お若い貴女が何故、副所長という重要な役割に就いたのかを」

从 ゚∀从「ふぅん……わかったよ」

 少し、気を悪くした様な返事。
 モナーの質問で、まだどこか信用し切れていない物を感じたのだろう。
 構わずに、続ける。
 
从 ゚∀从「あたしがあそこに行く前は、ボトムアップ方式の研究をしてた。
      VIP傘下の研究所でな」
     
( ゚∀゚)「ボトムズ? 装甲騎兵か!」

从 ゚∀从「お前いくつだよ 所謂、ナノテクってやつだ あたしの得意分野な。
      んで、優秀な研究結果を残していったあたしに、モララーは目を付けたってわけ」
     
( ´∀`)「なるほど……」
 
 

78 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:12:29.50 ID:XfAHCR4v0

 実際、ハインの科学、技術力には目を見張るものがある。
 悪魔が見えるようになるコンタクトレンズや、モショの帽子がそれだ。
 
 いまいち、モナーは納得していない様子だが、次の質問へと移った。
 
( ´∀`)「では次に、各区にある研究所と言う物は、場所は知っていますか?」

 少しの間を置き。
 
从 ゚∀从「……ああ、知ってるぜ」

( ´∀`)「そうですか 教えて頂けませんか?」

从 ゚∀从「ん……」

 すると、ハインは空いた皿にご飯粒を並べた。
 中央に一粒、その上下、そして左右に一粒。
 
从 ゚∀从「真中が、VIPだ その下が、昨日の玖都留(クトル)、これはわかるな?」

 米粒を箸で指しながら言う。
 
ミセ*゚ー゚)リ(行儀悪い……)
 
 



81 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:14:30.28 ID:XfAHCR4v0

从 ゚∀从「んで、上が紅都亜(クトア)、左が覇洲(ハス)、右が津阿都(ツアト)だ
     紅都亜は、施設自体は山の中にある 入口は紅都亜神社だ」
     
(;´∀`)「あんなところですか……」

 紅都亜神社は、紅都亜山の頂上近くにあり、山道もまったく整備されていない為、
 登山家すらも訪れない場所だ。
 
从 ゚∀从「次に、覇洲 ここはあれだ 最近できた、アバドンの地下だ」

( ゚∀゚)「アバドンって……ゲーセンとかプールとか映画館とかある、あそこか?」

从 ゚∀从「そうだ 超大規模アミューズメントパーク、アバドン」

( ´∀`)「……しかしあれは、構想自体が、十年程前からあったような……」

从 ゚∀从「ああ、急遽地下に作ったらしい 出来る限り、何かで隠したかったんだと思う」

( ´∀`)「そうですか……では、津阿都は?」

从;゚∀从「あー……」

 そして、ハインが言葉に詰まる。
 
( ´∀`)「? どうしたのです?」
 
 

83 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:16:31.30 ID:XfAHCR4v0

 モナーが首を傾げ、尋ねる。
 が、ハインは視線を逸らし、言い淀んでいる。
 
 やがてハインは、チラリとジョルジュを見た。
 
( ゚∀゚)「んあ? なんだ?」

从 ゚∀从「……まぁ、言わなきゃ始まらねぇしな……」

( ´∀`)「お願いします」

モ*゚ー゚シ『きになるー』

 話の内容を理解しているのかはわからないが、
 食事を終えたミセリの膝の上に座っているモショも急かす。

( ゚∀゚)「お、言っちまえ どうせ片っ端から潰すんだから」

 ジョルジュの言葉に、ハインは少し笑った後に、口を開いた。
 
 
 
从 ゚∀从「津阿都の研究所がある場所は───………

 
 


85 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:18:24.83 ID:XfAHCR4v0





 まず最初に起こったのは、共振。
 いや、共振よりもさらに大きな、揺れ。
 
ξ;゚听)ξ(な、何……!?)

(;´・ω・`)(これは……?)

 体の奥が、熱い。
 それは病院で最初に感じた、あれに似ていた。
 
 
 即ち、ペルソナからの、警告。
 
 
 次に、まるで学校全体が跳び上がった様な、足元からからの衝撃。
 
 机が、椅子が、掃除用具を仕舞うロッカーすらも、一瞬浮き上がった後に、盛大な音を立てて転がる。
 人が立っていることすらままならない、激震。
 
 
 


90 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:20:32.82 ID:XfAHCR4v0

 物が倒れ、ガラスが割れる音。
 そこに、生徒と教員達の悲鳴が入り混じる。
 
(;゚ω゚)「な、なんだお!?」

「と、とにかく、頭を守りなさい!」

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 副担任の声も、混乱しきった生徒達の悲鳴に掻き消されてしまう。
 
 
 揺れは未だ、治まらない。
 恐怖は未だ、膨らみ続ける。
 
 
 突如VIP高校を襲った、大地震。
 
 
 しかし、空き教室で静かに佇む、一人の女生徒。
 
 彼女の周囲だけが、揺れていない。
 
 口元を吊り上げながら、掲げた右手には、一つの黒い箱。
 
 

91 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:22:13.89 ID:XfAHCR4v0


 「へぇ……こうやって使うのね……」
 
 
 「アハハ! 馬鹿みたいな悲鳴が聞こえる! アハハハハハ!」
 
 
 「黒きトラペゾヘドロン、もっと、もっともっと、恐怖を食べさせてあげる」
 
 
 「メインディッシュは、ちゃんと用意してあるから」
 
 
 「アハハハハ……! ……待ってなさいよ 下衆女」
 
 
 
 
 
 ζ(、*ζ「私が殺してあげるから───………
 
 
 

 

93 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2008/11/22(土) 22:23:02.06 ID:XfAHCR4v0





从 ゚∀从「あるだろ? 最近、つい三年前に造られた、建物が」


 最初に気がついたのは、ジョルジュだった。
 
(;゚∀゚)「ま、まさか……」


从 -∀从「……あぁ……津阿都の研究所がある場所は……」




        「VIP高校だ」
 
 
 
 
                         続く。


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