( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

──第15話 『引き継がれし力』


 
──金輪奈落力を籠めよ


──胸奥の意想をのせよ


──さぁ、語るには飽いた


──悲愴極まる道化の舞台


──今こそ幕を、下ろす時
 
 
 
 
 
2 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:29:47.31 ID:tW1pNTwO0
 
 闇に降り立つ、双頭の猛犬。
 蒼翠の鬣(たてがみ)を靡かせ、凛と佇む。
 
 見つめる先は、主の敵。
 それは即ち、己が敵。
 
 ──我、汝と共に在り──
 
  、
( ゚∀゚)『ペルソナァ……!』
 
 紡げ。己が道を共に往く、盟友の名を。
 
  、
( ゚∀゚)『オルトロス!!』
 
 
 ──我は汝と、共に往こう──
 
 
 『オォォォォォォォォォォォォォォン!!』
 
 思いを、咆哮に乗せて。
  、
( ゚∀゚)「……行くぜ!」
 
 さぁ────
 
 
 


4 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:31:56.48 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
 ────その牙で断て。
 
 
        悪に踊らされた、悲しき人形の糸を───
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   ( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
 
 
 
         第15話『引き継がれし力』
 
 
 
 
 

7 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:33:46.64 ID:tW1pNTwO0
 
 対峙する、魔獣と邪神。
 
 睨み合う、人とヒト。
 
ζ(゚、゚*ζ「……」
 
( ゚∀゚)「……」
 
 
 沈黙が彼等を包む。
 
 それと同じ様に、広がる不滅の黒は未だ、ゆっくりと。
 
 
( ゚∀゚)「…………ッ」
 
 
 黒が近づく。
 
 
 J・Fを呑みこんだ、黒が。
 
 
(# ゚∀゚)「やらせるかよォッ!」
 
 
 


8 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:36:07.30 ID:tW1pNTwO0
 
 
( ゚∀゚)『ファイアブレス!!』
 
 『グアアアァァッ!!』
 
 ジョルジュの叫びに、オルトルスが咆哮を上げ応える。
 片方の頭を持ち上げ、その口端からは紅蓮の炎の一片が。
 
 そして、放たれる。
 
 オルトロスの口から伸びる、燃え盛る強烈な炎の嵐。
 
 
 ぶつかり合う、赤と黒。
 
 
(# ゚∀゚)「もう俺は! 恐れねぇ!!」
 
 
 炎に、誓いを重ね。
 
 黒を赤に、染めていく。
 
 
 

 

10 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:37:49.23 ID:tW1pNTwO0
 
(# ゚∀゚)「もう俺は! 迷わねぇ!!」
 
 
 炎に、信念を重ね。
 
 
ζ( 、;ζ「……くっ……!」
 
 
 尚も紅蓮の炎は、その勢いを増していく。
 
 
 
(# ゚∀゚)「もう……俺は……!」
 
 
 それは願い。それは希望。
 絶対とは言い切れない、実に不確かなモノ。
 
 だが。
 
 ジョルジュは叫ぶ。
 
 誓いと、信念の上に───
 
 

 

11 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:39:25.22 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
  、
(# ゚∀゚)「絶対に!! 誰も死なせねぇぇぇええええぇぇぇぇぇ!!!」
 
 
 
 絶対の意思を重ね。
 
 
 
 色濃く……
 
 
 
 強固に……
 
 
 
 灼熱の如く!
 
 
 
  、
(# ゚∀゚)『うおおおおおおぉぉぉぉぉおおおあああああ!!!』
 
 
 
 

12 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:40:58.84 ID:tW1pNTwO0
 
 不滅の黒を、灼熱の炎が押し返した。
 
 薄れ行く闇。引き裂くは、赤。
 
 
ζ( 、 ;ζ「…………!」
 
 
 剛炎はそのままデレへと襲いかかる。
 
 アカ・マナフが、翼を閉じてデレを覆った。
 その翼に触れる前、アカ・マナフによって形成された魔力壁に炎がぶつかる。
 
 ジョルジュの絶対の思いをのせた炎は二つに分かれ、虚空へと掻き消えた。
 
 
( ゚∀゚)「…………」
 
 改めて認識される、邪神の強大な力。
 デレの様子は当初の余裕が見えず、不安定さを見せてはいたが。
 
 やはり。
 
( ゚∀゚)(そう簡単には……いかねぇ、か……)
 
 

 

13 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:42:35.02 ID:tW1pNTwO0
 
 
 佇むアカ・マナフを見つめるジョルジュ。
 底無しの闇の中央に浮かぶ、汚れ無き一点、白き仮面。
 
 その裏にある顔は、果たしてどんな感情を浮かべているのか。
 
 
 
 
 
 
 ふと。
 
 
 
 
 
 
 ジョルジュの視界に、何かがぱさりと。
 
 
 
 
 静かに地に落ちたそれは。
 
 
 


16 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:44:25.67 ID:tW1pNTwO0
 
 
 青く、微かに焦げた、布。
 
 
( ゚∀゚)「…………」
 
 
 ジョルジュはそれに歩み寄る。
 
 見覚えのある、青い帽子。
 
 思い出す。その帽子をかぶっていた、生意気な妖精。
 
 
 
 ジョルジュがそれを、拾い上げた。
 
 
 
(  ∀ )(……J・F……)
 
 
 それは、J・Fの帽子。
 人との触れ合いを求め、人の為に散った仲魔の形見。
 
 
 


17 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:46:37.96 ID:tW1pNTwO0
 
 
 しっかりと握りしめ。
 
 
  、
( ゚∀゚)
 
 
 
 力強く、敵を見据え。
 
 
  、
( ゚∀゚)(お前がくれた……この力……)
 
 
 
 形見を胸に、押し付けて。
 
 
  、
(# ゚∀゚)(絶対に……無駄にはしねぇ……!)
 
 
 
 


18 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:48:10.19 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
ζ( 、 #ζ(どいつもこいつも……)
 
 
ζ( 、 #ζ(私の邪魔ばかりする……!)
 
 
ζ( 、 #ζ(何故……どうして……全部ツンが悪いのに……!)
 
 
 
 
 
 尚もその心は黒く、黒く。
 
 
 
 
 
 
ζ( 、 #ζ(うざい……うざい! うざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい!!!)
 
 
 
 


19 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:50:15.11 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
ζ(゚、゚#ζ『アカ・マナフ!!』
 
 
 
ζ(゚、゚#ζ『燃やし尽くせッ! マハラギオン!!』
 
 
 アカ・マナフが両の手を前へ伸ばす。
 
 
 一瞬の、静寂の後。
 
 
 輝く、真紅の爆光。
 
 それと共に放たれた、灼熱の大火炎。
 
 先のオルトロスが放った火炎よりも、遥かに───
 
 
ζ(゚、゚#ζ「死ねッ! 一人残らず! 死んでしまえッッ!!」
 
 
 

 

21 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:52:04.85 ID:tW1pNTwO0
 
 
ミセ; − )リ(いけない……強すぎる……!)
 
 後一歩。後少しで、ブーンを呼び戻せる。
 その手前での、強力無比なデレの攻撃。
 ここでミセリが防御に回れば、ブーンは手遅れになりかねない。
 
 だからと言って、このままでは───
 
 
ミセ;゚−゚)リ「───!」
 
 
 しかし、その危惧は。
 
 
 
  、
( ゚∀゚)
 
 
 
 徒労以外の、何ものでもなかった。
 
 
 


23 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:54:07.97 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
ξ;゚听)ξ「ジョルジュッ!!」
 
 ツンにもわかる。
 デレの放ったマハラギオンが、如何に強力であるかは。
 
 
 だが。
 
 
ξ;゚听)ξ「……!」
 
 炎を遮るようにして立つジョルジュの背中は。
 
 
 『俺に……任せろ!』
 
 
 
 ツンにそう言っているように見えていた。
 
 
 

 

25 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:55:48.12 ID:tW1pNTwO0
 
 
 迫る灼熱の火炎。
 それでもジョルジュは、微動だにせず。
  、
(# ゚∀゚)『オルトロス!』
 
 紡ぐのは、盟友の名。 共に炎を、迎え撃つ。
 
 だが、オルトロスの持つ力の中で、広範囲攻撃を迎え撃つ力はない。
 先のファイアブレスでは、間違いなく圧されてしまう。
 
 
(# ∀ )(…………)
 
 そんな事は当然、ジョルジュには解っていた。
 
 だが、退かない。
 
 退くわけには、いかない。
  、
( ゚∀゚)(……力を……貸してくれ!)
 
 迫る火炎に、それより弱い火炎では対抗できない。
 
 それならば。
 
 
 


26 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:58:06.12 ID:tW1pNTwO0
 
 思い出される、ペルソナの相性の事。
 オルトロスとアカ・マナフの相性はジョルジュの知る所ではないが……
 
 今は実に、単純だ。
 
 炎には、水。 即ち、冷気。
 
 握りしめるJ・Fの帽子。
 その中に、微かに宿る力の欠片。
 
 
 J・Fが残した、生きた証。
 
  、
(# ゚∀゚)「お前の力、確かに!」
 
 ペルソナからペルソナへ。
 
 力は確かに───引き継がれた!
 
  、
(# ゚∀゚)『ブリザードブレス!!』
 
 生まれ出でる、極寒の氷嵐。
 
 

 

28 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:59:53.79 ID:tW1pNTwO0
 
 『オオオォォォォォォォォォォォォォン!!』
 
 火炎を放った時とは逆の口から、咆哮とともに放たれる。
 
 
ζ( 、 ;ζ「なに……!」
 
 
 三度ぶつかる、力と力。
 
  、
(;゚∀゚)「! ちぃッ!」
 
 火には水。 そして、逆も然り。
 互いが弱点に成り得る、炎と冷気。
 
 ジョルジュの感情、オルトロスと、J・Fの魔力を重ねた冷気。
 重なる力は、本来以上の力を引き起こす。
 
 
 だが、それでも。
 
 
 力と力は、拮抗していた。
 
 
 


29 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:01:38.70 ID:tW1pNTwO0
 
 恐るべきはやはり、邪神の力。
 ジョルジュの新しい力と、感情、そしてJ・Fの力。
 それらを全て籠めて、やっと互角。
 
 一方のアカ・マナフは、術者デレが不安定な状態。
 不完全な形で放たれたにもかかわらず、あまりに強大な一撃。
 
  、
(;゚∀゚)「く……おおおおおぉぉぉぉぉ……!」
 
 
ζ(゚、゚#ζ「なんで……なんで死なないのよッ!!」
 
 
 押せない。引かない。
 
 完全な、五分。
 
 だが、それは似ていた。
 
 
 そう。
 
 
 J・Fの時と。
 
 
 


30 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:03:28.62 ID:tW1pNTwO0
 
 全力を籠めて放つジョルジュ。
 
 一方、自身は未だ不安定ながらも、
 耐え続けるジョルジュに苛立ちを覚え始めたデレ。
 
 憎しみは更なる力を送り込む。
 
  、
(;゚∀゚)「ぐおっ!?」
 
 徐々に徐々に、圧される冷気。
 力の均衡が、崩れようとしていた。
 
 
ζ(゚、゚#ζ「生意気なのよ……どいつも……こいつも!!」
 
 最早ツンだけではない。
 自分以外の人間全てに、負の感情の矛先を向けていた。
 
 
ζ( 、 #ζ「死ね! 死ねッ!! みんな、死んでしまえッッ!!」
 
 呪いの言葉を、自分以外の全てへ向けて。
 
 皮肉にもそれが、ペルソナへ更なる力を送り込む糧と成る。
 
 

 

31 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:05:07.67 ID:tW1pNTwO0
 
 
 なんと悲しい、少女なのだろう。
 
 劣等感から生まれた小さな亀裂から這い出た、ドロドロの闇。
 いつのまにか闇(それ)は、心の全てを染めていた。
 
 
 なんと孤独な、少女なのだろう。
 
 心から許せる人に、心で触れられる人に、出会えなかった。
 一人でも、頼れる人がいたのなら。
 きっと彼女は、心から笑えたはずなのに。
 
 強大な力を手に入れても、結局彼女は、一人きり。
 
 
 
 だから。
 
 
 
 だから、彼女は。
 
 
 
 
 負けるのだ。
 
 
 


33 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:06:58.41 ID:tW1pNTwO0
 
 『炎の壁!!』
 
 圧されていた冷気と火炎の挟間に突如生まれた、赤い壁。
  、
(# ゚∀゚)「!」
 
 ジョルジュは、振り向かない。
 その力を呼んだ者を、知っているから。
 
ミセ;゚ー゚)リ「……お待たせ……しました……」
 
 疲弊しきったその声とは裏腹に、汗に滲むその顔は、満足気な笑顔。
 
ミセ;゚ー゚)リ(今度は……間に合ったよ……)
 
ξ;凵G)ξ「…………」
 
 ミセリに肩を貸し、涙を流すツン。
 
 見つめる先には、ジョルジュと、そして。
 
  、
( ゚∀゚)「……ったく……心配かけんじゃねぇよ」
 
 視線を外さずに、尚も力を放ったままに、呟いた。
 
 
 


36 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:08:54.27 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
 「ごめんお」
 
 
 
 聞き慣れた声が、ツンとジョルジュの耳に妙に馴染んだ。
 
 ミセリの生んだ炎の壁により、デレのマハラギオンの勢いは衰えている。
 
 力は再び、均衡を……
 
 
 いや。
 
 僅かにジョルジュが、押していた。
 
 
 後、一手。
 
 
 それで、全てが───
 
 
 
 


37 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:10:33.60 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
 紡げ。 仲間の為に。
 
 
 
 『ペルソナッ!』
 
 
 
 放て。 終わらせる為に。
 
 
 
( `ω´)『永遠の……』
 
 
 
 染めろ。 悲しき少女の、汚れた心をその色に。
 
 
 
( `ω´)『白おおおおおおぉぉぉぉぉおお!!!』
 
 
 

40 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:12:44.24 ID:tW1pNTwO0
 
 
 煌く、ブーンの放つ汚れのない純白の光。
 
 デレとは、真逆の力。
 
 闇を照らす聖なる光、永遠の白。
 
 
 『…………チッ』
 
 
 アカ・マナフに浮かぶ、明らかな焦りの色。
 ブーンのペルソナ、スヴァローグから放たれた十数本の帯状の白炎(びゃくえん)。
 聖なる炎が、その色すらも変えてアカ・マナフに降り注いだ。
 
 
 その刹那。
 
 
 ジョルジュの力を阻む炎も、消え去った。
 
   、
 (# ゚∀゚)『
       お お お お お ぉ ぉ  お お ! ! ! !   
(# `ω´)                                  』
 
 
 

43 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:14:14.19 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
 
 
 純なる想いをのせた絶対零度の息吹と。
 
 
 
 
 
 
 汚れ無き浄化の白炎が。
 
 
 
 
 
 
 デレとアカ・マナフを、捉えた────
 
 
 
 

 

46 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:15:53.92 ID:tW1pNTwO0
 
 

 
 
/ ゚、。メ/「もう、いいだろう」
 
( ´∀`)(…………)
 
/ ゚、。メ/「しゃべりすぎたな」
 
/ ゚、。メ/「少々熱くなりすぎたようだ」
 
( ´∀`)(……ふん……)
 
 出来得る限りの情報を。
 そう考えていたモナーだったが。
 突如ダイオードは、会話の閉幕を告げた。
 
 互いに構え、対峙する。
 
 モナーは既に、足からは痛みも引き、万全。
 
 次は、不覚を取らない。
 
 
 


48 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:17:48.11 ID:tW1pNTwO0
 
 対する、ダイオード。
 
 モナーの手の内は、概ね掴んだつもりでいた。
 懐にさえ入らせなければ、勝機は見えている。
 
 次は、仕留める。
 
 
 ざり、と、足が砂を噛む音。
 モナーが左足に体重を乗せた、瞬間。
 
 
/ ゚、。メ/『ペルソ───』
 
 ダイオードがペルソナを呼ぼうとして。
 
 
 
 そのまま、硬直した。
 
 
 
( ´∀`)(………なんだ……?)
 
 
 


50 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:20:29.47 ID:tW1pNTwO0
 
/ ゚、。メ/「…………」
 
 
 
/ ゚、。メ/「勝負は預けた」
 
 
 一言。
 
 ダイオードがそう言ったと同時に、空間を作る為割れていた黒い雲が、突如。
 
(;´∀`)「なっ!?」
 
 手と手が合わさる様に、閉じた。
 モナーの視界が闇に覆われる。
 
 そしてその次に、強風が巻き起こる。
 
 モナーは右腕を上げて口と鼻に腕をつける。
 巻き起こる、砂塵。 吹き荒れる、闇。
 
 
 雲自身が、まるで意思をもっているかのように。
 
 
 VIP高校を覆っていた巨大な雲は、瞬く間に掻き消えた。
 
 

 

51 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:22:20.87 ID:tW1pNTwO0
 
( ´∀`)(…………)
 
 晴れた、校庭の片隅で。
 
 立っているのはモナー、ただ一人。
 
 
( ´∀`)(……退却? ……なぜだ……?)
 
 浮かぶ疑問も、一先ずは。
 
( ´∀`)(……皆さん!)
 
 取るべき動(どう)は、仲間との合流。
 モナーはすぐに、昇降口へと駆け込んだ。
 
 陽はすでに天上。校舎の割れた窓からは、柔らかな陽光が注いでいる。
 しかし、石化した生徒達は、未だに。
 
(;´∀`)(……これは……)
 
 異様な光景は、雲が去った今でも明らかに。
 
 安心はできない。
 上階から感じられているペルソナの波動も、そうだ。
 
 それらはモナーを急かせるに、十分すぎる理由(もの)達だった。
 
 
 


54 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:24:35.60 ID:tW1pNTwO0
 
 

 
 
 迸る、閃光。
 
 冷気が邪神を包み込み、十数本の白炎の流星が降り注いだ。
 合わさった二つの力は、室内の半分を覆う程の水蒸気を生み出す。
 
(;゚∀゚)「ハッ……ハッ……!」
 
 
(;^ω^)「ハァ……ハァ……お……」
 
 小さく声を漏らした後、ブーンが膝をつく。
 黄泉からの帰還は果したが、体は万全ではないようだ。
 
ξ;゚听)ξ「ブーン!」
 
 すかさず、ツンが駆け寄った。
 ブーンの隣にしゃがみ込み、大丈夫か、と。
 
(;^ω^)「だ、大丈夫だお……」
 
 肩で息をし、額に汗を滲ませながらも、ツンを安心させるように言った。
 
 
 


57 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:26:36.73 ID:tW1pNTwO0
 
ミセ*゚−゚)リ「黄泉還り(ヨミガエり)後は、あまり無理をなさらないでください」
 
 言ったミセリは逆に、幾分か落ち着いた様子だ。
 石化していたことも、ブーンに負担を与えていた。
 直後にあれだけの力を放ったのだから、立っていられないのは当然と言える。
 
 消耗した体力までは、ペルソナでは回復することはできない。
 
 
 やがて。
 
 
 薄れて行く、水蒸気。
 白が覆う面積は段々と少なくなっていき……
 
 
 その中央には、黒い影。
 
 
 いや、影でもシルエットでもない。
 
 
 黒こそが、全て。
 
 
 邪神、アカ・マナフ。
 
 

 

60 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:28:25.13 ID:tW1pNTwO0
 
 ぐったりとしたデレを両手で抱きかかえ、佇んでいた。
 不気味な白い仮面を、ブーン達に向けて。
 
( ゚∀゚)「……てめぇ……」
 
 一歩。ジョルジュが前に出た。
 
(# ゚∀゚)「……てめぇが……黒幕なんだろ?」
 
 『…………』
 
(# ゚∀゚)「沈黙は正解と取るぜ?」
 
 『だとしたら───』
 
 
 
 震え。
 
 
 
 手が、体が、鼓膜が、脳が、心が。
 腹の底に響くだとか、そんな話ではない。
 
 邪神の一声。
 
 それだけで、まるで世界が揺れた様に、刹那の震えと悪寒が、ブーン達に奔った。
 
 

 

63 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:30:57.06 ID:tW1pNTwO0
 
 
 『どうする、つもりだ?』
 
 
 明らかに、己が追い詰められたこの状況。
 それなのに、煽る。 それなのに、この余裕。
 術者は意識を失っているというのに。
 
 邪神の力は、自身が掲げる闇の様に、底が見えない。
 
 
 だからといって。
 
  、
(# ゚∀゚)「ブッ消すだけだよ!!」
 
 退くわけにはいかない。
  、
(# ゚∀゚)『ペルソナァァァッ!』
 
 ──これが、最後だ。
 このクソッタレな黒い木偶人形を、消し去ってやる!──
 
 
 『オオォォォォォォォォォォン!!』
 
 双頭を持ち上げ、ジョルジュの怒りを咆哮に変え、猛る。
 
 

 

66 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:34:50.80 ID:tW1pNTwO0
 
 オルトロスの足元から、青く細い電流が、幾重にも。
 ばちり、ばちりと重なる毎に、猛犬の眼前に形作られていく。
 
 こう、と、一瞬高く、風を揺らす様にオルトロスが吼えた。
 生まれ出でた青い雷撃、そしてその束をその一声で圧縮させる。
 
 
 煌々と輝く、一丸の青い雷球が現れた。
 
 
 『ほう……』
 
 
(# ゚∀゚)「これで! 終わらせてやる!!」
 
 洗礼され、研ぎ澄まされた魔力の塊。
 
 属性を持たぬ、青き光球。
 だがしかし、ブーンが放った、『浄』の火とは、完全に異。
 
 
 その火は全てを『滅』とする、断罪の力。
 
 
 

68 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:36:54.77 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
  、
(# ゚∀゚)『メギ───』
 
 
 
 ジョルジュがそれを、放つ直前。
 デレの腹部に置かれた黒きトラペゾヘドロンが、一瞬ブレた。
 
 同時に、アカ・マナフの姿が揺らぎ……
 
 黒の邪神と悲しき人形は、虚空へと消え去った。
 
 
(;゚∀゚)「なっ!?」
 
 突然の出来事に戸惑い、踏鞴(たたら)を踏む。
 行き場を失った滅の光球は、オルトロスの眼前で、虚しく霧散した。
 
 
 呆然と、アカ・マナフが立っていた場所を見つめる四人。
 
 いつの間にか。
 
 室内には、陽の光が降り注いでいた。
 
 
 


70 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:38:40.53 ID:tW1pNTwO0
 
(;´∀`)「皆さん!」
 
 そこへやっと、モナーが到着した。
 彼の上げた声に一同は少し驚き、振り向く。
 

( ゚∀゚)「あ……」
 
 かくんと、ジョルジュの膝が折れた。
 度重なる死との邂逅。自身も、そして友たちも。
 極限の緊張が解かれた今、糸が切れたようにジョルジュは前に。
 
 
 ぽふ。
 
 
( ゚∀゚)「あ……え……?」
 
 しかし、彼が顔を埋めたのは固い床とは全くの逆。
 
ミセ*゚ー゚)リ「……お疲れ、さまです」
 
 汚れを知らぬ、純心の巫女の。
 暖かく、包み込むような大らかさと柔らかさを兼ね備えた。
 
 ミセリの、胸の中だった。
 
 
 


74 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:40:39.31 ID:tW1pNTwO0
 
 
(;゚∀゚)「おぱっ!? え、えええええ?!」
 
 驚き、後ずさろうとしたが、体は言う事を聞かなかった。
 声だけ上げて慌てるジョルジュにクスリと笑い、ミセリはジョルジュの頭を撫でた。
 じんわりと、温かい光がジョルジュを包み込む。
 
 いつの間にかミセリの背後に現れていたサラスヴァティー。
 彼女も優しげに、微笑んでいる。
 
 デレの火炎に圧された際に、吹き荒れた熱風によって、
 ジョルジュの体には軽症の火傷がいくつもできていたのだ。
 
ミセ*゚ー゚)リ「今は、休んでください」
 
 ミセリも、消耗しているだろうに。
 優しい巫女は真っ先に、皆を救ったジョルジュを労い。
 
 
ミセ* ー )リ、
 
 
 皆を救い、闇へ呑まれた妖精の事を想い、涙を流した。
 
 
 


75 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:42:30.31 ID:tW1pNTwO0
 
 そんな二人を見て、つられ微笑むブーン。
 隣にいたツンも、僅かに笑みを浮かべた。
 
 一旦の安心がもたらした、微笑み。
 
 しかしすぐに、その微笑みは消え去ってしまう。
 
ξ )ξ(……J・F……)
 
 自分に力がない所為で、命を落とした仲魔のこと。
 
 それに加えて。
 
ξ )ξ(…………デレ…)
 
 友と思っていた者の、強烈な悪意。
 その全ての発端が、自分だったと言うのだ。
 
 
 そして彼女を、救う事が出来なかった。
 
 
ξ )ξ(私は……何もできなかった……)
 
 
 


79 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:44:27.48 ID:tW1pNTwO0
 
 敵の力が、強大すぎた。仕方のない、どうしようもないことだ。
 
 目の前で大切な人を殺され、仲魔を殺され。
 そして、大切な人を救ってもらい、自分自身も救ってもらわれ。
 
 救うと誓った友すらも、自分では何も、どうすることもできなかった。
 
 
 その中で、果して人は仕方がないと割り切れるものだろうか。
 
 
( ^ω^)(……ツン?)
 
 微かに震えるツンに、ブーンが気付いた。
 彼女の手は固く、しっかりと握り締められている。
 
 
 己の無力さを、恨んでいた。
 
 
 どうしようもない、力の差に。
 
 
 その中で何か、何か一つでもできた事はなかったのか、と。
 
 
 


80 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:46:55.94 ID:tW1pNTwO0
 
 ────……
 
 わからない。思いつかない。
 どうすれば、何をすれば、あの時ああしなければ。
 
 浮かんでは消え、浮かんでは消え。
 
 都合良く、無理矢理に創り上げた『if』ですら、音を立てずして朽ち果てる。
 
 
 ここまで。
 
 
 ここまでは自分は、無力な子供だったのか。
 
 
 『だから私は、モナーさんの言ったことを信じて、できることをするわ』
 
 
 あの夜、迷っていたブーンに言った、自分の言葉。
 
 何が、できることをする、だ……
 
 自問自答を幾許も繰り返しても、できることなど見つからない。
 
 


83 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:48:55.06 ID:tW1pNTwO0
 
 
 
 『たとえ死んだって…何もしないまま死ぬよりはマシよ』
 
 
 嘘だ。
 
 
 甘い、甘っちょろい、子供だ。
 
 戦ってるつもり、護ってるつもり。
 その程度のことで、自分は何かをしていると思いこんでいた。
 
 
 強く。もっと、強く。
 
 
 私達を護ったジョルジュのように。
 
 ブーンを救った、ミセリさんのように。
 
 
 強く───………
 
 
 

 

89 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:52:14.91 ID:tW1pNTwO0
 
 
 一つの大きな戦いの、終局。
 色々な事が、ありすぎた。
 邪神アカ・マナフが残した傷痕は、未熟な彼らの心に深く、大きく。
 
 
 だがしかし、その中の誰しもが、割り切ることを拒否していた。
 
 ミセリ、ジョルジュ、そして。
 
 
ξ )ξ(もっと……強く……!)
 
 豹変した友と、ただひたすらに救われていただけの自分が許せなくて。
 
 強く、強く願った。
 
 傷痕と同時に生まれた、戦う理由。
 
 想いは一つ、救いたいだけ。
 
 いつか再び、邪神と対するその時までに。
 
 

 

90 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:54:24.77 ID:tW1pNTwO0
 
 

 
 
モ*゚ー゚シ『あ……』
 
从 ゚∀从「ん? どした?」
 
モ*゚ー゚シ『こわいのが、なくなったよ』
 
从 ゚∀从「……そっか、よかったな」
 
 モショの告げた言葉。
 どうやら一先ずは、落ち着いたようだ。
 
 向かった一同の顔を見るまでは、ハインは安心できなかったが。
 
从 ゚∀从(うまく……やってくれたか……)
 
 なぜか不思議と、そう思えていた。
 
モ*゚ー゚シ『おねーちゃん』
 
 

 

91 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:56:14.01 ID:tW1pNTwO0
 
 
モ*゚ー゚シ『つづき!』
 
 ハインはモショに、絵本を読んでやっている最中だった。
 その屈託のない笑みと、純粋に感情を表す様は、本当に人の子と変わらない。
 
从 ゚∀从「あぁ、今読んでやるからな」
 
 再び、ハインは朗読を始めた。
 
 幾分か、声が優しくなった事に気がついたのは、モショだけだった。
 
 
 
 
 だが。
 
 
 
 
 無情にも、安らぎの一時は。
 
 
 

 

93 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:58:05.58 ID:tW1pNTwO0
 
 
 「ここか」
 
 「あぁ、奴の呟いた古武術の流派、間違いない」
 
 「あれだけで特定をするとは……我が弟ながら、流石だな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(´<_` )「なぁに、神主ってことも、ポイントさ」
 
( ´_ゝ`)「優秀な弟をもって、兄は嬉しいぞ」
 
 傍から見れば、仲良く語らう普通の兄弟であろう。
 
 しかし、赴く理由は、ただ一つ。
 
 
( ´_ゝ`)「さて……」
 


96 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/25(日) 00:00:28.90 ID:pz5colAb0
 
 
 
( ´_ゝ`)「リターンマッチと洒落こむか、弟者」
 
 
(´<_` )「OK、兄者」
 
 
 玖都留(クトル)研究所で退けた、流石兄弟。
 
 モナーは、不在。
 
 
 残っているのは───
 
 
 
 
 静かな神社の昼下がり。
 
 
 暗雲が、立ち籠めた。
 
                         続く。


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