──金輪奈落力を籠めよ
──胸奥の意想をのせよ
──さぁ、語るには飽いた
──悲愴極まる道化の舞台
──今こそ幕を、下ろす時
2 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:29:47.31
ID:tW1pNTwO0
闇に降り立つ、双頭の猛犬。
蒼翠の鬣(たてがみ)を靡かせ、凛と佇む。
見つめる先は、主の敵。
それは即ち、己が敵。
──我、汝と共に在り──
、
( ゚∀゚)『ペルソナァ……!』
紡げ。己が道を共に往く、盟友の名を。
、
( ゚∀゚)『オルトロス!!』
──我は汝と、共に往こう──
『オォォォォォォォォォォォォォォン!!』
思いを、咆哮に乗せて。
、
( ゚∀゚)「……行くぜ!」
さぁ────
4 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:31:56.48
ID:tW1pNTwO0
────その牙で断て。
悪に踊らされた、悲しき人形の糸を───
( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
第15話『引き継がれし力』
7
名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:33:46.64
ID:tW1pNTwO0
対峙する、魔獣と邪神。
睨み合う、人とヒト。
ζ(゚、゚*ζ「……」
( ゚∀゚)「……」
沈黙が彼等を包む。
それと同じ様に、広がる不滅の黒は未だ、ゆっくりと。
( ゚∀゚)「…………ッ」
黒が近づく。
J・Fを呑みこんだ、黒が。
(#
゚∀゚)「やらせるかよォッ!」
8 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:36:07.30
ID:tW1pNTwO0
( ゚∀゚)『ファイアブレス!!』
『グアアアァァッ!!』
ジョルジュの叫びに、オルトルスが咆哮を上げ応える。
片方の頭を持ち上げ、その口端からは紅蓮の炎の一片が。
そして、放たれる。
オルトロスの口から伸びる、燃え盛る強烈な炎の嵐。
ぶつかり合う、赤と黒。
(#
゚∀゚)「もう俺は! 恐れねぇ!!」
炎に、誓いを重ね。
黒を赤に、染めていく。
10 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/01/24(土) 22:37:49.23 ID:tW1pNTwO0
(#
゚∀゚)「もう俺は! 迷わねぇ!!」
炎に、信念を重ね。
ζ(
、;ζ「……くっ……!」
尚も紅蓮の炎は、その勢いを増していく。
(#
゚∀゚)「もう……俺は……!」
それは願い。それは希望。
絶対とは言い切れない、実に不確かなモノ。
だが。
ジョルジュは叫ぶ。
誓いと、信念の上に───
11 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:39:25.22
ID:tW1pNTwO0
、
(#
゚∀゚)「絶対に!! 誰も死なせねぇぇぇええええぇぇぇぇぇ!!!」
絶対の意思を重ね。
色濃く……
強固に……
灼熱の如く!
、
(# ゚∀゚)『うおおおおおおぉぉぉぉぉおおおあああああ!!!』
12 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:40:58.84
ID:tW1pNTwO0
不滅の黒を、灼熱の炎が押し返した。
薄れ行く闇。引き裂くは、赤。
ζ(
、
;ζ「…………!」
剛炎はそのままデレへと襲いかかる。
アカ・マナフが、翼を閉じてデレを覆った。
その翼に触れる前、アカ・マナフによって形成された魔力壁に炎がぶつかる。
ジョルジュの絶対の思いをのせた炎は二つに分かれ、虚空へと掻き消えた。
( ゚∀゚)「…………」
改めて認識される、邪神の強大な力。
デレの様子は当初の余裕が見えず、不安定さを見せてはいたが。
やはり。
( ゚∀゚)(そう簡単には……いかねぇ、か……)
13 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:42:35.02
ID:tW1pNTwO0
佇むアカ・マナフを見つめるジョルジュ。
底無しの闇の中央に浮かぶ、汚れ無き一点、白き仮面。
その裏にある顔は、果たしてどんな感情を浮かべているのか。
ふと。
ジョルジュの視界に、何かがぱさりと。
静かに地に落ちたそれは。
16 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:44:25.67
ID:tW1pNTwO0
青く、微かに焦げた、布。
( ゚∀゚)「…………」
ジョルジュはそれに歩み寄る。
見覚えのある、青い帽子。
思い出す。その帽子をかぶっていた、生意気な妖精。
ジョルジュがそれを、拾い上げた。
(
∀ )(……J・F……)
それは、J・Fの帽子。
人との触れ合いを求め、人の為に散った仲魔の形見。
17 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:46:37.96
ID:tW1pNTwO0
しっかりと握りしめ。
、
( ゚∀゚)
力強く、敵を見据え。
、
( ゚∀゚)(お前がくれた……この力……)
形見を胸に、押し付けて。
、
(# ゚∀゚)(絶対に……無駄にはしねぇ……!)
18 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:48:10.19 ID:tW1pNTwO0
ζ( 、
#ζ(どいつもこいつも……)
ζ( 、 #ζ(私の邪魔ばかりする……!)
ζ( 、
#ζ(何故……どうして……全部ツンが悪いのに……!)
尚もその心は黒く、黒く。
ζ(
、 #ζ(うざい……うざい! うざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい!!!)
19 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:50:15.11
ID:tW1pNTwO0
ζ(゚、゚#ζ『アカ・マナフ!!』
ζ(゚、゚#ζ『燃やし尽くせッ! マハラギオン!!』
アカ・マナフが両の手を前へ伸ばす。
一瞬の、静寂の後。
輝く、真紅の爆光。
それと共に放たれた、灼熱の大火炎。
先のオルトロスが放った火炎よりも、遥かに───
ζ(゚、゚#ζ「死ねッ! 一人残らず! 死んでしまえッッ!!」
21 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:52:04.85
ID:tW1pNTwO0
ミセ; −
)リ(いけない……強すぎる……!)
後一歩。後少しで、ブーンを呼び戻せる。
その手前での、強力無比なデレの攻撃。
ここでミセリが防御に回れば、ブーンは手遅れになりかねない。
だからと言って、このままでは───
ミセ;゚−゚)リ「───!」
しかし、その危惧は。
、
( ゚∀゚)
徒労以外の、何ものでもなかった。
23 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:54:07.97
ID:tW1pNTwO0
ξ;゚听)ξ「ジョルジュッ!!」
ツンにもわかる。
デレの放ったマハラギオンが、如何に強力であるかは。
だが。
ξ;゚听)ξ「……!」
炎を遮るようにして立つジョルジュの背中は。
『俺に……任せろ!』
ツンにそう言っているように見えていた。
25 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 22:55:48.12
ID:tW1pNTwO0
迫る灼熱の火炎。
それでもジョルジュは、微動だにせず。
、
(#
゚∀゚)『オルトロス!』
紡ぐのは、盟友の名。 共に炎を、迎え撃つ。
だが、オルトロスの持つ力の中で、広範囲攻撃を迎え撃つ力はない。
先のファイアブレスでは、間違いなく圧されてしまう。
(#
∀
)(…………)
そんな事は当然、ジョルジュには解っていた。
だが、退かない。
退くわけには、いかない。
、
( ゚∀゚)(……力を……貸してくれ!)
迫る火炎に、それより弱い火炎では対抗できない。
それならば。
26 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 22:58:06.12
ID:tW1pNTwO0
思い出される、ペルソナの相性の事。
オルトロスとアカ・マナフの相性はジョルジュの知る所ではないが……
今は実に、単純だ。
炎には、水。 即ち、冷気。
握りしめるJ・Fの帽子。
その中に、微かに宿る力の欠片。
J・Fが残した、生きた証。
、
(# ゚∀゚)「お前の力、確かに!」
ペルソナからペルソナへ。
力は確かに───引き継がれた!
、
(# ゚∀゚)『ブリザードブレス!!』
生まれ出でる、極寒の氷嵐。
28 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/01/24(土) 22:59:53.79
ID:tW1pNTwO0
『オオオォォォォォォォォォォォォォン!!』
火炎を放った時とは逆の口から、咆哮とともに放たれる。
ζ(
、 ;ζ「なに……!」
三度ぶつかる、力と力。
、
(;゚∀゚)「! ちぃッ!」
火には水。 そして、逆も然り。
互いが弱点に成り得る、炎と冷気。
ジョルジュの感情、オルトロスと、J・Fの魔力を重ねた冷気。
重なる力は、本来以上の力を引き起こす。
だが、それでも。
力と力は、拮抗していた。
29 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:01:38.70
ID:tW1pNTwO0
恐るべきはやはり、邪神の力。
ジョルジュの新しい力と、感情、そしてJ・Fの力。
それらを全て籠めて、やっと互角。
一方のアカ・マナフは、術者デレが不安定な状態。
不完全な形で放たれたにもかかわらず、あまりに強大な一撃。
、
(;゚∀゚)「く……おおおおおぉぉぉぉぉ……!」
ζ(゚、゚#ζ「なんで……なんで死なないのよッ!!」
押せない。引かない。
完全な、五分。
だが、それは似ていた。
そう。
J・Fの時と。
30 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:03:28.62
ID:tW1pNTwO0
全力を籠めて放つジョルジュ。
一方、自身は未だ不安定ながらも、
耐え続けるジョルジュに苛立ちを覚え始めたデレ。
憎しみは更なる力を送り込む。
、
(;゚∀゚)「ぐおっ!?」
徐々に徐々に、圧される冷気。
力の均衡が、崩れようとしていた。
ζ(゚、゚#ζ「生意気なのよ……どいつも……こいつも!!」
最早ツンだけではない。
自分以外の人間全てに、負の感情の矛先を向けていた。
ζ(
、
#ζ「死ね! 死ねッ!! みんな、死んでしまえッッ!!」
呪いの言葉を、自分以外の全てへ向けて。
皮肉にもそれが、ペルソナへ更なる力を送り込む糧と成る。
31 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:05:07.67
ID:tW1pNTwO0
なんと悲しい、少女なのだろう。
劣等感から生まれた小さな亀裂から這い出た、ドロドロの闇。
いつのまにか闇(それ)は、心の全てを染めていた。
なんと孤独な、少女なのだろう。
心から許せる人に、心で触れられる人に、出会えなかった。
一人でも、頼れる人がいたのなら。
きっと彼女は、心から笑えたはずなのに。
強大な力を手に入れても、結局彼女は、一人きり。
だから。
だから、彼女は。
負けるのだ。
33 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:06:58.41
ID:tW1pNTwO0
『炎の壁!!』
圧されていた冷気と火炎の挟間に突如生まれた、赤い壁。
、
(#
゚∀゚)「!」
ジョルジュは、振り向かない。
その力を呼んだ者を、知っているから。
ミセ;゚ー゚)リ「……お待たせ……しました……」
疲弊しきったその声とは裏腹に、汗に滲むその顔は、満足気な笑顔。
ミセ;゚ー゚)リ(今度は……間に合ったよ……)
ξ;凵G)ξ「…………」
ミセリに肩を貸し、涙を流すツン。
見つめる先には、ジョルジュと、そして。
、
( ゚∀゚)「……ったく……心配かけんじゃねぇよ」
視線を外さずに、尚も力を放ったままに、呟いた。
36 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:08:54.27
ID:tW1pNTwO0
「ごめんお」
聞き慣れた声が、ツンとジョルジュの耳に妙に馴染んだ。
ミセリの生んだ炎の壁により、デレのマハラギオンの勢いは衰えている。
力は再び、均衡を……
いや。
僅かにジョルジュが、押していた。
後、一手。
それで、全てが───
37 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:10:33.60
ID:tW1pNTwO0
紡げ。 仲間の為に。
『ペルソナッ!』
放て。 終わらせる為に。
( `ω´)『永遠の……』
染めろ。 悲しき少女の、汚れた心をその色に。
( `ω´)『白おおおおおおぉぉぉぉぉおお!!!』
40 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:12:44.24
ID:tW1pNTwO0
煌く、ブーンの放つ汚れのない純白の光。
デレとは、真逆の力。
闇を照らす聖なる光、永遠の白。
『…………チッ』
アカ・マナフに浮かぶ、明らかな焦りの色。
ブーンのペルソナ、スヴァローグから放たれた十数本の帯状の白炎(びゃくえん)。
聖なる炎が、その色すらも変えてアカ・マナフに降り注いだ。
その刹那。
ジョルジュの力を阻む炎も、消え去った。
、
(# ゚∀゚)『
お お お お お ぉ ぉ お お ! ! ! !
(#
`ω´) 』
43 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:14:14.19
ID:tW1pNTwO0
純なる想いをのせた絶対零度の息吹と。
汚れ無き浄化の白炎が。
デレとアカ・マナフを、捉えた────
46 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/01/24(土) 23:15:53.92
ID:tW1pNTwO0
※
/
゚、。メ/「もう、いいだろう」
( ´∀`)(…………)
/ ゚、。メ/「しゃべりすぎたな」
/
゚、。メ/「少々熱くなりすぎたようだ」
( ´∀`)(……ふん……)
出来得る限りの情報を。
そう考えていたモナーだったが。
突如ダイオードは、会話の閉幕を告げた。
互いに構え、対峙する。
モナーは既に、足からは痛みも引き、万全。
次は、不覚を取らない。
48 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:17:48.11
ID:tW1pNTwO0
対する、ダイオード。
モナーの手の内は、概ね掴んだつもりでいた。
懐にさえ入らせなければ、勝機は見えている。
次は、仕留める。
ざり、と、足が砂を噛む音。
モナーが左足に体重を乗せた、瞬間。
/
゚、。メ/『ペルソ───』
ダイオードがペルソナを呼ぼうとして。
そのまま、硬直した。
( ´∀`)(………なんだ……?)
50 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:20:29.47 ID:tW1pNTwO0
/
゚、。メ/「…………」
/
゚、。メ/「勝負は預けた」
一言。
ダイオードがそう言ったと同時に、空間を作る為割れていた黒い雲が、突如。
(;´∀`)「なっ!?」
手と手が合わさる様に、閉じた。
モナーの視界が闇に覆われる。
そしてその次に、強風が巻き起こる。
モナーは右腕を上げて口と鼻に腕をつける。
巻き起こる、砂塵。 吹き荒れる、闇。
雲自身が、まるで意思をもっているかのように。
VIP高校を覆っていた巨大な雲は、瞬く間に掻き消えた。
51 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:22:20.87
ID:tW1pNTwO0
( ´∀`)(…………)
晴れた、校庭の片隅で。
立っているのはモナー、ただ一人。
( ´∀`)(……退却? ……なぜだ……?)
浮かぶ疑問も、一先ずは。
( ´∀`)(……皆さん!)
取るべき動(どう)は、仲間との合流。
モナーはすぐに、昇降口へと駆け込んだ。
陽はすでに天上。校舎の割れた窓からは、柔らかな陽光が注いでいる。
しかし、石化した生徒達は、未だに。
(;´∀`)(……これは……)
異様な光景は、雲が去った今でも明らかに。
安心はできない。
上階から感じられているペルソナの波動も、そうだ。
それらはモナーを急かせるに、十分すぎる理由(もの)達だった。
54 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:24:35.60
ID:tW1pNTwO0
※
迸る、閃光。
冷気が邪神を包み込み、十数本の白炎の流星が降り注いだ。
合わさった二つの力は、室内の半分を覆う程の水蒸気を生み出す。
(;゚∀゚)「ハッ……ハッ……!」
(;^ω^)「ハァ……ハァ……お……」
小さく声を漏らした後、ブーンが膝をつく。
黄泉からの帰還は果したが、体は万全ではないようだ。
ξ;゚听)ξ「ブーン!」
すかさず、ツンが駆け寄った。
ブーンの隣にしゃがみ込み、大丈夫か、と。
(;^ω^)「だ、大丈夫だお……」
肩で息をし、額に汗を滲ませながらも、ツンを安心させるように言った。
57 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:26:36.73
ID:tW1pNTwO0
ミセ*゚−゚)リ「黄泉還り(ヨミガエり)後は、あまり無理をなさらないでください」
言ったミセリは逆に、幾分か落ち着いた様子だ。
石化していたことも、ブーンに負担を与えていた。
直後にあれだけの力を放ったのだから、立っていられないのは当然と言える。
消耗した体力までは、ペルソナでは回復することはできない。
やがて。
薄れて行く、水蒸気。
白が覆う面積は段々と少なくなっていき……
その中央には、黒い影。
いや、影でもシルエットでもない。
黒こそが、全て。
邪神、アカ・マナフ。
60 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:28:25.13
ID:tW1pNTwO0
ぐったりとしたデレを両手で抱きかかえ、佇んでいた。
不気味な白い仮面を、ブーン達に向けて。
( ゚∀゚)「……てめぇ……」
一歩。ジョルジュが前に出た。
(#
゚∀゚)「……てめぇが……黒幕なんだろ?」
『…………』
(#
゚∀゚)「沈黙は正解と取るぜ?」
『だとしたら───』
震え。
手が、体が、鼓膜が、脳が、心が。
腹の底に響くだとか、そんな話ではない。
邪神の一声。
それだけで、まるで世界が揺れた様に、刹那の震えと悪寒が、ブーン達に奔った。
63 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:30:57.06
ID:tW1pNTwO0
『どうする、つもりだ?』
明らかに、己が追い詰められたこの状況。
それなのに、煽る。 それなのに、この余裕。
術者は意識を失っているというのに。
邪神の力は、自身が掲げる闇の様に、底が見えない。
だからといって。
、
(# ゚∀゚)「ブッ消すだけだよ!!」
退くわけにはいかない。
、
(#
゚∀゚)『ペルソナァァァッ!』
──これが、最後だ。
このクソッタレな黒い木偶人形を、消し去ってやる!──
『オオォォォォォォォォォォン!!』
双頭を持ち上げ、ジョルジュの怒りを咆哮に変え、猛る。
66 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:34:50.80
ID:tW1pNTwO0
オルトロスの足元から、青く細い電流が、幾重にも。
ばちり、ばちりと重なる毎に、猛犬の眼前に形作られていく。
こう、と、一瞬高く、風を揺らす様にオルトロスが吼えた。
生まれ出でた青い雷撃、そしてその束をその一声で圧縮させる。
煌々と輝く、一丸の青い雷球が現れた。
『ほう……』
(#
゚∀゚)「これで! 終わらせてやる!!」
洗礼され、研ぎ澄まされた魔力の塊。
属性を持たぬ、青き光球。
だがしかし、ブーンが放った、『浄』の火とは、完全に異。
その火は全てを『滅』とする、断罪の力。
68 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:36:54.77 ID:tW1pNTwO0
、
(#
゚∀゚)『メギ───』
ジョルジュがそれを、放つ直前。
デレの腹部に置かれた黒きトラペゾヘドロンが、一瞬ブレた。
同時に、アカ・マナフの姿が揺らぎ……
黒の邪神と悲しき人形は、虚空へと消え去った。
(;゚∀゚)「なっ!?」
突然の出来事に戸惑い、踏鞴(たたら)を踏む。
行き場を失った滅の光球は、オルトロスの眼前で、虚しく霧散した。
呆然と、アカ・マナフが立っていた場所を見つめる四人。
いつの間にか。
室内には、陽の光が降り注いでいた。
70 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:38:40.53
ID:tW1pNTwO0
(;´∀`)「皆さん!」
そこへやっと、モナーが到着した。
彼の上げた声に一同は少し驚き、振り向く。
( ゚∀゚)「あ……」
かくんと、ジョルジュの膝が折れた。
度重なる死との邂逅。自身も、そして友たちも。
極限の緊張が解かれた今、糸が切れたようにジョルジュは前に。
ぽふ。
( ゚∀゚)「あ……え……?」
しかし、彼が顔を埋めたのは固い床とは全くの逆。
ミセ*゚ー゚)リ「……お疲れ、さまです」
汚れを知らぬ、純心の巫女の。
暖かく、包み込むような大らかさと柔らかさを兼ね備えた。
ミセリの、胸の中だった。
74 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:40:39.31
ID:tW1pNTwO0
(;゚∀゚)「おぱっ!? え、えええええ?!」
驚き、後ずさろうとしたが、体は言う事を聞かなかった。
声だけ上げて慌てるジョルジュにクスリと笑い、ミセリはジョルジュの頭を撫でた。
じんわりと、温かい光がジョルジュを包み込む。
いつの間にかミセリの背後に現れていたサラスヴァティー。
彼女も優しげに、微笑んでいる。
デレの火炎に圧された際に、吹き荒れた熱風によって、
ジョルジュの体には軽症の火傷がいくつもできていたのだ。
ミセ*゚ー゚)リ「今は、休んでください」
ミセリも、消耗しているだろうに。
優しい巫女は真っ先に、皆を救ったジョルジュを労い。
ミセ*
ー )リ、
皆を救い、闇へ呑まれた妖精の事を想い、涙を流した。
75 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:42:30.31
ID:tW1pNTwO0
そんな二人を見て、つられ微笑むブーン。
隣にいたツンも、僅かに笑みを浮かべた。
一旦の安心がもたらした、微笑み。
しかしすぐに、その微笑みは消え去ってしまう。
ξ
)ξ(……J・F……)
自分に力がない所為で、命を落とした仲魔のこと。
それに加えて。
ξ
)ξ(…………デレ…)
友と思っていた者の、強烈な悪意。
その全ての発端が、自分だったと言うのだ。
そして彼女を、救う事が出来なかった。
ξ
)ξ(私は……何もできなかった……)
79 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:44:27.48
ID:tW1pNTwO0
敵の力が、強大すぎた。仕方のない、どうしようもないことだ。
目の前で大切な人を殺され、仲魔を殺され。
そして、大切な人を救ってもらい、自分自身も救ってもらわれ。
救うと誓った友すらも、自分では何も、どうすることもできなかった。
その中で、果して人は仕方がないと割り切れるものだろうか。
( ^ω^)(……ツン?)
微かに震えるツンに、ブーンが気付いた。
彼女の手は固く、しっかりと握り締められている。
己の無力さを、恨んでいた。
どうしようもない、力の差に。
その中で何か、何か一つでもできた事はなかったのか、と。
80 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:46:55.94
ID:tW1pNTwO0
────……
わからない。思いつかない。
どうすれば、何をすれば、あの時ああしなければ。
浮かんでは消え、浮かんでは消え。
都合良く、無理矢理に創り上げた『if』ですら、音を立てずして朽ち果てる。
ここまで。
ここまでは自分は、無力な子供だったのか。
『だから私は、モナーさんの言ったことを信じて、できることをするわ』
あの夜、迷っていたブーンに言った、自分の言葉。
何が、できることをする、だ……
自問自答を幾許も繰り返しても、できることなど見つからない。
83 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/24(土) 23:48:55.06
ID:tW1pNTwO0
『たとえ死んだって…何もしないまま死ぬよりはマシよ』
嘘だ。
甘い、甘っちょろい、子供だ。
戦ってるつもり、護ってるつもり。
その程度のことで、自分は何かをしていると思いこんでいた。
強く。もっと、強く。
私達を護ったジョルジュのように。
ブーンを救った、ミセリさんのように。
強く───………
89 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:52:14.91
ID:tW1pNTwO0
一つの大きな戦いの、終局。
色々な事が、ありすぎた。
邪神アカ・マナフが残した傷痕は、未熟な彼らの心に深く、大きく。
だがしかし、その中の誰しもが、割り切ることを拒否していた。
ミセリ、ジョルジュ、そして。
ξ
)ξ(もっと……強く……!)
豹変した友と、ただひたすらに救われていただけの自分が許せなくて。
強く、強く願った。
傷痕と同時に生まれた、戦う理由。
想いは一つ、救いたいだけ。
いつか再び、邪神と対するその時までに。
90 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/01/24(土) 23:54:24.77
ID:tW1pNTwO0
※
モ*゚ー゚シ『あ……』
从
゚∀从「ん? どした?」
モ*゚ー゚シ『こわいのが、なくなったよ』
从
゚∀从「……そっか、よかったな」
モショの告げた言葉。
どうやら一先ずは、落ち着いたようだ。
向かった一同の顔を見るまでは、ハインは安心できなかったが。
从
゚∀从(うまく……やってくれたか……)
なぜか不思議と、そう思えていた。
モ*゚ー゚シ『おねーちゃん』
91 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/01/24(土) 23:56:14.01
ID:tW1pNTwO0
モ*゚ー゚シ『つづき!』
ハインはモショに、絵本を読んでやっている最中だった。
その屈託のない笑みと、純粋に感情を表す様は、本当に人の子と変わらない。
从
゚∀从「あぁ、今読んでやるからな」
再び、ハインは朗読を始めた。
幾分か、声が優しくなった事に気がついたのは、モショだけだった。
だが。
無情にも、安らぎの一時は。
93 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/01/24(土) 23:58:05.58
ID:tW1pNTwO0
「ここか」
「あぁ、奴の呟いた古武術の流派、間違いない」
「あれだけで特定をするとは……我が弟ながら、流石だな」
(´<_` )「なぁに、神主ってことも、ポイントさ」
( ´_ゝ`)「優秀な弟をもって、兄は嬉しいぞ」
傍から見れば、仲良く語らう普通の兄弟であろう。
しかし、赴く理由は、ただ一つ。
( ´_ゝ`)「さて……」
96 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/01/25(日) 00:00:28.90
ID:pz5colAb0
( ´_ゝ`)「リターンマッチと洒落こむか、弟者」
(´<_` )「OK、兄者」
玖都留(クトル)研究所で退けた、流石兄弟。
モナーは、不在。
残っているのは───
静かな神社の昼下がり。
暗雲が、立ち籠めた。
続く。
TOPへ 戻る 次へ