4 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 22:38:26.94
ID:Wf1hZCVd0
COMP(コンプ)───
悪魔召喚プログラムをインストールされた悪魔召喚機。
現代における悪魔召喚師、即ちデビルサマナーには必需品である。
その形は様々で、トソンの場合は───
(゚、゚トソン『天使、召喚』
携帯電話のディスプレイからまばゆい光が迸る。
光はやがて集束し、一筋の矢と成った。
(゚、゚トソン『……GO!』
瞬間。
光矢(こうや)は天に放たれた。
それも束の間、まるで空に鏡が有ったかの様に光矢は反射し、トソンの眼前に落ちる。
地に降りた光矢は先端から徐々に潰れ、膨れ上がり、金色の渦を巻きながら。
人の形を形成しだした。
7 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/04/15(水) 22:40:44.55
ID:Wf1hZCVd0
(゚、゚トソン「貴方達の目的は知りませんが……」
人のシルエットだったものが、足元から徐々にその姿を現して行く。
機械的な金色のブーツ、その上に続く肉体は逞しさに満ち溢れ、美しさすら感じさせた。
服なのか、肉体なのか、その性質は人の想像が及ぶところではないが紫に輝き。
背中から流れる二枚の翼は、優雅とは程遠い鋭利なフォルムをしていた。
現れ出でた、平和と正義の天使。
(゚、゚トソン「葛葉(くずのは)の名の下に、お帰り頂くプロセスです」
トソンの声に合わせ、天使がその顔を上げた。
目や口は無く、自身の象徴とも呼べる、煌々と輝く大きな一つ星。
その名は、主を崇める意───
(゚、゚トソン「行きましょう メルキセデク」
デビルサマナー。
果たして、その力は。
8 名前: ◆iAiA/QCRIM
[] 投稿日:2009/04/15(水) 22:42:09.68 ID:Wf1hZCVd0
( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
第17話『ペルソナvsデビルサマナー』
12 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 22:44:00.11
ID:Wf1hZCVd0
(,,;゚Д゚)「な、なんだ……こりゃ……」
対峙するトソンと流石兄弟の横で、ギコは状況を理解できずにいた。
それもそのはず、彼にはトソンの仲魔も流石兄弟のペルソナも見えていない。
しかし、異様な雰囲気だけはその身に感じていた事が、さらに彼を混乱させていた。
そんなギコに構わずに、三人は静かに睨みあっていた。
戦いは既に、始まっている。
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」
視線の先には、メルキセデク。その後ろに捉えるは、デビルサマナートソン。
トソンはゆっくりと腕を戻し、胸のポケットにCONPを仕舞う。
( ´_ゝ`)(まさか……デビルサマナーの登場とは……な)
(´<_` )(噂には聞いていたが……葛葉とは……)
葛(クズノハ)。
葛の一文字はそれを現す記号であり、正確には葛葉と表記される。
デビルサマナーを生業とした者達が集う裏世界の集団だ。
その歴史は平安時代にまで遡ると言われているが、実の所は謎に包まれている。
15 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 22:46:28.44
ID:Wf1hZCVd0
ペルソナ使いとは違い、その身に悪魔を降魔させることはないので、
彼等に比べると別段身体能力が向上しているわけではない。
しかし、悪魔を使役するなら当然、それなりの実力を伴わなければいけない。
それに加え、悪魔はサマナーと完全に独立して行動する。
つまりは、サマナー一人で多対の状況を生み出すのだ。
ペルソナ使いであれば、術者から離れて出現することがない為に、注意は術者のみに絞れば良い。
よってこの状況は。
( ´_ゝ`)「……弟者 俺が天使をやる」
(´<_` )「わかった」
そうせざるを得ないと言う事だ。
(゚、゚トソン「……ここまできてこんな事を聞くのは妙なセオリーですが」
(゚、゚トソン「セルフ的にお帰りくださる気はありませんか?」
交互に二人を見つめ、そんな事を言う。
やはり争わない事が最善だと思うのだろう。
だがそれも、当然の事のように。
( ´_ゝ`)「悪いが……そういうわけにはいかないな」
18 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 22:49:17.31
ID:Wf1hZCVd0
否定の言葉。
それが戦いの火蓋を切った。
同時に駆ける、兄者と弟者。既にペルソナは発動を済ませている。
二人を見て、トソンは無表情のまま短く、
(゚、゚トソン「メルキセデク」
指先を、兄者をそっと向け、
(゚、゚トソン「任せます」
一条の光と成り、メルキセデクが超低空で飛翔した。
( ´_ゝ`)「カストル!」
即座にペルソナで受け止めようと、槍を大地と並行に前面へ構える。
一切の躊躇無く、メルキセデクが拳を突き出した。
激突する、槍と光の拳。
火花と共に、光の粒子が華やかに舞う。
( ´_ゝ`)(……なかなかに、重いな……)
21 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 22:53:16.66
ID:Wf1hZCVd0
(゚、゚トソン「ジャーナリストさん」
(,,;゚Д゚)「あ、え?」
(゚、゚トソン「出来るだけ下がっていてほしいセオリーです」
その言葉を言い終えた瞬間、トソンがギコと逆方向に跳んだ。
弟者もそれを追うように駆ける。
(´<_` )「すぐに終わらせるぞ!」
吐き捨て、
(´<_` )『ポリュデウケース!』
ペルソナを先行させ、速攻を狙う。
白刃を頭上に掲げ、トソンに迫り。
(´<_` )『ツインスラッシュ!』
青白い軌跡を描き、振り下ろす。
しかしそれでも、トソンは落ち着いた表情で。
(゚、゚トソン「甘いです」
右足で着地し、そのままの反動で右足を蹴り上げた。
23 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 22:55:49.26
ID:Wf1hZCVd0
鋼同士がぶつかる、衝突音。
(´<_`;)「何だとっ!?」
ポリュデウケースの大剣は、何も斬り落す事無く止められた。
トソンが蹴り上げた、右足によってだ。
スネの部分で確かに、刃と足は火花を散らし、互いの動きを止めている。
(´<_` )(何か特別な物を仕込んでいるのか……)
そう考えるのが自然だろう。
生身の人間なら簡単に足を切り落としているはず。
それどころか、鉄程度なら両断できる程の斬撃だ。
(゚、゚トソン「破ッ!」
右足と刃を交差させたままに、左足を蹴り上げた。
(´<_`;)「しまっ……!」
ポリュデウケースの右腕に、トソンの左足が直撃する。
(´<_`;)「ぐおっ!」
瞬間、鈍い痛みが弟者の右腕を襲った。
24 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 22:58:16.92
ID:Wf1hZCVd0
弟者が右腕を押さえながらペルソナを引かせ、距離を取る。
(゚、゚トソン「なかなかに、頑丈ですね」
相も変わらぬ、無表情。
弟者の腕は折れてはいない。打撲程度だ。
しかしそれでも、ポリュデウケースは物理攻撃には少々耐性がある。
それなのに、このダメージ。明らかに普通ではない。
(´<_` )「足癖の悪い奴だ」
腕から手を放し、冗談を飛ばす。
痛みが引いたのか、それともいよいよ戦闘に意識を向けたのか。
弟者の雰囲気が、変わった。
対するトソンも、右足を少し下げ、構える。
そこにきて、弟者はトソンの足の異変に気付いた。
(´<_` )(……なんだ……あの光は……)
トソンの両足───正確には膝から下が、ぼんやりと緑色の光を放っていた。
(´<_` )(カラクリはわからんが……厄介な物だ)
25 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:00:39.42
ID:Wf1hZCVd0
ざぁ、と、木が風に揺れた。
(゚、゚トソン「油断は禁物です」
それは、弟者をたしなめる様に。
(゚、゚トソン「私は女である前に───」
それは、己の力を示す様に。
(゚、゚トソン「葛葉の、剣の一つなのです」
葛葉の一刃であると。
それが誇りであると。
力強く告げ、翠緑の帯を描きながら、地を蹴った。
28 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:03:02.61
ID:Wf1hZCVd0
※
( ´_ゝ`)「ハァッ!」
風を裂き、鋭い槍の一撃を放つ。
しかしそのどれもが、メルキセデクの拳によって弾かれていた。
同じ様にメルキセデクが放つ拳も、カストルは巧みに捌いている。
接近戦は、互角に見えた。
( ´_ゝ`)(なかなか……だがッ!)
カストルが頭上から槍を振り下ろす。
メルキセデクは腕を交差させそれを受け止めた。
幾度も繰り返された攻防だったが、そこへ。
( ´_ゝ`)「むんッ!」
兄者自ら、懐に拳を叩きこんだ。
物理攻撃に長けたカストルを降魔させている兄者の一撃は、常人の比ではない。
メルキセデクは体をくの字に曲げ後方へ飛び、倒れ込んだ。
29 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:05:28.32
ID:Wf1hZCVd0
( ´_ゝ`)「単調なんだよ 攻撃も、守りもな」
よろめきながら起き上る天使に言い放つ。
兄者の言葉を理解したのかは不明だ。
しかし、ダメージは確実にある。
メルキセデクが片手を腹部に当てると、拳が金色の光を生んだ。
その動きに、一瞬兄者は警戒をしたものの、すぐに。
( ´_ゝ`)「回復などさせん!」
( ´_ゝ`)『カストル!』
それが回復であると判断し、すぐに追い打ちの一撃を放とうと。
( ´_ゝ`)『二段突き!!』
馬上から突き出される連撃。
メルキセデクはすぐに横へと跳んだ。
だがその動きに先の鋭さは無く。
続け様に放たれた二撃目が、翼を貫いた。
31 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:08:09.80
ID:Wf1hZCVd0
砂塵を巻き起こしながら着地する。
翼は大きく欠け、ヒビが走っていた。
やはり全身が本体なのだろう、それもダメージとなったようだ。
兄者はさらに、追撃を仕掛ける。
( ´_ゝ`)「決めさせてもらうッ!」
大きく、槍を横脇に構えるカストル。
それを見てメルキセデクが両腕を交差させ、力を込める。
( ´_ゝ`)「受け止める気か!? 無駄なんだよッ!!」
そのまま、消し飛ばしてやる。
兄者はそのつもりで、一撃を放とうとしていた。
しかし、メルキセデクの動きが意味するのは守りではない。
象徴の一つ星が、力強く輝いた。
(;´_ゝ`)「なにッ!?」
気付いた後には、時すでに。
力強く両腕を左右に広げ、放たれた。
33 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:11:16.36
ID:Wf1hZCVd0
(;´_ゝ`)「ぐおっ!?」
メルキセデクが生んだ突風が、兄者を襲った。
その中に、時折混じる風刃が。
(;´_ゝ`)「マハガル……いや、マハガルーラか!」
兄者の扱うマハガルよりも一つ上。
突風と鎌鼬を生み出す、マハガルーラ。
( ´_ゝ`)「ちっ……だが、俺にこの手は効かんぞ!」
突風に阻まれ追撃の足は止まったが、鎌鼬に刻まれることはなかった。
ジョルジュ達と戦った時に、クーのガルが効かなかった事と同じ道理だ。
しかし尚も、突風は止む事はない。
( ´_ゝ`)「……悪足掻きか……? ならばッ!」
( ´_ゝ`)『行け! カストル!!』
その場に留まり、ペルソナのみを向かわせる。
ペルソナならば、届く筈だと。
その時。
メルキセデクの肩に、一つの影が重なった。
35 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:14:16.91
ID:Wf1hZCVd0
※
(´<_` )『ジオッ!』
迫るトソンに向け、一筋の雷撃を放つ。
しかしそれはトソンを捉えること無く、虚しく地に落ちた。
ギコから離れた時よりも、段違いの速さで駆けている。
(´<_` )「ちぃッ」
緑の軌跡を描き、弟者の脇腹を目掛け放たれる右足での蹴り。
それを咄嗟にポリュデウケースの剣で受け止める。
またも響いた、金属音。
ずしりと、弟者の腕にもその重みが伝わる。
(´<_` )(やはり……何かを……)
(´<_` )『ジオッ!』
トソンの足が離れぬ内に、左腕をトソンに向けて再度雷撃を放つ。
超至近距離から放たれた雷撃にも、トソンは表情を変えない。
37 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:16:50.56
ID:Wf1hZCVd0
(゚、゚トソン「はッ!」
受け止められた右足にさらに力を込め、強く押す。
左足を蹴り上げ、体をねじりながら宙に浮き───
(´<_`;)「なんだとッ!?」
ポリュデウケースの頭部目掛け回し蹴りを放つ。
トソンの短い髪の毛先を、チリと雷撃が焼いた。
しかし、それだけ。
刹那の後に、トソンの足はポリュデウケースの頭部へめり込む……
ことはなかった。
(゚、゚トソン「!」
弟者が咄嗟に、ペルソナを消したのだ。
何もない空間を虚しく足が通り過ぎる。
そのまま一回転をし、トソンは着地して。
(゚、゚トソン「好手! でも!」
着地と同時に地を蹴った。
38 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:19:29.13
ID:Wf1hZCVd0
(´<_` )『ペルソナッ!!』
弟者もすぐさまペルソナを呼び出す。
(´<_` )『ツインスラッシュ!』
振り下ろされる、青い斬撃。
トソンはそれを最小限の動きで体を横にずらし、避ける。
そこへ、脇腹へ向かい切り上げる二撃目。
(´<_` )(捉えたぞッッ!)
はっきりとした確信。
この距離では、避けることはできないはずだと。
だからトソンは、『足を上げた』だけだった。
翠緑に光る足を、ほんの少しだけ。
触れる、ポリュデウケースの剣。
またも響いた金属音。
40 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:23:07.44
ID:Wf1hZCVd0
(´<_` )「馬鹿め!」
渾身の力を込めて切り上げられた二撃目を、受け流せるわけがない。
強度は確かに、数合の接触で明らかだ。
だがいくら強固と言っても、下からの攻撃では当然、身の軽い女では宙へと打ち上げられてしまう。
(゚、゚トソン「……!」
案の定、トソンは空高く打ち上げられた。
弟者が狙うは、着地点。
(´<_` )「終わりだッ!」
空を仰ぎ、言い放つ。
二度目の確信。
一度目は仕留めるには至らなかったが、確かに捉えた。
次こそはと、弟者は二度目に確たる勝機を見出していた。
しかし今度は。
防がれることは愚か、弟者がトソンに触れる事すら、かなわなかった。
41 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:26:10.09
ID:Wf1hZCVd0
(゚、゚トソン「……!」
空中で体勢を整え、地に体を向けた。
すでに着地点には弟者がいる。一撃を放とうと、身構えていた。
トソンはそのまま膝を抱え、身を丸くする。
そして、一気に。
(゚、゚トソン「はぁッ!」
空中で何もない空間に、両足を勢い良く伸ばした。
何もない、何も変わるはずがない。
それなのに。
(´<_`;)「なんだと!?」
大地での跳躍と変わらぬ疾さ(はやさ)で、前方に飛んだ。
トソンが足を伸ばした瞬間、何かを蹴った様にしっかりと足は捉え、
緑の粒子を撒き散らしながら前方に飛んだのだ。
(´<_`;)(なんだ!? なんの仕掛けがある!?)
あまりの事に、弟者は追撃をかけることすら忘れていた。
トソンが着地した、そこは───
42 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:29:09.80
ID:Wf1hZCVd0
( ´_ゝ`)『行け! カストル!!』
ひたすらに突風を起こし続けるメルキセデクに、一撃を放たんとする兄者。
カストルが大きく槍を振りかぶり、そして。
(;´_ゝ`)「なんだと!?」
両の手を広げマハガルーラを放っているメルキセデクの肩に。
トソンが、降り立った。
(゚、゚トソン「ふっ!」
一息の後の、一足。
メルキセデクの風の中、一条の緑の風が突き抜ける。
(;´_ゝ`)「ちぃッ!!」
吐いた時には、もう遅い。
(゚、゚トソン「はぁぁぁッ!!」
風に押された彗星の如く鋭い蹴りが、カストルの頭部を捉えた。
44 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:31:40.99 ID:Wf1hZCVd0
( _ゝ
)「ぐあぁッ!」
ペルソナが消え、突然の頭への衝撃にたまらずに膝をつく。
トソンは反動で宙に舞い、風を止めたメルキセデクの眼前にひらりと着地すると、
(゚、゚トソン「メルキセデク!」
その一言で、天使は理解した。
後ろを向き、呆気にとられていた弟者に両腕を向け。
(´<_`;)「しまっ……!」
弟者の足元から、風が生まれる。
それはすぐに弟者の全身を覆う渦の壁を作り、その中で。
(
<_
)「ぐおぉッ!」
幾重もの風の刃が、襲い掛かる。
突風を生み出さずして鎌鼬のみを発生させる、ガルーラだ。
風の渦から解放された時には。
兄と同じ様に、地に膝をついた。
全ての風が、止んだ後。
トソンと天使だけが、背中合わせに佇んでいた。
46 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:35:21.93
ID:Wf1hZCVd0
(゚、゚トソン「……回復、できますか?」
背中越しに聞いたトソンの声に、天使はこくりと頷くと。
メルキセデクが手をかざし、温かな光が二人を包んだ。
トソンにも少々の裂傷が見られた。
ゆっくりとだが、それらが塞がって行く。
メルキセデクの翼の欠けも、徐々に。
(゚、゚トソン(……なんとか……セーフでしょうか……)
表情には出していないが、見えない部分、つまり両足の負担は相当な物だった。
やはりあの異常な動きも、少なからず代償を要する物だったようだ。
(゚、゚トソン(一度の消費が大きい……これはまだまだ改良するセオリーですね……)
デビルサマナーが悪魔を使役するにあたり、COMPと並ぶ大切な物がある。
マグネタイト(MAG)と呼ばれる生体エネルギーだ。これがなければ悪魔を召喚することが出来ない。
他にも悪魔に能力を使わせる際に消費したりと、まさに必須と言える。
さらに練気刀(れんきとう)、と呼ばれる物。
マグネタイトを送り込み、強力な力を発揮するサマナー御用達の武具なのだが、
それと同じ成分が混ぜられた物を膝から下に仕込んでいたのだ。
トソンの動きは、このマグネタイトと練気刀を触媒にした物を利用していた。
COMPに蓄積したマグネタイトを消費して、それの硬質化、具現化を行っていたのだ。
49 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:38:15.39
ID:Wf1hZCVd0
空中を飛んだ時も、マグネタイトを一時的に具現化させ、足場を作った。
それを強く蹴ったというわけだ。
トソン自身初の試みだったが、足場は衝撃に耐え見事な結果を生み出した。
しかしやはり、代償は大きく。
(゚、゚トソン(回復に時間が……残りMAGも少ない……)
肉体にも、MAGにも現れていた。
(゚、゚トソン(……)
うずくまる兄者に向かって。
(゚、゚トソン「さぁ、どうぞお引き取りを」
力は十分、わかっただろうと。
勿論、これ以上の戦闘は自分にも不利だと言う意味もその言葉の中に。
残念な事に、トソンの願いは叶わない。
(#
´_ゝ`)「弟者ぁぁぁぁぁあああぁぁぁァァァ!!」
立ち上がり、足を広げ下を向きながら、叫ぶ兄者。
51 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:41:41.15 ID:Wf1hZCVd0
( <_
#)『ぐ……スクカジャ……!』
地に膝をつきながらも、兄へと攻撃補助の力を飛ばす。
神経を研ぎ澄まさせ、素早さと視野を広める効果を持つ力だ。
(#
´_ゝ`)「なめるなよ! 見せてやる! 俺達の力を!!」
(゚、゚トソン「……あくまで、戦いますか」
(#
´_ゝ`)『ペルソナァッ!!』
再度出でる、長槍を携えた騎士、カストル。
しっかりとトソンを見据え、一撃を放たんと。
(゚、゚トソン「……」
(#
´_ゝ`)「……」
対峙する、ペルソナ使いとデビルサマナー。
54 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:43:59.65
ID:Wf1hZCVd0
音も立てずに、カストルが駆けた。
(゚、゚トソン(速い!)
即座に身構え、その動きを注視する。
スクカジャの所為か、兄者の動きはダメージを受けているにも関わらず、数段上がっていた。
(#
´_ゝ`)『カストル!!』
メルキセデクに見せた動き。
大きく長槍を後方まで下げ、体をねじり、横薙ぎの構えだ。
ならば、対処は。
(゚、゚トソン(上……いや、下)
腰を少し落とし、カストルの一撃を迎え撃つ。
槍の間合いに、トソンが入るその直前。
(#
´_ゝ`)「弟者!!」
(´<_` #)『ジオンガ!!』
(゚、゚トソン「!」
56 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:46:50.57
ID:Wf1hZCVd0
ジオよりも一つ上の、ジオンガ。
突然の弟者からの奇襲に、トソンの注意が一瞬逸れた。
だがそれは、隙とも呼べない程の、ほんの一瞬。
(゚、゚トソン「メルキセデク」
ぼそりと呟く様に言うと、メルキセデクが飛んだ。
メルキセデクは多少の魔法耐性を持っている為、彼で防ごうとしたようだ。
だが、ジオンガがメルキセデクを捉える事はなかった。
ジオを数本束ねたような、太い一条の雷撃は、
『まるで自分から避けたように』メルキセデクの横脇を通過した。
そして狙いは、トソンでもない。
(゚、゚;トソン「まさか……!」
(#
´_ゝ`)『カストル!!』
横脇に構えた長槍で、自らに迫る雷撃を横薙ぎに。
ばちりと、弾けるような激しい音が一瞬し、カストルの槍に稲妻が絡み付く。
(#
´_ゝ`)『行けッッ!!』
長槍───いや、雷槍を頭上高く、力強く掲げ。
59 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:50:38.37
ID:Wf1hZCVd0
弟の雷撃と、兄の槍撃を合わせた一撃。
ペルソナの波長を合わせ、その特性を合成させる、合体攻撃。
青紫の軌跡を描き、力強く振り下ろされた。
(#
´_ゝ`)『雷震乱舞ッッ!!!』
放出される、雷を纏った槍撃の波。
空気を切り裂く音を立てながら、トソンに迫る。
(゚、゚;トソン「くっ……!」
予想外の攻撃と、その速さに焦りの声を漏らす。
横に飛ぼうと体勢を変えるが、果たして間に合うか。
兄者の口端が、少し吊り上がった気がした。
コンマ一秒、間に合わない。
60 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:53:11.59
ID:Wf1hZCVd0
(´<_`メメ)(勝ちだ……!)
膝をつきながら見ていた弟者も、勝ちを見て、静かに拳を握った。
(゚、゚;トソン「く……あ……!」
迫る青紫の衝撃波。
激しい音を立てながら枝の様に伸びている雷が、その威力を物語っている。
トソンが自身でも、避け切れないと判断した、その時。
(゚、゚;トソン「ぐっ……!?」
強い力で、真横に弾き飛ばされた。
飛ばされながら視界の隅に映ったのは、天使の姿。
(゚、゚;トソン「メルキセデク!!」
間一髪、メルキセデクはトソンを衝撃波の進路外へと弾き飛ばしたのだ。
そのすぐ後に。
62 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/15(水) 23:56:36.54
ID:Wf1hZCVd0
一つ星が一瞬輝いた。
甲高い、弾けるような大きな音が、神社に大きく木霊する。
体を大きくうねらせた後に、天使はそのまま前方に倒れ、
二度と動く事はなかった。
(゚、゚;トソン「すみません……メルキセデク……」
青白く光り、ゆっくりとその身を消して行く仲魔を見つめ、呟く。
だが、悲観している暇はない。
( ´_ゝ`)
(´<_`メメ)
立ち上がり、静かに並ぶ流石兄弟。
トソンが一歩、後ずさる。
65 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/15(水) 23:59:08.71
ID:Wf1hZCVd0
( ´_ゝ`)「……立場が逆転したな」
(゚、゚トソン「……」
( ´_ゝ`)「女 貴様は何者だ」
(゚、゚トソン「その質問は答えられないカテゴリです」
( ´_ゝ`)「ふん……」
(´<_`メメ)「ならば、神主はどこへ行った」
(゚、゚トソン「知りません」
(´<_`メメ)「何だと?」
(゚、゚トソン「私は留守の間を任されただけ 外出先までは知りません」
( ´_ゝ`)「……」
(´<_`メメ)「……」
( ´_ゝ`)(嘘をついているようには見えんが……)
(´<_`メメ)(ならばここは……)
67 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/16(木) 00:03:07.20
ID:/UxkgvX10
(´<_`メメ)『シバブー』
短く唱えられた言霊。
空気を揺らしながら、ペルソナから放たれた力がトソンへと近づく。
(゚、゚;トソン「ぐっ……」
対象者を金縛り状態にする言霊だ。
最早トソンに、それを避ける力は残っていなかった。
( ´_ゝ`)「大人しくしていてもらおうか」
(´<_`メメ)「あんたもだ」
(,,;゚Д゚)「……あんたら……一体……」
(´<_`メメ)「言ってもいいが、知ったら死ぬ事になるぞ」
(,,;゚Д゚)(こいつらが……ブーンの言っていたペルソナとか言うアレなのか……?)
(,,;゚Д゚)(くそっ! わけがわからねぇ!)
(´<_`メメ)「あぁ、大人しくしててくれよ」
(゚、゚;トソン(……不覚……)
68 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/16(木) 00:05:45.53
ID:/UxkgvX10
トソンがモナーから受けた依頼はこうだ。
『私が不在の間、道場に居る二人に誰も近づけるな』
(゚、゚;トソン(撃退はだめでした……せめて……道場に近づけさせないように……)
(゚、゚トソン「……あなた達の目的は何ですか」
( ´_ゝ`)「自分の事は言えないのに、そんな事を言うとはな」
(゚、゚トソン「虫のいいプロセスであるとは思います」
( ´_ゝ`)「まぁいい 神主に、リベンジがしたいだけだ」
(゚、゚トソン「……リベンジ?」
( ´_ゝ`)「あぁ あのままでは腹の虫がおさまらんからな」
(゚、゚トソン「……なるほど」
(゚、゚トソン(……これなら、道場のお二人は大丈夫そうですね)
(゚、゚;トソン(もしかして、ちゃんと話していれば戦う必要はなかったかも……?)
(゚、゚;トソン(メルキセデク……)
70 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/16(木) 00:09:18.50
ID:/UxkgvX10
(゚、゚トソン「それならば」
(゚、゚トソン「静かにお待ち頂ければ、済む話」
( ´_ゝ`)「あー、アンタあれか」
(゚、゚トソン「?」
( ´_ゝ`)「俺達が、あいつら連れ戻そうとしたらとか、そういうあれか」
(゚、゚;トソン「……」
( ´_ゝ`)「安心しろ あいつらにゃ興味ないさ」
(´<_`メメ)「俺達はただ、リベンジをしたいだけさ」
(゚、゚;トソン「そう……でしたか」
(゚、゚;トソン(敵?……ながら見事 まさか私はやられ損……?)
(゚、゚トソン(……やられ損……)
(゚、゚トソン(やられトソン)
:(
、 トソン:(プッ……)
72 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/16(木) 00:12:01.39
ID:/UxkgvX10
( ´_ゝ`)「というわけで、あんたにはもう少しの間大人しくしていてもらおう」
:( 、
トソン:
プルプル
( ´_ゝ`)(なんだ……? 金縛りのせいか?)
( ´_ゝ`)「あー、あんたも、な」
(´<_`メメ)「警察とか無駄だからな」
(,,;゚Д゚)「……」
(,,;゚Д゚)(昨日の事といい……ついてないな……)
言い終えると、流石兄弟は賽銭箱前の数段の階段に腰掛ける。
現れるであろう、鳥居の下の階段を見つめながら。
トソンとの戦いの傷を治しつつ、モナー達を待ち構える。
( ´_ゝ`)「やはり、弟者のディアはよく効くな」
(´<_` )「あまり変わらんと思うんだがな」
少しの間の、休息。
74 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/16(木) 00:14:47.99
ID:/UxkgvX10
しかし、それを破ったのは。
モナー達ではなかった。
( ´_ゝ`)「む」
(´<_` )「む」
二人同時に、気配に気付いた。
ペルソナの波動を感じたわけではない。単純な人の気配だ。
ゆっくりと、鳥居の下から一人分。
その先を見つめながら、立ち上がる流石兄弟。
トソンも同じくそれを感じ、そちらを見ていた。
75 名前: ◆iAiA/QCRIM []
投稿日:2009/04/16(木) 00:16:14.91
ID:/UxkgvX10
そして。
現れたのは───
77 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/16(木) 00:19:11.60
ID:/UxkgvX10
※
( ´∀`)「……と言うわけです」
(´・ω・`)「まさか……ダイオード先生が……」
川
゚
-゚)「ツン……大丈夫か?」
ξ゚ー゚)ξ「……うん ありがと」
モナーはあの地震の後、学校で起きていた事をショボン達に説明していた。
今は神社へ戻る途中の、車の中だ。
ショボン、クー、ドクオ、そして最初の状況を知らなかったブーン。
やはり、衝撃を受けたようだ。特にクーは、ツンの事を心配している様子。
それに加え、J・Fの事。
(
∀ )(J・F……)
戦いの後、どうしても思い出してしまっていた。
仲間を守る為に散った、仲魔のことを。
79 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/16(木) 00:23:01.82
ID:/UxkgvX10
それが切っ掛けとなり、ジョルジュは新しい力を手に入れる事が出来た。
だが、その代償はあまりに大きく、深く、彼等の傷と成り。
ミセ*゚−゚)リ(ジョルジュさん……)
そしてそれらに共通して、全員が思う事。
敵の、強大すぎる力。
学校内の全ての人間を石と化し、さらに外と干渉できぬ結界を生み出した。
にもかかわらず、デレの力は不安定さを見せていた。
つまりは、あれが限界ではないと言う事だ。
ダイオードも、モナーと同程度の力を持っていた。
圧倒的な力の差に、気が滅入るのも無理もない。
しかしその中でも、モナーは己の希望を更に強いものとした。
ジョルジュの新しい力は、それ程に強力な物だった。
ブーン達が更なる力に目覚めれば、充分に対抗できるはずだと。
( ´∀`)(信じよう……彼等を……)
81 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/16(木) 00:27:20.70
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それぞれがそれぞれの思考をしている内に、車は神社に到着した。
( ´∀`)「さぁ、行きましょう」
これからハインと情報を整理し、今後の対策を。
そう続けたモナー。皆も気を引き締める。
だが。
(;´∀`)「……?」
階段を上がり終えた後。
(;^ω^)「え……?」
誰もがその事を、忘れてしまっていた。
83 名前:
◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/16(木) 00:29:18.77
ID:/UxkgvX10
全員が見たものは。
横たわる三人の男と、一人の女性。
どうやら、戦士達に休息は、ないようだ。
続く。
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