( ^ω^)は不思議な時計を拾ったようです



 
 
 
1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:39:22.83 ID:J1haQR6Q0
 
 暗い閑散とした住宅街の細路地を、一人の男が歩いていた。
 
( ^ω^)「うー寒い寒い……」
 
 刺す様な冬の夜風に、コートの襟をしっかりと立てて抵抗をする。
 
 いつもと変わらない帰り道。いつもと変わらない生活。
 
 誰しもが、一度は思うだろう。
 
 何か、面白いことでも起きないかな、と。
 
 一人歩く男、内藤ホライゾンも例外ではなかった。
 
 平日は仕事に追われ、休日と言えばVIPを見て一日が終わる。
 たまに同僚に飲みだとかに付き合わされるが、人付き合いが苦手な彼にとっては、
 それはただ、気まずいだけの時間だった。
 
( ^ω^)(……なんか……面白いことないかな……)
 
 帰り道に、そんな事を思う。
 
 ここ最近、毎日だった。
 


 
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:41:27.94 ID:J1haQR6Q0
 
 VIPでも良スレに出会えれば、それは確かに面白い。
 
 しかし、そんな毎日毎日出会えるはずもなく……
 
 そんな日は、虚しい一日を過ごしたと後悔するだけだった。
 
 かと言って、自分で良スレを生み出す発想もなく。
 
( ^ω^)(……はぁ……)
 
 内藤は、つまらない自分と、その人生に溜息をつくばかりだった。
 
 
 
 
 一戸建てが立ち並ぶ住宅街を抜け、さらに暗い横道に入る。
 
 並ぶのは、見るからに安そうなアパート。
 彼の収入ならもう少し上の物件に住むことができるのだが……
 寝る場所と風呂、そしてパソコンがあれば、なんでもよかったらしい。
 
 目標もなく、高望みもしない。
 
 そんな男だった。
 


 
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:43:17.38 ID:J1haQR6Q0
 
 ふと、内藤がゴミ捨て場を見た。
 
 なぜそこを見たのか、自分でもよくわかってはいなかった。
 
 本当に、ただの偶然。なんとなく、目が移っただけ。
 
( ^ω^)(お……?)
 
 そこにあった、一つの光。
 
 暗い中、うっすらと街灯の灯りを反射させている。
 
 内藤はそれに近づいた。
 
 
( ^ω^)(……時計……?)
 
 腕時計。
 
 銀色の、シンプルな腕時計。
 
 
 ──何か、面白い事はないものか──
 
 それが彼の、面白いこととの出会いだった。
 


 
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:44:25.74 ID:J1haQR6Q0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ( ^ω^)は不思議な時計を拾ったようです
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:45:54.54 ID:J1haQR6Q0
 
 家に着き、部屋の明かりを点ける。
 
 パソコン以外は、机と布団だけ。
 
 そんな部屋の真ん中に座り、内藤は先程拾った時計を見つめていた。
 
( ^ω^)(……普通の時計だお……)
 
 見るからに、普通の時計である。
 なんとなく、シンプルなデザインが気に入り、彼はそれを拾ってきていた。
 
 試しに、腕に巻く。
 
 
( ^ω^)(……なかなか、いいんじゃないかお)
 
 左腕に巻いた時計をまじまじと見つめ、ご満悦の様子だ。
 
 
( ^ω^)(あっ……時間は合ってるのかお?)
 
 ふと思った内藤は、スリープモードにしてあったパソコンを眠りから覚まし、
 桜時計を起動させ、時間を調べた。
 
 パソコンに表示されている時間は、二十二時三十七分。
 腕時計の針が示している時間は…二十二時三十五分。
 

 
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:47:28.34 ID:J1haQR6Q0
 
( ^ω^)(ちょっと遅れてるお)
 
 腕時計の竜頭─時間を合わせるつまみ─を引っ張り、回す。
 
 二分進めて、竜頭を戻した。
 
 
 
 
 
 
 カチッ
 
 
 
 
 
 
 
 
( ^ω^)(…………お?)
 
 きょろきょろと、内藤は周囲を見渡す。
 なぜか、不思議な感覚に見舞われたからだ。
 

9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:49:00.79 ID:J1haQR6Q0
 
 
 呆っとしていて、気がつけば数分経っていた、そんな感覚。
 
(;^ω^)(あ、あれ?)
 
 カチリと竜頭を戻した瞬間、それを感じたのだ。
 
 不思議に思った内藤は、腕時計を見つめる。
 
 
 二十二時三十七分。
 
 
 合わせた時間、ピッタリだ。
 
 
 そして次に、パソコンの時間を見ると。
 
 
 二十二時三十九分。
 
 
 なぜか、合わせたばかりなのに。
 
 二分遅れたままだった。
 


 
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:50:42.01 ID:J1haQR6Q0
 
(;^ω^)(……え?)
 
 確かに時間を合わせたはずなのに。
 
 パソコンと腕時計の時間が、一致していない。
 
(;^ω^)(……なんでだお……)
 
 ありえない、現象。
 
 
( ^ω^)(…………)
 
 内藤は、試しにまた竜頭を引っ張ると、今度は三十三分に時間を合わせた。
 
 この時間は確か、帰ってきて電気を点け、腕時計を見つめていた時間だ。
 
 
( ^ω^)(……まさか……ね)
 
 そんなことがあるわけが。
 内藤はそう思いながら、竜頭を戻した。
 
 
 
 
 
 カチッ
 


 
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:52:24.02 ID:J1haQR6Q0
 
 
(;^ω^)(…………あ、あれ?)
 
 下を向いて、腕時計をいじっていたのに。
 
 なぜか上を向いて、腕時計を掲げ見つめていた。
 
(;^ω^)(ちょ、えぇ……?)
 
 そして、もう一つ。重大な違和感。
 
 
(;^ω^)(パソコンが……)
 
 
 つけたはずのパソコンが、再びスリープモードになっていた。
 
 
 内藤はじっと、腕時計を見つめる。
 
( ^ω^)(これは……)
 
 
 もう、間違いなかった。
 
 
( ^ω^)(腕時計の“時間”に……実際の“時間”が合う……?)
 

14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:53:56.32 ID:J1haQR6Q0
 
 そんなこと、あるわけがない。
 
 しかし、実際にそれは起きたのだ。
 
 内藤はすぐにパソコンを起こすと、VIPを開き、スレを立てた。
 
 
 

不思議な時計を拾ったんだけど

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/19(月) 22:37:25.24 ID:I8wYT7Gk0
  時計に合わせた時間に現実の時間が合うんだけど
  
  
  
( ^ω^)(……)
 
 ひとまずの、レス待ち。
 
 
( ^ω^)(……あ、そうだお)
 
 内藤は何かを思いつくと、腕時計の竜頭を引っ張った。
 



 
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:55:37.30 ID:J1haQR6Q0
 
 
( ^ω^)(十分……進めてみるかお)
 
 
 腕時計の時間を、十分進めた。
 
 示す時刻は、二十二時四十八分。
 
 
 
 
 
 カチッ
 
 
 
 
 
 
 
 すると。
 

 

19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:57:21.54 ID:J1haQR6Q0
 
 パソコンが示す時間は、二十二時五十分。
 
 やはり、進んでいる。
 
(;^ω^)(まじかお……)
 
 焦る気を押さえ、内藤はスレをリロードした。
 
 
 
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/19(月) 22:37:25.24 ID:I8wYT7Gk0
  時計に合わせた時間に現実の時間が合うんだけど
  
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/19(月) 22:38:32.39 ID:f45I+if5P
  厨二乙
 
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/19(月) 22:40:12.33 ID:v+60BplsO
  お前……消されるぞ……
 
4 名前:富竹[] 投稿日:2009/01/19(月) 22:41:58.88 ID:t6Ws9T8CO
  嫌な事件だったね……
 
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/19(月) 22:42:28.45 ID:+K11GXwt0
  その時計どこで売ってますか?
 
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/19(月) 22:43:01.27 ID:Bq54Ugn/O
  なんだまためろんか




 
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 19:59:08.55 ID:J1haQR6Q0
 
 
 並ぶレス。
 
 
 やはり、間違いなかった。
 
 
( ^ω^)(……まじかお……)
 
 
 腕時計の“時間”に、実際の“時間”が合う。
 
 スレ立てによって、それは証明された。
 
 書き込みからもう一つ、わかったこともある。
 
( ^ω^)(時間の感覚は……僕にしかわからない……?)
 
 時間が進んだと感じたならば、それを感じた書き込みがあるはずだ。
 
 しかしそれがないと言う事は、時間を合わせた内藤にしか解っていないと言う事。
 
( ^ω^)(……これは……wktkしてきたお……)
 
 面白い物を、手に入れた。
 
 内藤のwktkは、止まらなかった。
 


 
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:01:11.77 ID:J1haQR6Q0
 
 
 しかしそれに反して、仕事の疲れが容赦なく内藤を襲った。
 
 その日はwktkしつつも、早々にスレを閉じ風呂に入り、就寝した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/20(火) 02:26:56.83 ID:SxCxgt610
  使い方を間違えないようにね
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 内藤がその書き込みを見る事は、なかった。
 
 

23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:02:56.68 ID:J1haQR6Q0
 
 

 
 
 朝起きると、内藤はすぐに腕時計をつけた。
 
 掲げ、うっとりとした表情で見つめる。
 
 使い方によっては、きっと面白い事ができるに違いない。
 
 内藤はにやけつつ出社した。
 
 
 
 
 
 しかし早速の変わらぬ日常に、その顔からは早くもwktkは消えていた。
 
 満員電車。都会の通勤ラッシュは、凄まじい。
 
(;^ω^)(ぐお……毎朝毎朝これは困るお……)
 
 人の波に流され、人の壁に押され、うんざりとした表情。
 
 すると。
 



 
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:04:39.81 ID:J1haQR6Q0
 
 
ξ////)ξ
 
 
 一人のOL風の女性が、顔を赤らめ俯いていた。
 
 その後ろには。
 
 
(* ^Д^)
 
 
 見るからに、下品そうな男が。
 
 
( ^ω^)(……痴漢かお……)
 
 満員電車の中では、よくあることだった。
 女性はもぞもぞと逃げるように動いているが、
 厚い人の壁を女の力で押し分けられるはずもなく。
 
 逆に押され、男に密着してしまっている。
 

26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:06:01.35 ID:J1haQR6Q0
 
 
( ^ω^)(胸くそわりぃお……)
 
 
 そんな様子を、内藤はイライラしながら見つめていた。
 
 ここからでは、届かない。
 
 近くには数名気付いている中年サラリーマンがいるようだったが……
 
 興味深くまじまじと見つめているだけだった。
 
( ^ω^)(クズばっかかお)
 
 内藤の沸々とした怒りは、止まらず。
 
 
 その時、閃いた。
 
 
( ^ω^)(……! そうだお!)
 
 

27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:07:02.87 ID:J1haQR6Q0
 
 腕を胸元へやる。
 
 その腕には、あの腕時計が。
 
 内藤は時間を十分前に、つまり電車に乗る直前の時間へ合わせた。
 
( ^ω^)(よし……)
 
 一つ、息を吐いた後に。
 
 
 
 
 
 
 
 カチッ
 
 
 
 
 
 竜頭を戻した。
 

28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:08:08.55 ID:J1haQR6Q0
 
 次の瞬間、内藤の視界に駅のホームが飛び込んだ。
 
 やはり時間は、しっかりと戻っていた。
 
 周囲を見渡し、探す。
 
( ^ω^)(! いたお!)
 
 
ξ゚听)ξ
 
 
 痴漢にあっていた女性だ。
 
 そしてその後ろには。
 
 
( ^Д^)
 
 
 痴漢をしていた男がいた。
 
( ^ω^)(野郎……乗る前から目をつけてたのかお……)
 
 内藤は静かに、二人に近づいた。
 


 
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:09:09.47 ID:J1haQR6Q0
 
 
 そして電車が到着する。
 
 二人から離れないよう、電車に乗り込んだ。
 
(;^ω^)(一日二回これを体験するのはなかなか……)
 
 しかし、そうも言ってられない。
 
 なんとか、内藤は二人から離れずに電車に乗り込むことができた。
 
 そして扉が閉まり、窮屈な満員電車は出発した。
 
 
 
 
 
 
( ^ω^)(さて……)
 
 怪しまれないように、内藤は男の手を観察する。
 
 
 二分程、経っただろうか。
 


 
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:10:16.22 ID:J1haQR6Q0
 
 
ξ゚听)ξ「ぁ……」
 
 
 微かに、女性が声を漏らした。
 驚いたような声色。それが意味するのは。
 
( ^ω^)(始めたかお……)
 
 
(* ^Д^)
 
 
ξ////)ξ
 
 
 
 下品な顔を赤くする痴漢。
 
 それに精一杯の抵抗をみせる女性。
 
 
(# ^ω^)(まったく……)
 
 
 内藤が、動いた。
 


 
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:11:18.77 ID:J1haQR6Q0
 
 
(;^Д^)「なっ!?」
 
 
 急に手首を掴まれ、男は驚く。
 
 
( ^ω^)「おい やめろお 痴漢野郎」
 
 
 内藤の声に、車内の人間が一斉にそちらを見る。
 
 
ξ゚听)ξ「あ……」
 
 
(;^Д^)「な、何を言ってるんだ! 名誉毀損だぞ!」
 
( ^ω^)「うるせーお こっちはちゃんとみてたんだお」
 
(;^Д^)「え、冤罪だ! 訴えるぞ!」
 
( ^ω^)「はいはい 警察に突き出してやるから、そこで話そうかお」
 
(;^Д^)「ば、馬鹿なことを……! 君! そんなことなかったよな!?」
 
ξ;゚听)ξ「……え……」
 


 
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:12:20.57 ID:J1haQR6Q0
 
(;^Д^)「痴漢なんかしてないよな!? そうだろう!?」
 
 必死にまくし立てる。
 
 まるで、脅すかのように。
 
ξ;゚听)ξ「う……」
 
 女性の弱みにつけこむ、最低な行為。
 
( ^ω^)「おい、おっさん」
 
( ^Д^)「なんだ! 触られていたのなら、何か言うはずだろうが!」
 
( ^ω^)「その人を触ってたなんて、言ってねーお」
 
(;^Д^)「!?」
 
( ^ω^)「なのになんでその人に聞いたんだお? 隣にも女性がいるのに」
 
(;^Д^)「い、いや、それはだな、てっきりこの子かなと……」
 
( ^ω^)「はいはい、言い訳乙」
 



 
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:13:58.97 ID:J1haQR6Q0
 
 
ξ゚听)ξ「…………です」
 
(;^Д^)「!?」
 
ξ#゚听)ξ「この人、痴漢です!」
 
(;^Д^)「な、ちょ、ちょっと!」
 
( ^ω^)「ほーら、やっぱりそうじゃないかお」
 
 騒然とする電車内。
 
 男に送られる視線は、嫌悪の色。
 
 すでに、決定的だ。
 
 
『次はーロックブーケーロックブーケー』
 
 タイミングよく、電車が駅に着くようだ。
 
 「いよっ! 兄ちゃんお手柄だね!」
 「今時珍しいヴィップっ子だ! 気に入ったよ!」
 「痴漢なんて、許しちゃおけねぇよな!」
 


 
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:15:09.43 ID:J1haQR6Q0
 
 内藤に贈られる称賛。
 
 だけど内藤は、そんなものは望んではいない。
 
 昨日拾った時計の力を、活用しただけのことだ。
 
 そして電車は駅に着いた。
 
 
 
 数名の有志の男達が、痴漢の腕をがっしりと掴み、外へ降りる。
 
 内藤と女性は、並んで降りた。
 
ξ゚听)ξ「あ……あの……」
 
( ^ω^)「お?」
 
ξ゚听)ξ「ありがとう……ございました」
 
( ^ω^)「いや、礼には及ばないお」
 
ξ゚听)ξ「……」
 

40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:16:32.72 ID:J1haQR6Q0
 
(;´∀`)「ど、どうしました?」
 
 駅員が駆けつけてきた。
 
( ^ω^)「痴漢ですお」
 
ξ#゚听)ξ「こいつです!」
 
( ´∀`)「なんと! 少しお待ちください」
 
 すると駅員は、通信機を取り出し何やら会話をし始めた。
 
(;^Д^)「くそっ! 俺は無実だ! 冤罪だ!」
 
 未だ悪足掻きをする痴漢。本当に救い難い。
 
 
 やがて、数人の警備員が応援に駆け付けた。
 
( ゚∀゚)「ご協力、感謝します」
 
( ・∀・)「最近多いんですよ痴漢が……まったく……」
 
( ゚∀゚)「被害者の方は……」
 
ξ゚听)ξ「私……です……」
 

41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:18:05.20 ID:J1haQR6Q0
 
( ^ω^)「それじゃあ、僕はこれで」
 
( ゚∀゚)「? 貴方は?」
 
ξ゚听)ξ「あ……この方が、助けてくれたんです」
 
( ゚∀゚)「成程、この人が痴漢かと思いました」
 
( ^ω^)「おい」
 
( ゚∀゚)「失礼 現場でのお話を伺いたいので、ご同行願えますか?」
 
( ^ω^)「あー……わかりましたお」
 
( ゚∀゚)「ご協力感謝します では、こちらへ」
 
( ・∀・)「お前か、痴漢は」
 
(;^Д^)「違う! 違うんだ!」
 
( ・∀・)「はいはい 後でゆっくりと話を聞こうな」
 
 そして一同は、駅の事務所へと移動した。
 



 
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:19:46.20 ID:J1haQR6Q0
 
 

 
 
 色々な事情聴取が終わり、事態は一旦の終息を見せていた。
 
 そんな中、内藤と女性は個室に残されていた。
 
 警察が男の事情聴取が終わるまで、待っていてくれとのことだった。
 
ξ゚听)ξ「……あの」
 
( ^ω^)「?」
 
ξ゚听)ξ「ほんとに……ありがとうございました」
 
( ^ω^)「困った時はお互い様だお」
 
ξ゚听)ξ「……実は……何度もあいつに痴漢にあってたんです……」
 
( ^ω^)「……」
 
ξ゚听)ξ「声を出す勇気もなくて……ずっと泣き寝入りで……」
 

46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:21:21.72 ID:J1haQR6Q0
 
( ^ω^)「……そうだったのかお」
 
ξ゚听)ξ「はい……」
 
( ^ω^)「恥ずかしいとか、色々あるかもしれないけど……」
 
( ^ω^)「勇気を出すのも、たまにはいいもんだお」
 
ξ゚听)ξ「そう……ですね……」
 
( ^ω^)「なんて、あの時は勢いがあったけど、今はドキドキしてるお」
 
ξ゚听)ξ「えっ?」
 
( ^ω^)「えらいことしちゃったなぁって、今更」
 
ξ゚ー゚)ξ「ふふっ そうなんですか」
 
( ^ω^)「だおだお でも、なんとかなってくれてよかったお」
 
ξ゚听)ξ「……ありがとうです」
 
( ^ω^)「や、ほんとに気にしないでくれお」
 


 
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:22:50.05 ID:J1haQR6Q0
 
ξ゚听)ξ「お名前を聞いてもいいですか?」
 
( ^ω^)「お? 内藤ホライゾンだお」
 
ξ゚听)ξ「内藤さん……」
 
( ^ω^)「あなたはなんて言うんですかお?」
 
ξ゚听)ξ「ツンです 津島、ツン」
 
( ^ω^)「津島さんですかお」
 
ξ゚听)ξ「はい」
 
 ふと、内藤は腕時計に目をやる。
 
 時刻はすでに、遅刻を示す時間になっていた。
 
(;^ω^)「ちょっと会社に電話してくるお……」
 
ξ;゚听)ξ「あ、私もしなくちゃ」
 
 二人はそれぞれ部屋の隅に移動をすると、携帯を取り出し通話を始めた。
 

50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:24:11.28 ID:J1haQR6Q0
 
 『何? 痴漢を捕まえた?』
 
( ^ω^)】「はい」
 
 『それが遅刻の理由か?』
 
( ^ω^)】「そうですお」
 
 『信じろと?』
 
(;^ω^)】「いや、警察から多分証明してくれる書類をもらえるかと……」
 
 『そうか、ならば信じよう』
 
( ^ω^)】「すみませんお」
 
 『君は痴漢をする側だと思っていたのにな』
 
( ^ω^)】「まてーや」
 
 『ははっ 冗談だよ 何にせよ、了解した』
 
( ^ω^)】「はい、申し訳ないですお」
 
 『今日は休んでいいぞ 良い事をしたご褒美だ』
 
( ^ω^)】「まじですかお?」
 
 『まじだまじ 明日はちゃんと来いよ?』

51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:25:46.17 ID:J1haQR6Q0
 
( ^ω^)】「わかりましたお!」
 
 『うむ では、また明日』
 
( ^ω^)】「失礼しますお」
 
 そうして電話は終わった。
 
 内藤が津島に視線を移すと、彼女も電話を終えていた。
 
ξ゚听)ξ「今日、お休みにしてもらっちゃいました」
 
( ^ω^)「おっ 僕もお休みになりましたお」
 
ξ゚听)ξ「えっ? ほんとですか?」
 
( ^ω^)「ほんとですお」
 
ξ゚ー゚)ξ「奇遇ですね」
 
( ^ω^)「そうだおね でも今日は、警察とか色々……」
 
ξ゚听)ξ「あー、そうですね」
 
( ^ω^)「まぁ、仕方ないかお」
 
ξ゚听)ξ「仕方ない、ですね」
 

52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:27:15.65 ID:J1haQR6Q0
 
 そんな事を話していると、突然部屋の扉が開いた。
 
 
 
 途端、空気が変わる。
 
 
 
 
 
( ^ω^)「……お……?」
 
 
 変わったと言うよりも、止まったと表現した方がいいだろうか。
 
 
ξ゚听)ξ
 
 
( ^ω^)「津島……さん?」
 
 
 津島は内藤を見つめたまま、動かずにいた。
 



 
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:28:50.21 ID:J1haQR6Q0
 
 そして、入口に目をやる内藤。
 
 そこには。
 
 
 
 
 
 <_プー゚)フ
 
 
 
 
 ふわふわと浮かぶ、不思議な生き物が。
 
 
 
(;^ω^)「……? 誰……だお……?」
 
 
 
<_プー゚)フ「やぁ、内藤くん」
 
 



 
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:30:28.28 ID:J1haQR6Q0
 
(;^ω^)「なんで……僕の名前を……」
 
<_プー゚)フ「それはどうでもいいことだよ」
 
(;^ω^)「いや、どうでもよくは……」
 
<_プー゚)フ「僕はエクスト、エクスト・プラズマン」
 
( ^ω^)「はぁ……」
 
<_プー゚)フ「その腕時計の、持ち主さ」
 
( ^ω^)「!」
 
<_プー゚)フ「時を操るその時計、人がどう扱うかを見たかった」
 
<_プー゚)フ「その時計は、使う人によって多種多様な使い道を見せる」
 
<_プー゚)フ「その中で、君は正しいことに使ってくれたようだ」
 
( ^ω^)「……」
 
<_プー゚)フ「ふふっ 自覚はあまり、ないみたいだね」
 

59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:32:04.24 ID:J1haQR6Q0
 
( ^ω^)「……で、時計を取り戻しにきたのかお?」
 
<_プー゚)フ「うん、そう考えるのが普通だろうね」
 
( ^ω^)「どうなんだお」
 
<_プー゚)フ「どっちでもいいさ 君がまだ使いたいなら、もっていればいい」
 
( ^ω^)「…………」
 
<_プー゚)フ「何度でも間違いを無くすことができる」
 
<_プー゚)フ「何度でもやり直すことができる」
 
<_プー゚)フ「何度でも、面倒事をすっ飛ばすことができる」
 
<_プー゚)フ「人間にとって、それはとても魅力的なことだろう?」
 
( ^ω^)「……そう、だおね」
 
 
 内藤は腕時計をじっくりと見つめた。
 
 エクストの言葉を頭の中で繰り返しながら。
 

60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:34:23.65 ID:J1haQR6Q0
 
 
 面白い事がないかと思っていた矢先に、この時計を拾った。
 
 そしてそれは、この上なく面白い物であった。
 
 間違いを踏まない人生を約束された、不思議な時計。
 
 
 確かに、人間にとってそれは、喉から手が出るほど欲しい物だろう。
 
 
 しかし。
 
 
 実際にそれを手にした内藤の思考は、違っていた。
 
 これから先、思い通りに事を運ぶことができる。
 
 少し頭を使うだけで億万長者になれるし、政(まつりごと)にも使えるであろう。
 
 今まで内藤がまったく見えていなかった、これからの人生へと伸びる無限とも言える程の道。
 
 そしてその道のどれにも、成功と言う名の終着駅が。
 
 
 その中で、内藤は原点を見つめる。
 



 
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:36:00.73 ID:J1haQR6Q0
 
 
 面白い事。
 
 それが全てだった。
 
 何度でもやり直せること。それが果たして、自分が思う面白いことであろうか。
 
 
 
 違う。
 
 
 
 面白く、ない。
 
 内藤が求める面白いこととは、違う。
 
 何が起きるかわからない先に、面白さを見出す。
 
 それこそが、内藤が求める、面白い事。
 
 
 
 ならば答えは。
 

63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:37:32.41 ID:J1haQR6Q0
 
 内藤は静かに腕時計をはずすと、エクストに差し出した。
 
 
<_プー゚)フ「へぇ……」
 
<_プー゚)フ「君、面白いね」
 
( ^ω^)「つまらん男だお」
 
<_プー゚)フ「ふふ 僕にとっては、とても興味深いさ」
 
<_プー゚)フ「ま、君が選んだ選択肢なら、僕はそれに従おう」
 
 
 エクストが腕時計を預かる。
 
 
<_プー゚)フ「君に出会えた」
 
 
<_プー゚)フ「なかなかに、“面白”かったよ」
 
 
 そう言うと。
 
 
 ふっと、エクストは消えた。
 



 
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:39:21.09 ID:J1haQR6Q0
 
 
ξ゚听)ξ「あ、あれ?」
 
 同時に時間も、動きだしたようだ。
 
( ^ω^)「おっ どうしましたかお?」
 
ξ゚听)ξ「あ、いえ、なんか変な感じが……」
 
( ^ω^)「そうですかお」
 
ξ゚听)ξ「あれ? 内藤さん……腕時計は?」
 
( ^ω^)「お? どっかに落としたみたいですお」
 
ξ゚听)ξ「あら……」
 
( ^ω^)「ていうか、そんな細かいとこによく気付きましたおね」
 
ξ*゚听)ξ「あ……なんとなく……不思議な感じがしただけですから」
 
( ^ω^)「そうですかお」
 
ξ゚听)ξ「でも、似合ってたのに残念です」
 

66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:40:58.52 ID:J1haQR6Q0
 
 
 
 
( ^ω^)「それはどうもですお」
 
 
 面白いと思っていた、不思議な時計。
 
 でも、その時計よりも、この先どうなるか見えない、面白い事。
 
 時計がもたらした、津島ツンとの出会い。
 
 
 先が見えない、“面白い事”。
 
 内藤はそれだけで、つまらなかった人生が───
 
 
 
 この先、どう面白くなるか、楽しみになった。
 
 
 
 



 
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/20(火) 20:42:07.92 ID:J1haQR6Q0
 
 

 
 
 キラリと、陽光を反射させ転がるのは、一つの時計。
 
 
 
 「お? なんだこの時計……」
 
 
 
 そしてまた、人の手に渡る。
 
 
 
 貴方は果たして、その時計をどう、使いますか?
 
 
 
 
 ( ^ω^)は不思議な時計を拾ったようです
 
 
 
 終わり。
 





ありがとうございました

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