ξ゚听)ξ嘘が紡いだ物語のようです

七、『愛のある嘘』
 


 
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:15:11.90 ID:BvFhMvL/0
 
ξ;゚听)ξ「ブーン?!」
 
 突然の僕の行動は、やはり驚かせてしまったようだ。
 外套の内側に短剣を突き立て、それをゆっくりと引く。
 縫い付けた縫合を、離すために。
 
 秋からは厚手の外套に。

 春からは薄手の外套に。
 
 どんな時も、君を傍に感じていられるように。
 
 小さな布袋を毎日着用する外套に、縫い付けていた。
 糸を解かれた布袋は、添えられた手の中にとさりと落ちた。
 
( ^ω^)「……嘘をついてて、ごめんお」
 
 紐を解き、ツンの手をとる。
 手の平を開いてもらい、その手に、袋の中身を、落とした。
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
 もう、ツンも、わかっていたようだ。
 

174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:17:41.51 ID:BvFhMvL/0
 
 
 
 
 
 布袋から落ちて、ツンの手に転がる物。
 
 
 
 
 それは彼女が探し続けて、
 
 
 
 探しているのに、見つけたくない、探し物。
 
 
 
 
 
 
 十五個目の、オパールだった。
 
 
 
 

176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:20:50.66 ID:BvFhMvL/0
 
 それはとっくに、見つけていたのだ。
 でも僕は、ずっと隠していた。
 
 渡したら、ツンに会うことができなくなってしまうから。
 
 理由はそれだけだった。
 僕はずっと、ツンに嘘をついていたのだ。
 彼女が宝石探しをしなくなった時は、正直ほっとした。
 
 国に仕える使命を忘れ、自身の身分から目をそらし。
 ツンといることが、僕の全てになっていた。
 
 利き腕の親指を無くし、両の手で剣を握ることができなくなった。
 あの時は本当に絶望した。死のうとも思った。
 それでも青騎士団長は、僕をここに留まらせてくれた。
 
 涙を流し、地に頭を擦り付けて感謝したことを覚えている。
 騎士団へ、国へ、生涯を賭して尽力しようと、あの時に誓った。
 
 その誓いは、一人の女性を前にした途端、ガラスの様に砕け散った。
 出会った当初は王女の為にと、最善を尽くしただけだった。
 
 そして一週間、一ヶ月と月日を重ねる毎に、ツンへの想いは強くなっていった。
 
 彼女はじっと、僕を見つめている。きっと軽蔑をしているのだろう。


179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:23:52.50 ID:BvFhMvL/0
 
(  ω )「……自害する覚悟も、できています」
 
 当然の報いだ。王女を騙し続けていたのだ。万死に値する。
 
 跪き、彼女の言葉を待った。
 
 
(  ω )
 
 
 風が、心地良い。
 
 全てを話した今、胸のつかえが取れたように、解放感に包まれた。
 僕はなんと、虫の良い男なのだろう。
 
 こんな男に、王女に二年もの月日を使わせてしまった。
 そして僕は、純粋な王女を弄んだ。
 
(  ω )
 
 どんな罵詈雑言も、拷問も、死も、全てを受け入れよう。
 
 それが僕の償いであり、けじめなのだから。
 

180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:26:29.37 ID:BvFhMvL/0
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
 
(  ω )「……?」
 
 
ξ゚听)ξ「馬鹿」
 
 
(; ω )
 
 
ξ゚听)ξ「ばーか」
 
 
(;^ω^)「……?」
 
 
ξ゚听)ξ「……もう嘘は……ついてないの?」
 
 
(;^ω^)「は、はい」
 
 
ξ゚听)ξ「……そう」
 

182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:29:19.82 ID:BvFhMvL/0
 
ξ゚听)ξ「ねぇ、ブーン?」
 
( ^ω^)「……はい」
 
ξ゚听)ξ「あなたは、私に会うために嘘をついたんでしょう?」
 
( ^ω^)「……その通り……です」
 
ξ゚听)ξ「そう。なら、許します」
 
( ^ω^)「はっ……どんな罰もお受け致します」
 
ξ゚听)ξ「許します」
 
(;^ω^)「え……あれ……」
 
ξ゚听)ξ「ばか。」
 
(;^ω^)「おっ……」
 
ξ゚听)ξ「少し驚いたけど……ね」
 
ξ゚听)ξ「それだけ、かな」
 
(;^ω^)「そ、それだけ?」
 

183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:32:03.72 ID:BvFhMvL/0
 
ξ゚听)ξ「えぇ、それだけです」
 
(;^ω^)「……」
 
 まったく理解ができなかった。
 自分の事だけを考えて、自分勝手な振る舞いをしたというのに。
 
ξ゚听)ξ「……ともかく」
 
ξ゚ー゚)ξ「見つけてくれて、ありがとう」
 
 まだ貴女は、僕にそんな笑顔を向けてくれるのか。
 そんな資格、僕にはありはしないというのに。
 
 これでは、諦めがつかないじゃないか。
 このままでは、また振り出しに、戻ってしまう。
 
ξ゚听)ξ「……ブーン」
 
( ^ω^)「はい」
 
ξ゚听)ξ「宝石があってもなくても、私はもう決めていたの」
 
( ^ω^)「…………」
 

185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:35:08.30 ID:BvFhMvL/0
 
ξ )ξ「でも、だめなの」
 
( ^ω^)「ツン……」
 
ξ )ξ「心が、まだだめ……」
 
ξ )ξ「明日になったら、変わるから……今日だけは……」
 
ξ )ξ「今日……この日だけは……いつものままで……」
 
( ^ω^)「……わかったお」
 
 立ち上がり、隣に座る。
 そしてまた、彼女を強く、抱きしめた。
 
 僕も今日だけは、いつもの二人のままでいよう。
 明日からは、元の関係に、王女とただの兵卒に、戻ろう。
 そして生涯を、国へ仕える為に、使おう。
 
 僕はもう、十分に満たされた。
 今日のブーン=ラダトスクは、明日へは連れて行かない。
 
 だけどこの温もりは、絶対に忘れない───
 

187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 21:38:58.51 ID:BvFhMvL/0
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 。             *''          *       .゜     
 
 
 
ξ゚听)ξ「ねぇ、ブーン?」
 
( ^ω^)「お?」
 
ξ゚听)ξ「また、星のお話をして?」
 
( ^ω^)「任せておけお」
 
ξ゚ー゚)ξ「うん」
 
 もう、僕とツンの心に迷いはない。
 二年の時を、永遠に。今日という日を、永遠に。
 大切に、大切に心に刻みながら、二人で星を、見つめていた。
 





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