( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

──第16話 『プロセス』


2 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:18:06.59 ID:f5COnoXv0
 
 ────………
 
 
 四人の子供たちは言いました。
 
 ごめんなさい、ごめんなさい、と。
 
 お姉さんは笑って許してくれました。
 
 自分達の罪を知り、全てを受け入れて彼等は成長をしました。
 
 お姉さんも、四人の子供たちを受け入れ、大きく成長をしました。
 
 
 もう彼等は、逃げることをやめたのです。
 
 
 運命に立ち向かう勇気を。
 
 
 全てを許す愛を、手に入れたのです。
 
 
 その時、彼等に変化が起こりました。
 

3 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:20:28.57 ID:f5COnoXv0
 
 
 自分の中の本当の自分に、出会ったのです。
 
 
 一人の男の子は太陽のように輝き。
 
 
 一人の男の子は凄まじい風を纏い。
 
 
 一人の女の子は愛と美に満ち溢れ。
 
 
 一人の男の子は闇の力を正義に使い。
 
 
 一人の女性は月の光のように煌びやかに。
 
 
 それぞれが罪を認め、赦(ゆる)し、仲間達と向き合ったのです。
 
 
 
 そして彼等は、最後の戦いへと身を投じるのでした……
 
 

5 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:21:46.25 ID:f5COnoXv0
 
 
 
 
 
 
 
( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
 
 
 
第16話『プロセス』
 
 
 
 
 
 



6 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:24:32.62 ID:f5COnoXv0
 
从 ゚∀从「今日はここまで」
 
モ*゚−゚シ『えぇ〜』
 
 ハインが絵本を読むのをやめると、モショは口をとがらせた。
 あまり絵本らしくない内容であったが、モナーの書庫には小難しい本しかなく、
 ハインが必死に漁った結果出てきたのが、その本だった。
 
 モショが内容を理解していたのかはわからないが、夢中になって聞いていたようだ。
 不思議と、本の内容とジョルジュ達が重なるものをハインは感じていたようだが、
 はてさて。
 
从 ゚∀从「さてと……」
 
 本を置くと、荷物の中からノートパソコンを取り出し、電源を入れる。
 キョロキョロと周囲を見渡すと、コンセントはすぐに見つかった。
 古めかしい和室だったが、案外不便ではないようだ。
 腕を伸ばし、コンセントとノートパソコンのバッテリーを接続した。
 
 二人(?)は食器を洗った後、宛がわれた道場横の部屋で寛いでいた。
 するとモショが震え続けていたので、ハインは気を紛らわせてやろうとし、
 何か本を読んでやることにしたのだ。
 
 そして、今に至る。
 

8 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:26:59.43 ID:f5COnoXv0
 
 モショが興味深そうにノートパソコンの画面を見る。
 彼女が本来いるべき世界がどんな所なのかはわからないが、物珍しいのであろう。
 口をぽかんと開け、セットアップを始めている画面を凝視していた。
 
 ハインはそんなモショの様子を、優しく笑いながら見つめている。
 しかし、瞳にはどこか寂しげな影。
 
从 -∀从(…………)
 
 何かを思い出す様に、俯く。
 ここに来る前にも、そんなことがあった。
 
 研究所で自分がしていたこと。
 そしてその事に疑問を持たせることとなった切っ掛けの、一人の幼い悪魔。
 人の子と変わらぬ感情を見せる彼女に、心を動かされた。
 
 果して、本当にそれだけの理由だったのだろうか。
 
 会社の命で悪魔を呼びよせる装置を作っていた。
 では、何の為に。そう聞かれると、彼女は言葉を詰まらせる以外にない。
 その先に何があるのか。世間一般で言う、所謂『悪行』をしていたのか。
 
 彼女にそれを知る術は、当時はなかった。
 
 突如現れた奇怪な生物達。
 そして言われるがままにそれらを調べる日々。
 

9 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:29:29.27 ID:f5COnoXv0
 
 夥しい数の実験、解剖を繰り返した。
 目的が見えていたのなら、それも仕方がないと言えよう。
 その先に人を救う道があるのなら、それに従うこともできよう。
 
 しかし、ハインにはそれが見えなかった。
 
 いくら問うても、返る答えは明らかな拒否。
 知らなくても良い。ただ命令を聞いていれば良い。それだけだ。
 それでは、見えない。その先に一体何があるのかが。
 
 それでも、ハインは断ることができなかった。
 断れば仕事を無くし路頭に迷う。それは当然だ。
 だが、ハインを留めていた理由はそんな程度の物ではなかった。
 
 
从 -∀从(……モララー……)
 
 
 彼女の心の内のみに秘められた、理由。
 モナーと共に行くことを決意した時に、モショを引合いに出した。
 確かに、モショがハインの心を動かしたのは事実だ。
 
 モショとの出会いは、つい数日前の事。
 それでは、ハインが留まっていた理由には直結しない。
 

10 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:32:06.15 ID:f5COnoXv0
 
 間接的には、モショに繋がっていた。
 それに繋がる元の理由が、ハインにはあったのだ。
 例え悪であろうとも、道が間違っていようとも。
 彼女にはそこに留まる理由があった。
 
モ*゚−゚シ『おねーちゃん?』
 
 ふと、モショが不思議そうな顔をしてハインの顔を覗きこんだ。
 考え込んでいたハインは我に返り、また微笑みを向ける。
 すると、モショもまた安心したように。
 
モ*゚ー゚シ
 
 にっこりと笑った。
 その笑顔を見て、彼女はまた重ねる。
 人の子と違わぬ姿を、同じく幼い人の子と。
 
从 ゚∀从(…………)
 
 モショの頭に手を置き、静かに撫でた。
 触れる事ができないので、正確にはアムドゥスキアスを遮断する帽子をだったが。
 それでもモショは、伝わる手の感触と温かさに、嬉しそうに微笑んだ。
 
 左手でモショの頭を撫でながら、右手でノートパソコンのキーをタッチする。
 

12 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:34:37.33 ID:f5COnoXv0
 
 流れるようにパスワードを入力すると、デスクトップが表示される。
 あまり拘りはないのか、壁紙はシンプルな物だ。
 タッチパッドに指を滑らせ、既に入っていたDVDを読み込む。
 
 ディスクが高速で回転する音に、モショが不思議そうな顔をしてみせた。
 この地に呼ばれた時からはアムドゥスキアスの音に戸惑い。
 その後は他の悪魔達と違い保護されたものの……
 通り抜けられぬガラスに囲まれ気の休まる日はやってはこなかった。
 
 ハインはその間も優しく接してはいたが、やはり一歩身を引いていたのだ。
 その後モナー達と出会い、自分に触れる事のできる存在を知り。
 J・Fと言った自分と同じ様な存在と出会ったことにより、
 周囲に目を向ける余裕が生まれた。
 
 そこで改めて、ハインの温かさを知ったのだった。
 
 一旦心を開けば、後は子供の姿を見せるだけ。
 見る物全てが初めてなこの世界は、彼女の興味を引く物達で溢れていた。
 
モ*゚ー゚シ『ぎゅいーんぎゅいーん!』
 
 彼女にとっては面白いのだろうか、音に合わせて何やら高揚している。
 そんなモショの姿にハインも少し嬉しくなり、読みこんだファイルを開いた。
 開かれたファイル。それは。
 

13 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:37:00.35 ID:f5COnoXv0
 
 
 『ハインちゃんのドキドキ大悪魔マル秘研究レポート』
 
 
 ネーミングの大切さが顕著に解るファイル名である。
 コンタクトレンズといい彼女のネーミングセンスはどこかズレている気がしてならない。
 そこはかとなく漂う昭和の香りから、そろそろいい年であることも窺えた。
 
 年を聞かれるとハインは決まって二十四と答えるのだが……
 真相は彼女しか知らない。
 
从 ゚∀从(…………)
 
 中にあるファイルは、その名の通り今までに調べた悪魔の事だった。
 ネーミングに反して、どれも専門用語の羅列した小難しい内容だ。
 その中の一つ、モー・ショボーと書かれたファイルを開いた。
 
 中にはモー・ショボーについてのデータが事細かに記されていた。
 その更に下の項目。モショについて記述してある部分まで飛ばす。
 
 自分の事と知ってか知らずか、画面を覗き込むモショは相変わらずだ。
 
モ*゚ー゚シ『あ!これもしょ?』
 
从 ゚∀从「あぁそうだ」
 

14 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:39:24.72 ID:f5COnoXv0
 
 みっしりと埋め尽くされた文章の横に添えられた一枚の画像。
 横たわり、眠っているモショの写真だった。
 
 検体β。画像にはそう名付けられている。
 
从 ゚∀从「…………」
 
 ハインは無言でキーボードに指を重ねる。
 検体βという名前を消し、新しい名前で上書きをする。
 
 『モショ』、と書いて。
 
 
 
モ*゚−゚シ『……?』
 
 すると、モショが襖に目を向けた。
 
从 ゚∀从「どうした?」
 
モ*゚−゚シ『……だれか……くるよ』
 
 それは、悪魔とペルソナ使いのみが感じ得る力の波動。
 ハインにそれを知る術はなかったのだが……
 
从 ゚∀从(……誰か……?)
 

16 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:41:50.34 ID:f5COnoXv0
 
 モナーであれば、彼の波動を覚えているモショはそんな事を言わないだろう。
 逆に、どちらかと言うと警戒しているように見える。
 
 それが意味する存在(もの)は、即ち。

从 ゚∀从(まさか……追手か……?)
 
从 ゚∀从(…………)
 
从 ゚∀从「モショ」
 
モ*゚−゚シ『?』
 
从 ゚∀从「どの辺りから感じるか、わかるか?」
 
モ*゚−゚シ『……このたてもののそと……すこしはなれてる……』
 
从 ゚∀从(……とすると……すでに境内には……)
 
 すでに侵入しているのであろう。
 ハインはモナーとミセリ以外の関係者を見ていない。
 朝からいれば、誰かが訪れればわかりそうなものだが……
 
 モナーの姿が見えない事に疑問を持ち、ここを訪れてもいいはずだ。
 なのに、それがないということは。
 

17 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:45:26.74 ID:f5COnoXv0
 
 恐らくは、この神社には普段からあの二人しかいない。
 
 だとすれば。
 
从 ゚∀从(マズイな……)
 
 人がいないと言う事。
 つまりそれは、自由に敷地内を徘徊できることを意味している。
 ハインはそこまで思考を巡らせた後に、どうするべきかを考えた。
 
 一般人であれば、モショが力を感じる事はない。
 問題は、敵なのか味方なのかだ。
 
モ*゚−゚シ『ふたり、いるよ』
 
从 ゚∀从「二人だって?」
 
 二人のペルソナ使い。それが意味するもの。
 
从 ゚∀从(まさか……流石兄弟か?)
 
从 ゚∀从(…………)
 
从 ゚∀从「モショ」
 
モ*゚−゚シ『?』
 
从 ゚∀从「前に感じた事のある力か?」
 

18 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:48:57.89 ID:f5COnoXv0
 
モ*゚−゚シ『……うん』
 
从 -∀从(モショの感じからして、当たりか……)
 
 どうやら二人にとって、最悪の場面になってしまったようだ。
 
从 ゚∀从(そういえば……)
 
 モナー達が発つ前に、言っていた。
 
 『ここなら、安全です 優秀なボディガードが居ますから』
 
 この状況になっても、そんな者が現れる気配はない。
 モショがその力を感じていないのが証拠だ。
 
从 ゚∀从(モナーが適当な事を言うとは思えない……けど……)
 
 不確かな存在(もの)を当てにするのも不安だ。
 状況は変わらず、自分達だけで切り抜けなければいけない。
 だが、流石兄弟の力はその目でしっかりと見ている。
 
 モナー達がいない今の状況で、倒すことはまず無理であろう。
 ならば、打開策は。
 
从 ゚∀从(やり過ごすしか……ないか……)
 
 結局は、それしかない。
 流石兄弟の目的は知る所ではないが、見つかればまず、連れ戻される。
 それだけは、回避しなければならない。

21 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:51:14.09 ID:f5COnoXv0
 
 
 幸いモショが相手の位置をある程度だが把握できる。
 
 モナー達が戻るまで、時間を稼げば乗り切れるはずだ。
 
从 ゚∀从「モショ」
 
モ*゚−゚シ『うん?』
 
 
 大丈夫。自分達が有利なはずだと、心を落ち着かせて。
 
 
从 ゚∀从「かくれんぼ、しようか」
 
 
 見つかれば即、ゲームオーバー。
 
 
 危険なゲームの、始まりだ。
 
 

23 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:53:29.29 ID:f5COnoXv0
 
 

 
 
 古めかしい佇まいの本殿を見据え、静かな地に立つ二人の男。
 僅かに葉を染めつつある木々達が柔らかく風に揺れていた。
 
( ´_ゝ`)「なんとも、風情なものだな」
 
(´<_` )「紅葉の時期にきたかったな」
 
 静寂の地に、戦いの風を運んできた者達、流石兄弟。
 隠れもせずに、大胆にも正面からの来訪だ。
 
 小細工は無用、と言ったところか。
 
( ´_ゝ`)「……あのどえらい力は落ち着いたようだな」
 
(´<_` )「そうだな しかしあれは一体なんだったんだ?」
 
 二人が話す力とは、VIP高校の事だ。
 黒きトラペゾヘドロンと、学校を覆う黒い雲の力。
 
 それに、アカ・マナフ。
 
 やはり二人も、あの脅威的な力を感じていたようだ。
 

25 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/07(火) 23:56:38.73 ID:f5COnoXv0
 
( ´_ゝ`)「わからん……しかし、尋常でない力だったのは確かだ」
 
(´<_` )「……ここにあいつらの力を感じないが……」
 
( ´_ゝ`)「神主はともかく、小僧達が力を隠せるとは思えん」
 
(´<_` )「見たところVIP高校の生徒だったようだったが……ここにはいないか」
 
( ´_ゝ`)「学生……か……」
 
( ´_ゝ`)(あの力はVIP高校の辺りから感じていたが……)
 
( ´_ゝ`)(……あいつらが関係してるのか……?)
 
 半分正解だ。力の主は違うが、解決したのは彼等だった。
 あれ程の力を退けた事など、二人には想像できないだろうが……
 
 一先ず今は。
 
( ´_ゝ`)「……居留守かもしれん 探してみるか」
 
(´<_` )「……」
 
( ´_ゝ`)「ま、居なかったら待てばいいだけの話だ」
 
(´<_` )「俺の見立てでは、ここにあいつらは居ないと思う」
 
( ´_ゝ`)「……聞こうか」
 

26 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:00:02.88 ID:aAwa74Xf0
 
(´<_` )「まず一つ、ペルソナを感じない」
 
(´<_` )「さっき兄者が言っていた通り、小僧達が力を隠せるとは思えない」
 
(´<_` )「そしてそのことは、神主がここにいないことの理由にもなる」
 
( ´_ゝ`)「それはなぜだ?」
 
(´<_` )「自信だよ、兄者」
 
(´<_` )「腹立たしい事だが、神主は俺達を甘く見ている」
 
( ´_ゝ`)「……そうだな」
 
 モナーが弟者と対峙した時、終始ショボン達の戦いに意識を向けていた。
 にも拘らず、戦いの結末は弟者を意に介さず一蹴していた。
 戦う前から二人は力を見透かされ、敵として見られていなかったのだ。
 
 それは即ち。
 
(´<_` )「だとしたら、隠れている意味がない」
 
(´<_` )「いつでも勝てる自信があるのなら、力を隠さずに迎え撃つはずだ」
 

27 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:02:07.19 ID:aAwa74Xf0
 
( ´_ゝ`)「流石だな、弟者」
 
(´<_` )「……ということで、ここには小僧達は愚か神主も居ない」
 
( ´_ゝ`)「そのようだな」
 
(´<_` )「で、どうするかが問題だが……」
 
( ´_ゝ`)「関係者がいるかもしれん とりあえずは人を探すか」
 
 人に見つかろうが二人にとってはどうでもいいことだった。
 独断で赴いた彼等の頭にあるのは、復讐のみ。
 
 前回は油断があった。
 
( ´_ゝ`)(次は……)
 
(´<_` )(不覚は取らんぞ)
 
 望むのは、再戦のみ。
 
 叶うのならば、如何なる手段を用いても。
 
 口に出さずとも、互いがそう考えていることを理解していた。
 

29 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:04:35.29 ID:aAwa74Xf0
 
( ´_ゝ`)「……ん?」
 
(´<_` )「む」
 
 二人が神社を捜索しようとしたその時、歩み寄る一人の男がいた。
 一瞬警戒はしたものの、男から人外の力は感じなかったようだ。
 流石兄弟は力を抜いて、男を見た。
 
 
(,,゚Д゚)
 
 
 現れた男は、週刊スキャンダルの記者ギコだった。
 先日は不幸な事故でここを訪れることが叶わなかった為、今日出直してきたようだ。
 しかし、事故以上の不幸が待ち構えていたとは思いもよらなかったであろう。
 
(,,゚Д゚)(……あの二人は……)
 
 昼も少し過ぎた神社に、黒いスーツを纏った男が二人。
 とても参拝客には見えないことはギコも思ったことなのだが……
 
 なによりも。
 
(,,゚Д゚)(……嫌な予感がしやがる)
 
 記者としての勘が、告げていた。
 

30 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:07:20.60 ID:aAwa74Xf0
 
 本殿を背に佇む流石兄弟。
 階段を上がり入口の鳥居の下にギコ。
 
 二人の距離は三十メートル程といったところか、互いに様子を窺っている。
 ギコもそうだったが、流石兄弟もギコに対して何かを抱いたようだ。
 
(´<_` )「……兄者」
 
( ´_ゝ`)「ああ」
 
 それだけで、二人は意志の疎通を終えた。
 歩き出す二人。向かう先には、勿論ギコ。
 
(,,゚Д゚)(……)
 
 じり、と、ギコは足を後ろへ引きずった。
 無意識の事だ。流石兄弟から放たれる人外の力を感じ、自然と気圧されたのであろう。
 それを感じた事はおろか、後ずさった事すらギコは気付いてはいなかったが。
 
 やがて、互いの距離が数歩の所まで近づいた。
 
 無表情の流石兄弟に見つめられたギコの背中に、一筋の冷たい汗がつたう。
 
( ´_ゝ`)「ちょっと尋ねたいんだが」
 
 兄者が静かに口を開いた。
 

32 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:12:08.35 ID:aAwa74Xf0
 
(´<_` )(……一般人……か)
 
 ギコに近づく時、実は弟者は静かにペルソナを発動させていた。
 その時の異様な空気にギコは押されたのだったが、その正体には当然気付いていない。
 
 ギコの第六感が、無意識に何かを感じ取ったと言ったところか。
 その反応に、流石兄弟も普通の人間であると判断したようだ。
 
(´<_` )(……演技にも見えん……だが……)
 
 モナーの知人、もしくは関係者かもしれない。
 そうでなくとも、二人の目にはただの参拝客には見えなかった。
 
(´<_` )(それは俺達も一緒、か)
 
 黒いスーツを着て境内に佇む自分の姿を想像して、そう思った。
 
 ということは。
 
(,,゚Д゚)(……こいつら……まさかVIPの……)
 
 ギコもやはり、そう思っていた。
 
 一昨日までの、ブーンと出会う前のギコならその考えに辿り着かなかっただろうが、
 ブーンから聞いた話の事、そしてギコ自身の直感がそう思わせていた。
 
 握る拳の中に滲んだ汗を感じながら、ギコが口を開いた。
 

34 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:14:35.45 ID:aAwa74Xf0
 
(,,゚Д゚)「……はい?」
 
( ´_ゝ`)「貴方は神社の関係者かな?」
 
(,,゚Д゚)(……)
 
(,,゚Д゚)「いや、違いますけど」
 
( ´_ゝ`)「これは失礼 参拝でしたか」
 
 
(,,゚Д゚)(チッ……)
 
 
(,,゚Д゚)(そうだと言えることもできる……が……)
 
 
(,,゚Д゚)「……神主を訪ねてきたんですよ」
 
( ´_ゝ`)「……ほう」
 
 兄者の眉が、少しつり上がった。
 
(,,゚Д゚)「仕事で神社についてお話を伺いたくて、取材に」
 
( ´_ゝ`)「……なるほど」
 

35 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:17:47.16 ID:aAwa74Xf0
 
(,,゚Д゚)(嘘は言っちゃいない……)
 
(,,゚Д゚)(恐らくは、これがベスト……参拝ならすぐに帰らなければ怪しまれる)
 
(,,゚Д゚)(だが…こいつらは一体……?)
 
 
 
 
 
 
(´<_` )「……生憎、関係者は今はいないようだ」
 
( ´_ゝ`)「ああ お互い、空回りしてしまったな」
 
(,,゚Д゚)「……なるほど」
 
(´<_` )「取材のアポはとってないのか?」
 
(,,゚Д゚)(……ちっ)
 
 ギコにとっては、痛いところを突かれてしまっていた。
 当然、アポなどは取っていない。ギコの独断で動いているからだ。
 だがそうなると……
 
 先のギコの返答に矛盾が生じる事になってしまう。
 

38 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:20:24.68 ID:aAwa74Xf0
 
( ´_ゝ`)(……やはり)
 
(´<_` )(この男……何かを隠している)
 
 言い淀むギコを見て不審に思う二人。
 
 神社にモナーはいなかった。
 そして、興味の対象はふらりと現れたジャーナリストに向けられる。
 
 
(,,゚Д゚)(……どうする……)
 
 
 焦るギコ。
 
 果たして、どう答えるべきか。
 
 
 
 ※
 
 
 

39 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:23:09.26 ID:aAwa74Xf0
 
 不気味な静けさに包まれていたその場は、一転して喧騒に包まれていた。
 デレが去り、同時に黒い雲も跡形もなく消え全てが終わった。
 
 しかし。
 
(;´∀`)「……」
 
(;゚∀゚)「……」
 
ミセ;゚−゚)リ「ど……」
 
(;^ω^)「どうするお……」
 
 全生徒、教諭の石化が解けた今、学校全体がパニック状態になっていた。
 石化中の記憶は当然無く、彼らにとっては大地震の直後なのだから、無理もない。
 教諭まで取り乱している状態だ。
 
 デレが消えた後の空き教室に残っていたブーン達は、階下から聞こえる喧騒から状況を察していた。
 
( ´∀`)「……先ずはショボン君達と合流を」
 
ξ゚听)ξ「ですね」
 
 実際、原因を説明した所で信じられるわけはなく、事態の収拾にもならない。
 ショボン達と合流し、ハインも交えて得た情報を報告することが先決だ。
 

41 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:27:27.87 ID:aAwa74Xf0
 
( ´∀`)「行きましょう」
 
 ジョルジュを先頭に、ブーン達の教室へと向かう。
 教室に近づくにつれ、喧騒が大きくなっていった。
 
ξ゚听)ξ(デレ……)
 
 ツンはこの状況を作り出した元凶、デレの事を思い出す。
 己を、世界を否定し、その恨みを全てツンへぶつけた少女。
 強大なペルソナによってどこかへと連れ去られてしまった。
 
 しかし、その力以上に。
 
ξ )ξ(……)
 
 ツンに与えた衝撃は大きかった。
 
 死との邂逅、向けられた殺意。
 戦うという事。その意味をまざまざと見せつけられた。
 
 足りない決意と覚悟。そして己の力。
 あの戦いは、誰も救う事が出来なかった彼女を一つ成長させていた。
 
 目には見えずとも。
 
 心は、確かに。
 

42 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:30:43.62 ID:aAwa74Xf0
 
 

 
 
(;´・ω・`)「モナーさん!」
 
 ブーン達が教室に入ると真っ先にショボンが駆けてきた。
 次いでクー、ドクオも駆け寄る。
 その顔にはやはり、困惑の色が浮かんでいた。
 
(;'A`)「一体…何が……」
 
川;゚ -゚)「あの地震は……」
 
 モナーとミセリがここに居ることで、やはり何か異変があった事に気付いたのだろう。
 説明を求めるように三人はモナーに視線を送った。
 
( ´∀`)「ひとまず、神社へ行きましょう 途中で説明をします」
 
 教室内はショボン達を含めても数名の生徒しか残っていなかった。
 混乱の中、ほとんどの生徒達が逃げ帰ってしまったようだ。
 ブーン達がいなくなっても、特に問題はないだろう。
 
 それよりも───
 
( ´∀`)(ハインさんも一人ですし……もし何かあったら……)
 

44 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:33:06.46 ID:aAwa74Xf0
 
 その事もやはり、モナーは心配していた。
 
( ´∀`)(……あの子がうまくやってくれるとは思いますが……)
 
 そして思う、保険の一手。
 果たしてその存在は、モナーの期待に応えるかどうか。
 
 ひとまずは。
 
( ´∀`)「いきましょう」
 
 神社に戻ること。
 
 戦いの疲労を引きずりながら、モナー達は車へと向かって行った。
 
 
 その背中を教室の窓から見つめる、ひとつの影。
 
 
川д川(……)
 
 
 髪に隠れて窺い知ることのできないその瞳には、何が映っているのか。
 

46 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:36:15.00 ID:aAwa74Xf0
 
 
 

 
 
 
(,,;゚Д゚)(……くそっ……)
 
( ´_ゝ`)「んん? 取材は普通アポを取っておくものじゃないのか?」
 
(,,;゚Д゚)(……)
 
(,,゚Д゚)「……えぇ、そうですけど」
 
(,,゚Д゚)「昨夜急遽決まったことなので時間がなかったんですよ」
 
 勿論嘘だ。
 
( ´_ゝ`)「……なるほど、な」
 
(´<_` )「それでも今朝連絡するとかはしなかったのか?」
 
(,,;゚Д゚)「それは……」
 
( ´_ゝ`)「……」
 
(´<_` )「……」
 

48 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:38:35.09 ID:aAwa74Xf0
 
 言葉に詰まるギコ。
 どうやら流石兄弟はギコがモナーと接点があると睨んだようだ。
 それは的外れだったのだが、モナーがいない今二人の興味は完全に向いてしまっていた。
 
(,,;゚Д゚)(こいつら……)
 
 しかし、ギコも赤の他人に問い詰められ黙っているわけではない。
 当然、同じ様に流石兄弟に不信感を抱いている。
 
 VIPの人間であることは今の段階では当然わからないことだが、最初に感じた物がやはり。
 
(,,゚Д゚)(……異様な感じがする……なんなんだこれは……)
 
(,,゚Д゚)「……失礼ですが、あなた方は?」
 
(,,゚Д゚)「私の仕事の事は、関係ないと思いますが」
 
 少し癪に触っていたらしく、噛みつくように問いかけた。
 流石兄弟は無言でギコを見つめている。
 
 ギコへの返答は、黙秘。
 
 先に答えろという、無言の圧力だった。
 

50 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:41:33.38 ID:aAwa74Xf0
 
(,,゚Д゚)(ちっ……)
 
 昨日といい、ついてない。
 ギコがそう思った、その時。
 
(,,゚Д゚)「……?」
 
( ´_ゝ`)「む」
 
(´<_` )「……」
 
 音が聞こえた。
 浅く積もった落ち葉を踏む音。
 その音は確実に三人へと近づいてきていた。
 
 音の方向を見つめる三人。
 ギコは音に反応したのだが、流石兄弟は違った。
 
 ペルソナ使いのみが知り得る感覚を感じ取ったのだ。
 
 だが。
 
( ´_ゝ`)(……何か……違うな……)
 
 共振とはまた別の波動。
 そこが少し、引っ掛かっていたようだ。
 

52 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:45:03.51 ID:aAwa74Xf0
 
(゚、゚トソン
 
 やがて現れたのは、茶色に染めたショートボブの髪をさらりと流し。
 真っ黒なライダースーツを纏った一人の女性だった。
 体のラインがくっきりと浮かび、不思議な雰囲気から妖艶さを醸し出している。
 
(´<_` )「……兄者」
 
( ´_ゝ`)「……」
 
 現れた女性を見るなり、ポケットから手を出して直立する二人。
 
 身構えたのだ。
 
 そんな二人の様子を知ってか知らずか、女性が口を開く。
 
(゚、゚トソン「参拝の方には見えませんが、貴方達は?」
 
(,,゚Д゚)「……私は雑記記者で、取材に伺わせてもらいました」
 
(゚、゚トソン「そのセオリーですか 残念ながら神主は不在のプロセスです」
 
(,,;゚Д゚)「セオ……プロセス?」
 
 特徴的な口調だった。
 

54 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:47:39.68 ID:aAwa74Xf0
 
(゚、゚トソン「……そちらのお二人は?」
 
( ´_ゝ`)「あんた、神社の関係者だな」
 
(゚、゚トソン「質問しているのはこちら 質問で返すのは良きセオリーと思えません」
 
(´<_` )「……」
 
( ´_ゝ`)「……」
 
 
 場が凍り付く。
 
 無論、素直にリベンジをしに来たなどと言えるわけがない。
 
 
 
(゚、゚トソン「……用がなければ、お引き取りしてほしいプロセスです」
 
 
 
 女性の言葉にも、二人は微動だにしない。
 
 おめおめと帰るわけには、いかないからだ。
 

56 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:52:07.85 ID:aAwa74Xf0
 
( ´_ゝ`)「……仕方ないな」
 
(´<_` )「……そうだな、兄者」
 
( ´_ゝ`)「女 お前、普通の人間ではないだろう」
 
(゚、゚トソン「……」
 
( ´_ゝ`)「黙ってるのなら、それもいい」
 
 
 
 一息の、間。
 
 
 
 そして。
 
 
 
( ´_ゝ`)「大人しく、眠っていてもらおう」
 
 
 流石兄弟の周囲の空気がぶれ、次に揺れた。
 

57 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:53:35.77 ID:aAwa74Xf0
 
(,,;゚Д゚)「な、なんだ……?」
 
 ギコがそれを見る事はできなかったが、異様な空気を感じることはできた。
 
(゚、゚トソン「……なるほど」
 
 
 
 
 
 
 
( ´_ゝ`)『ペルソナ』(´<_` )
 
 
 
 
 現れ出でる、双子の二神。
 
 兄の背には、馬に跨り長槍を携えたペルソナ、カストル。
 
 弟の背には、両刃の大剣をぶらりと下げ構えた、ポリュデウケース。
 
 そのまま静かに、女性に視線を送る。
 

59 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:56:29.81 ID:aAwa74Xf0
 
 しかし女性は、うろたえもせずに。
 
(゚、゚トソン「やはり、ペルソナ使い」
 
 向けられた凶刃に、怯みもせずに。
 
 
(゚、゚トソン「モナー様の『万が一』とは、貴方達のことでしたか」
 
 言うと、胸のポケットから携帯電話を取り出した。
 慣れた手つきで片手でそれを開くと、高速で親指を走らせる。
 
 
(゚、゚トソン「任された仕事は全うすることが真のプロセス」
 
 
(゚、゚トソン「襲名は未だされぬ未熟な身とは言え……」
 
 
(゚、゚トソン「私も葛(くずのは)の一枚の葉」
 
 
 携帯のディスプレイからぼんやりと青い光が溢れ出る。
 

61 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 00:58:27.39 ID:aAwa74Xf0
 
 
 
(゚、゚トソン「都村トソン、参ります」
 
 
 
 声と共に、中央のボタンを押す。
 すると青い光は大きくなり、やがてトソンの周囲に渦を巻くように集い始める。
 
 
 それは似ていた。
 
 
 ペルソナの、召喚に。
 
 
(゚、゚トソン『天使、召喚』
 
 しかし違った。
 
 彼女はペルソナ使いではない。
 
 

62 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 01:00:26.21 ID:aAwa74Xf0
 
 
 
( ´_ゝ`)「こいつ……!」
 
 
 
(´<_` )「デビルサマナーか!」
 
 
 
 ペルソナはその身の奥に宿るもう一人の人格を呼びだす。
 
 そしてデビルサマナーとは。
 
 悪魔を仲魔(なかま)として使役する存在の事だ。
 
 仲魔とは、J・Fがそれに近い。
 
 
 トソンの力を知ると、二人は即座に距離をとった。
 あの戦いが尾を引いているのか、その様子からは油断の色は窺えない。
 
 

64 名前: ◆iAiA/QCRIM [] 投稿日:2009/04/08(水) 01:04:19.51 ID:aAwa74Xf0
 
 
 
 
 
 そんな二人を一瞥した後に。
 
 
 
 
(゚、゚トソン『……GO!』
 
 
 
 
 
 天使が、舞い降りた。
 
 
 
 
 
 
 
                         続く。


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