ξ゚听)ξ嘘が紡いだ物語のようです
九、『兄として、騎士として』
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:22:14.17
ID:BvFhMvL/0
-
そうか。
貴方も悩み、苦しみ抜いた末に。
軍の頂点に立つ者として、決意したのですね。
ならば僕らと、同じ答えに辿り着いたという事だ。
国を思い、国の為に生きようと選択をした、僕達と。
至極真っ当。それが本来の、当然の行動だ。
今の僕は、国の宝を奪おうとした反逆者。
決意を固めたモララー様に、最早私情などありはしない。
貴方の真意は、解りました。
それならば、僕はそれに、応えましょう。
静かに、モララー様が立ち上がる。
月光を帯びた白の外套と、柔らかな銀髪が風に靡いた。
大陸に名を馳せる大国、ヴィップ。
色を冠した騎士団の中で、精鋭のみを集められた王直属部隊、白騎士団。
その、頂。最強の中の、最強。ヴィップ白騎士団団長、モララー=ヴィップ。
その男が、僕に剣を突き付けた。
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:25:08.13
ID:BvFhMvL/0
-
( ・∀・)「ブーン=ラダトスク」
( ・∀・)「剣を抜け。お前が我が国に忠誠を誓った、剣を取れ」
( ・∀・)「最早言葉はいらん。お前がツンを、国の宝を」
( ・∀・)「俺の妹と、生きたいというのなら───」
( ・∀・)「その剣で、語ってみせろ」
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:27:07.99
ID:BvFhMvL/0
-
静かに、剣を抜いた。
背を見せることは、許されない。
それは全ての裏切りを意味するからだ。
ξ;゚听)ξ「ブーン!お兄様!」
ξ;゚听)ξ「お兄様!やめて!明日からもう、会わないから!」
ξ;凵G)ξ「……そう……誓ったから……お兄様……!」
夜の丘に、風の音と、ツンの嗚咽が木霊する。
明日からは元通りに。
二人の関係は、それでいい。
でも違う。それではけじめに、ならないのだ。
僕がしてきたことは、王女を騙し、欺き、裏切り……。
万死に値する罪を、重ねてきた。
そしてそれは、償わねばならない。
もう、引き返すことは、できないのだ。
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:30:08.28
ID:BvFhMvL/0
-
それでも僕は、剣を抜き、モララー様の前に立った。
抵抗でも、悪足掻きでもない。
モララー様は、剣で語れと言った。
それは自分の志を、剣で証明しろという意味だ。
罪の代価は、己の命。
それを賭して戦うことで、己の誓いを見せてみろ、と。
前線に立つ事ができない僕を、騎士として見てくれた。
騎士ならば、最期まで主君の為に戦ってみせろと。
裏切り者としての処刑ではなく。
最期まで忠誠を誓った騎士として、果てる。
ツンが悲しむ事を、恐れていた。
しかし今は、それすらも厭わない。
ツンもこの先生きていく為には、乗り越えなければならないのだ。
そしてそれは礎となり、受け入れることで、彼女もまた大きく成長する。
これでいい。あの夜から、決まっていた結末だ。
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:33:26.60
ID:BvFhMvL/0
-
風が、
止んだ。
(# ・∀・)「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああッ!!!」
(# `ω´)「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!!」
駆け、全身全霊をのせた剣を、振り下ろした。
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:36:01.69
ID:BvFhMvL/0
-
刃と刃が、ぶつかり合う音がした、直後に。
「ブーーーーーーーン!!!!」
彼女の声が、耳に飛び込んだ。
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:37:59.31
ID:BvFhMvL/0
-
一瞬の邂逅の後、すれ違う。
( ω )「…………」
がっくりと、膝を折った。
左手には、剣の柄。
その先にある刀身は、中間から先が、無くなっていた。
( ・∀・)「……お前の忠義は、折れた」
わかっていた。
モララー様には、僕が命を賭しても、届かないことは。
国に生涯を尽くすと誓った僕の剣は、あっけなく両断された。
もう、僕には何も、残っていない。
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/17(土) 22:41:08.90
ID:BvFhMvL/0
-
ξ;凵G)ξ「ブーン……お兄様……やめて……」
ああ、ツン。どうか泣かないで。
最期は君の笑顔を、連れて行きたいのに。
背中に感じる、モララー様の気配。
僕の真後ろに立っている。
次にモララー様が動いた時、僕の首は胴から離れ。
最期までツンを愛した今日という日に、永遠に留まるのだろう。
風を切る、音がした。
( ^ω^)
ツンを見て。
せめて、と、いつもと変わらぬ笑顔を、向けた。
戻る 前へ 次へ